アルコール依存症で家族が崩壊…家族を救った3つのきっかけとは?【プリームみどりさん】

2018.04.13公開 2018.06.01更新
 
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アルコール依存症という病気で苦しむのは、お酒を飲んでいる本人だけではありません。

 

病気に振り回される家族は、同じように病み、苦しみを味わいます。アルコール依存症が「家族の病気」と言われる所以です。

 

このように、アルコール依存症は、本人だけでなく家族をも引きずり込み、お互いのつながりを断ち切ろうとします。

 

 

アルコール依存症と家庭の崩壊

アルコール依存症患者が飲むのを止めてくれさえすれば、元の平和な家庭に戻るはず…。

 

そう信じて、お酒を飲ませまいと、あらゆることをやってみるも何ひとつ功を奏さず、家族がバラバラになって行く…。

 

それを為す術もなく見ているのは、とても辛いことです。

 

私も、アルコール依存症という見えないモンスターを前に、無力感と絶望感でいっぱいだった一人です。

 

訳も分からないうちに濁流に飲み込まれ、どんなにもがいても流されていくように感じていました。

 

アルコール依存症の家庭への影響としては、ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力【DV】)が挙げられます。

 

それに直面した子どもへの精神面での影響も見過ごすことはできません。

 

その他にも、家庭内の言い争い、経済的困窮、仕事上のトラブル、異性問題などは離婚の原因になりやすく、アルコール依存症が家庭崩壊につながる可能性は高いと言えます。

 

では、アルコール依存症になってしまったら、家庭が崩壊してしまうのは仕方がないことなのでしょうか。

 

家庭崩壊を防ぐために、できることはないのでしょうか。

 

 

アルコール依存症で家庭が崩壊に至るプロセス

アルコール依存症になって症状が出てくると、今までよく知っていたはずの夫(妻)が、飲酒を隠すためによそよそしくなったり、酔うといつもとは違う人のように振る舞うのを見て、家族は戸惑います。

 

小さな歯車が狂い始めたような違和感を感じるものの、何が起こっているのか分からないので、その変化の原因を探し始めるのです。

 

愛情がなくなったのだろうか、仕事がうまく行っていないのだろうか、何か悩みがあるのだろうかと。

 

そして、お酒が原因だと分かると、家族は何としてでも飲ませまいとする一方で、アルコール依存症患者は飲酒するために嘘の上塗りをし、家族を責めるようになります。

 

家族はアルコール依存症患者を信用できなくなり、自分たちに苦しみをもたらす夫(妻)に対して、怒りや恨みを溜め込むようになります。

 

こうなると、家庭は心休まる場所ではなくなりますね。

 

私も、勤務中などパートナーと離れている時の方が、心穏やかでいられる自分に気づいて、「こんな状態で一緒にいる意味があるのだろうか」と悩んだものでした。

 

ところで、そもそも家庭が崩壊するとは、どんな状態を指すのでしょうか?

 

一般に「家庭崩壊=離婚」と思われますが、離婚は家庭が崩壊した結果の一つであり、離婚していない状態でも家庭が崩壊しているケースは多々あると考えます。

 

信頼関係が完全になくなり、お互いを監視し、ののしり傷つけあい、怒りや恨みを溜めて苦しめ合う…。

 

そんな状態では、離婚には至っていなくとも、家庭が崩壊していると言えるのではないでしょうか。

 

 

実際に家庭が崩壊する時

ここで少し、我が家のケースをお話ししますね。

 

私が精神的に追い詰められ、もうダメだと痛感したのは、2014年春のこと。

 

パートナーがアルコール依存症であると分かってから(本人は認めていませんでしたが)、すでに3年近くが過ぎていました。

 

彼がいつものように泥酔したある晩、息子の一言にショックを受けた私は、自分を救うため、家族を守るために行動を起こすことを決意したことがありました(詳しくは別のコラムに書かせていただいています)。

 

あの時が、まさに自分たちの家庭が崩壊していると認識した時でした。

 

家族に対する身体的な暴力行為はなく、欠勤がちながらも仕事には行っていました。

 

飲酒による交通事故や事件を起こしたわけでもなく、私も息子も日常生活を送れていたので、外目には崩壊しているようには見えなかったかも知れません。

 

けれども、夫婦間のコミュニケーションはまったくなく、それゆえ信頼関係もありませんでした。

 

行動することを決意した私は、家族のための自助グループ(アラノン)のミーティングに毎週通うようになり、それと並行してアルコール依存症について本やインターネットで学びました。

 

そして力を取り戻し、アルコール依存症という病気について正しく理解するようになりました。

 

それに伴い、パートナーに対する気持ちにも変化が生まれ、家族間の関係やコミュニケーションも徐々に良くなっていきました。

 

 

家庭崩壊を救った3つのきっかけ

アルコール依存症は病気であると受け入れた

では、何がきっかけで、私たちの家族関係が回復していったのか。

 

きっかけと言っても大きなことではありません。

 

単に見方、捉え方が変わっただけで、人間関係が良くなることは多々あることですね。

 

まず一つ目は、私が、アルコール依存症は病気であると受け入れたことでした。

 

それまでも、アルコール依存症が病気であるとは知っていましたが、「飲酒をコントロール出来ない病気で、専門家の助けが必要な病気」という程度の理解でした。

 

散々振りまわされてきた家族には、アルコール依存症が病気であることを受け入れることに抵抗があるかも知れません。

 

好きで飲んでいるように見えますし、本人も実際「飲むのは俺の勝手だ」とうそぶいているかも知れません。

 

けれど、アルコール依存症患者本人も、好き好んで病気になったわけではありません。

 

わざわざ病気になることを好んで選ぶ人なんていませんね。

 

これを理解した時に、戦うべき敵はパートナーではなく、アルコール依存症というモンスターなのだと分かったのです。

 

モンスターの巧妙なワナにかかって、家族同士が敵になってしまった時に、家庭が崩壊するのかも知れません。

 

 

アルコール依存症になる前の夫を思い出した

2つ目のきっかけは、アルコール依存症になる前の彼がどんな人だったのかを思い出したことです。

 

「どうしてそんなことがきっかけになるの?」と思われたかも知れませんね。

 

アルコール依存症は心の病気でもあり、比較的心の落ち着いた状態の時と、病的な状態の時とがあります。

 

病気の心から出ている言動は、病気がそうさせているのであって、その人本来の性格ではありません。

 

ただ、病気から出ている言動にずっと振りまわされてきた家族には、それが見えなくなってしまうのです。

 

本当の敵である病気は姿が見えず、目の前に見えるのは、今日も飲み続ける依存症者だけ。

 

確かに容易ではないかも知れませんが、病気とその人自身を分けて見ることが大切です。

 

本来のその人がいなくなってしまった訳ではないのです。

 

私のパートナーは、一度アルコール依存症の専門病院に入院しましたが、入院して1週間もすると目つきや顔つきがまるっきり変わって血色も良くなり、まるで別人の様子に、非常に驚いたことがありました。

 

そして「そう言えば、病気になる前の彼はこんなに穏やかで優しい人だった」と思い出すことができ、あんなに無責任で自分勝手で意地悪な態度だったのは、本当に病気のせいだったんだと納得しました。

 

 

息子に全て正直に話した

もう一つのきっかけは、息子でした。

 

私はアルコール依存症について学び始めてから、息子にもすべて正直に話しました。

 

パパが病気であること、どんな病気なのか、私たちは何ができるのか。

 

どれだけちゃんと伝わったか分かりませんが、息子は息子なりに受け入れ考えたことだろうと思います。

 

それから数年して、もうパートナーのことを憎んではいなかったものの、このまま一緒に暮らすのは心身の負担が大きすぎるからと、家を出ることを考えていた時も、結論を出す前に、私が考えていることを息子に伝えました。

 

まだパパのことは愛しているけれど、このままではママはとてもしんどいこと、日本に帰る可能性もあることなど。

 

酔っ払って絡んでくるパパに対しては、とても腹を立てていた息子ですが、家を出ることに関しては、やはりパパを置いては行けないと泣きながら話してくれました。

 

病気でも、頼りにならなくても、息子にとっては大切な父親なのだと納得させられました。

 

誤解しないでいただきたいのは、子どもがいるなら離婚すべきではないと言いたいのではありません。

 

反対に、早く離婚した方が良い場合もありますし、子どものために別れられないと子どものせいにするのは子どもにとって迷惑な話だと思います。

 

ただ私の場合は、息子がまだパパを大事に思っていることを知って、考えを変えたというだけですので、誤解なさらないで下さいね。

 

 

さいごに

私は先に、離婚は家庭が崩壊した結果の一つと書きましたが、離婚が悪いこと、避けるべきことかというと、そうではないと思っています。

 

離婚が底つきとなって、アルコール依存症患者を回復に向かわせることもあるからです。

 

前夫の鴨志田穣さんがアルコール依存症だった漫画家の西原理恵子さんは、アルコール依存症について正しい知識を広めようと活動されています。

 

その中で、もう少し早く離婚してあげていたら、鴨志田さんももっと早く治療につながって、もう少し長生きできたのでは…と話されています。

 

たとえ、離婚して家族がバラバラになったとしても、そこから信頼関係を回復させることは可能だと思います。

 

婚姻関係という形に固執するのではなく、家族の皆がそれぞれ心の平安を得て幸せになるという本当の望みに沿って、選択、決断していただきたいと思います。

 

参考文献:西原理恵子/月乃光司著 「おサケについてのまじめな話」 小学館

 

>>Part3


profile photo2プリームみどり

ベルギー在住。夫がアルコール依存症になり家庭崩壊の危機に直面するが、 病気について学び自分自身を取り戻す。 自身のブログ「私から始めよう」では、周りに振り回されずに、 幸せに生きるためのメッセージを発信している。

blog: https://ameblo.jp/beyouandshine/

 

プリームみどりさんの連載一覧

【Part 1】夫がアルコール依存症に…私が自分の人生を取り戻すまで

【Part 2】アルコール依存症で家族が崩壊…家族を救った3つのきっかけとは?

【Part 3】アルコール依存症患者の家族として実践した3つの接し方とは?

【Part 4】アルコール依存症患者の家族向け支援!活用できた3つの支援とは?

【Part 5】アルコール依存症患者の家族の相談先って?私のおすすめ3選

【Part 6】アルコール依存症の子供への影響…我が家での3つの対処法

【Part 7】アルコール依存症患者の家族がうつを予防する3つの心がけとは?

 

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