【アルコール依存症家族】見捨てる前に活用したい相談先・支援先6選【体験談】

2018.05.11公開 2020.05.13更新

自助グループ(アラノン)

私がまずコンタクトを取ったのは、アルコール依存症患者の家族・友人のための自助グループ(アラノン)でした。

 

1951年にアメリカで始まったアラノンは、今や世界中に広まり、日本にもたくさんのアラノングループがあります。

 

私はベルギーのオランダ語圏に住んでいるのですが、悩みを相談するほどのオランダ語能力がなかったため、英語で参加できるグループを見つけなくてはならず、アラノンに繋がるまで少々手間取りました。

 

また、それまで自助グループに参加したこともなければ、存在すら知らなかったので、

 

・どんな場所でどんな人がいるのか

・一体どんなことをするのか

・自分がそこへ行くことで何が変わるのか、何を得られるのか、

 

これらのことに全く見当がつきませんでした。

 

じゃあなぜ行ったのかというと、もうただ、他に行くところがなかったから。

 

実際は他にもあったかも知れませんが、当時の私には、どこへ行ったら良いのか分かりませんでした。

 

おそらく、アルコールの問題で困り果てている家族は、皆さん同じように感じているのではないでしょうか?

 

家庭内の深刻な問題を、赤の他人に話すことに抵抗を感じる方もいるかも知れませんが、自助グループに来る人は皆、あなたと非常に似た経験をしています。

 

きっと自分の話がよく分かってもらえることに、とても驚くことでしょう。

 

同じように悩んでいる人がいる、自分一人ではないと知ることだけでも、大きな支えになります。

 

ミーティングでは、話したくなければ他の人の話を聴くだけでも良いですし、複数のグループを試してみても良いので、まずは勇気を出して足を運んでみてはいかがでしょうか?

 

どこでミーティングをやっているのかは、下記のホームページで検索してみて下さい。

 

>>アラノン家族グループ

 

 

保健所や精神保健福祉センター

保健所や精神保健福祉センター(地域によっては心の健康センターなどの名称もある)は、より身近で見つかる相談先かも知れません。

 

私の場合は身近にこういった相談先がなく、あったとしても言語の問題もあったので、私自身は利用した経験がありません。

 

保健所や精神保健福祉センターでは、アルコール依存症に関する相談を受け付けています。

 

不明の場合は、自治体の保健課や健康推進課などに問い合わせて下さいね。

 

また、精神保健福祉センターは、各都道府県と政令指定都市に設置されており、依存症に関する情報の提供や相談、援助などを行っています。

 

>>厚生労働省 全国の精神保健福祉センター一覧

 

 

 

アルコール依存症の専門医療機関

相談先の3つめとしては、アルコール依存症の専門医療機関があります。

 

アルコール依存症の場合、精神科よりも、アルコール依存症専門の窓口を持った医療機関を訪ねた方が適切です。

 

ほとんどの専門医療機関では、アルコール依存症患者に対する治療だけではなく、家族のためのプログラムが行われています。

 

また、アルコール依存症患者本人が治療を受けている家族だけではなく、患者本人がまだ治療に繋がっていなくても、まずは家族だけが参加するケースもあります。

 

家族が正しい知識を得ることで、それまで頑なに拒否していた患者本人が受診を受け入れることも少なくありません。

 

家族向けのプログラムの目的は、病気に対する正しい知識を持つことですが、それだけではありません。

 

「家族の病気」とも呼ばれるアルコール依存症は、患者本人だけでなく、ともに暮らす家族をも巻き込み、不健康な状態にしてしまいます。

 

家族プログラムは、自分の思いを吐き出したり他の家族の体験を聞いたりすることで、家族が健康を取り戻すことも目的としています。

 

>>アルコール依存症治療ナビ.jp

 

アルコール依存症患者の家族向け支援

「私一人では立ち向かえない。助けが必要だ。」

 

アルコール依存症患者の家族がそう自覚した時に、必要なことは何でしょう?

 

助けを求めたくても、どこに助けを求めて良いのかが分からなければ、動きようがありません。

 

ですので、「どこに行けば良いのか」という情報がとても重要になります。

 

アルコール依存症患者が回復を望んだ場合は、アルコール専門医療機関にて治療が受けられます。

 

また、医療機関以外にも、

 

・断酒会(公益社団法人全日本断酒連盟)

・AA(アルコホリックス・アノニマス)

 

などの自助グループや、保健所や精神保健福祉センターなどで支援を受けることもできます。

 

けれど、まだアルコール依存症患者本人が飲酒の問題を認めておらず、回復への道に繋がっていない場合と思います。

 

家族は支援を受けられるのか、どこでどのような支援が見つかるのか、分からないことも多いのではないでしょうか?

 

アルコール依存症の専門医療機関には、家族に向けた家族教室もありますが、家族だけが医療機関に行くのはやや抵抗があるかも知れませんね。

 

アルコール依存症患者の家族を支援している組織や団体は、いくつかあります。

 

私自身は海外在住のため、ここに挙げている組織・団体に、直接的な支援を受けたわけではありませんが、アルコール依存症という病気の理解を深めるために、各団体のウェブサイトをよく参照したり、出版物を利用したりしました。

 

ここでは主に、私が情報収集に活用して役に立った組織・団体をご紹介したいと思います。

 

日本在住の方であれば、直接的な支援も受けられますので、まずはコンタクトを取って相談されてみてはいかがでしょうか。

 

 

一般財団法人ワンネスグループ

一般財団法人ワンネスグループは、アルコールはじめ、様々な依存症の回復について包括的な支援を行なっている団体で、目的に合わせた様々な施設を運営しています。

 

また、全国で開催している『依存症を知るためのセミナー』では、同じ悩みを抱えたご家族の話や、悩みが解決したご家族の話を聴くことができます。

 

専門家と体験者の話を聴ける貴重な場だと思います。

 

「否認」の病気であるが故に

ワンネスグループが運営している組織に、日本ファミリーインタベンションセンターというものがあります。

 

インタベンションとは「干渉」「介入」という意味です。

 

アルコール依存症は、否認の病気と呼ばれます。

 

ガンや糖尿病といった病気でも、本人が病気であることを受け入れられない(否認)時期はありますが、アルコール依存症の場合は他の病気に比べて、この否認がとても強いのです。

 

まわりには十分明らかでも、本人は飲酒をコントロール出来ないことをなかなか認められません。

 

また、たとえ色々な問題の原因が飲酒だと認めたとしても、一人で断酒できると主張し、治療や他人の援助の必要性を認めない場合も多いです。

 

ですので、アルコール依存症患者本人が、飲酒の問題および治療の必要性を認めることが、回復への大きな一歩であるのですが、同時にこれが最も難しい点なのです。

 

「底つき」を待つだけではない

一般に、飲酒の問題を認めていないアルコール依存症患者が回復への道に繋がるには、「底つき」が必要だと考えられてきました。

 

底をつくとは、飲酒の問題を認めざるを得ない事態に直面すること、つまり、目を覚まさざるを得ないどん底の経験をすることです。

 

例えば、交通事故や失職、病気、離婚などですね。

 

けれど、この底つきを「ただ待つ」ことは、本人にとっても家族にとっても払う代償が大きく、心身への負担は計り知れません。

 

インタベンションは、そうした深刻な事態に陥る前に、患者本人に、

 

「自分の力では直せない病気にかかっているので、専門的な援助を受ける必要がある」

 

ということを分かってもらい、治療回復への道を自ら歩んでもらうための手法です。

 

プロを頼ることが効率的

日本ファミリーインタベンションセンターでは、依存症を深く学び、数多くの経験を積んだスタッフが、患者本人と家族の間に入り、回復の道へのサポートを提供しています。

 

私自身は、インタベンションを推進している組織がベルギーには見当たらなかったため、インタベンションのガイドブック(『Love First: A Family’s Guide to Intervention』出版社:Hazelden Trade、著者:Jef Jay、Debora Jay)を熟読し、パートナーの親戚、職場の上司と同僚、友人に協力を呼びかけ、自分ですべてを準備しました。

 

ステップを忠実に守れば、効果的な働きかけは可能ですが、周到な準備に多大な時間と労力が必要です。

 

また、精神的な負担も大きいです。

 

私自身は利用できませんでしたが、インタベンションを成功させるには、専門のトレーニングを受けたインタベンションのプロに依頼する方が効率的、効果的ではないかと思います。

 

>>一般財団法人ワンネスグループ

>>日本ファミリーインタベンションセンター

 

特定非営利活動法人アスク

家族の支援をしている団体に、特定非営利活動法人アスクがあります。

 

アスクは、アルコールを始めとする様々な依存症関連問題の予防に取り組むNPO法人です。

 

その連携先である(株)アスク・ヒューマン・ケアでは、アルコール依存症患者向け、家族向けの出版物を数多く出している他、さまざまなセミナーやワークショップも開催しています。

 

治療を拒否していた依存症患者が…

アスク・ヒューマン・ケアの出版物に、『アルコール・薬物・ギャンブルで悩む家族のための7つの対処法CRAFT』という書籍があります。

 

CRAFT(クラフト)は、Community Reinforcement And Family Training(コミュニティ強化法と家族トレーニング)の略称で、飲酒問題や薬物問題に悩む家族のためにアメリカで開発されたプログラムです。

 

対立を招かずに、家族が患者本人に治療を勧める方法を学ぶもので、最近では依存症専門の医療機関、精神保健福祉センターの家族教室などで取り入れられるようになっています。

 

配偶者や親がこの方法を実践することにより、治療を拒否していた依存症患者が約70%の確率で治療に繋がるという画期的な成果をあげています。

 

「仕事があって、決められた日時に足を運べない」

「小さい子どもがいるので、家をあけられない」

 

など、諸事情から家族教室などに通うことができない場合でも、この本は家族に取って大きな助けになることと思います。

 

日本で唯一の通信講座

また、アスク・ヒューマン・ケアでは、アルコール依存症という病気、治療や回復について体系的に学べる、日本で唯一の通信講座『ASKアルコール通信講座』も提供しています。

 

書籍とは違い、疑問点などを添削者に確認しつつ、ご自分のペースでじっくり学べます。

 

>>特定非営利活動法人アスク

>>(株)アスク・ヒューマン・ケア

 

自助グループ アラノン

アルコール依存症患者の家族・友人のための自助グループであるアラノンは、1951年にアメリカで始まり、今や日本を含む世界130ヶ国以上に広がっています。

 

アルコール依存症患者と身近に関わり、その影響を受けていると感じる人であれば、誰でも参加できます。

 

各地で定期的にミーティングが開催されていますが、ミーティングは参加者が自身の体験や気持ちを話し、他の参加者の話に耳を傾ける場所であり、先に挙げた支援先とは内容が少々異なります。

 

経験者視点で共感しやすい

アラノンも、アルコール依存症に関する書籍をたくさん出版しており、依存症について理解を深めたり、ミーティングで分かち合われるような他の参加者の経験を読むことが出来ます。

 

実際にミーティングに参加し、他の参加者(同じ悩みを抱えた仲間)と出会うのが一番良いのですが、諸事情からどうしても難しい場合は、まずアラノンの本を読むことをお勧めします。

 

医療関係者など専門家の視点ではなく、依存症を身近で経験してきた人の視点で書かれたものが多いので、共感できる部分が多くあるでしょう。

 

>>アラノン家族グループ

 

さいごに

「否認の病気」と呼ばれるアルコール依存症は、患者本人が飲酒の問題があることをなかなか認めません。

 

ましてや、自ら進んで病院に行くことは非常に稀でしょう。

 

いつかは気づいてくれるのではないか。いつかはお酒を止めてくれるのではないか。

 

そう期待して、あなた自身がどこかに相談したり、助けを求めることを躊躇しているのであれば、その期待は捨てて下さい。

 

相手が変わることを待つのは、何の解決にもなりません。

 

飲酒に振り回されていると感じたら、たとえアルコール依存症かどうか確信を持てなくても、まずは相談してみて下さい。

 

そこで、やはりアルコール依存症ではないと分かれば、それに越したことはありませんし、アルコール依存症だとしても早めに対処できる方が良いですよね。

 

あなたが少しでも楽になるために、あなた自身が行動を起こすことが大切です。

 

まずは、上記の相談先を参照にして、足を運んでみて下さい。

 

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プリームみどり

ベルギー在住。夫がアルコール依存症になり家庭崩壊の危機に直面するが、 病気について学び自分自身を取り戻す。 自身のブログ「私から始めよう」では、周りに振り回されずに、 幸せに生きるためのメッセージを発信している。>>blog

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年5月11日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。