嫌いな人がいないっておかしい?3つの心理を臨床心理士が解説

2018.12.13公開 2019.05.16更新

嫌いな人がいない3つの心理とは?

 1.「自分と一緒」という意識が強い

自分が所属する集団を高く評価し、それ以外を低く評価する「内集団びいき」という心理的学的理論があります。

 

例えば、ワールドカップで日本代表を応援したり、同じ部署の同僚が他部署の人から責められているときに「むっ」としたことはありませんか?

 

人間は、自分が所属するグループをポジティブに評価し、優位に位置づけようとする傾向があるのです。

 

さらに、前提として「内集団」として相手を捉えているかどうかが重要になります。

 

つまり、自分と相手が同じグループに所属している、という認識があるかどうかということです。

 

嫌いな人がいない人は、すべての人に対して「自分と一緒」という意識が強く、同じ集団内に属する相手に対して好意的に評価していると考えられます。

 

2.嫌いな気持ちを「抑圧」している

人間は、不安や罪悪感、恥といった負の感情から心を守る機能を持っています。心理学ではそれを「防衛機制」と呼んでいます。

 

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ときに、湧き上がってくる不快な感情を「抑圧」し、目をそらすことで心を守ろうとすることがあるのです。

 

対人関係において、

「あの人は苦手で会話に困る」

「私ばっかり良くしてるのに相手は何もしてくれない」

という気持ちを抱きながら過ごすのはなかなか大変です。

 

苦手な相手と会わないと行けない場合、何日も前から嫌な気持ちになりますし、会っているときも嫌な気持ちで心がいっぱいになります。

 

このようなネガティブな気持ちで過ごすことは、とてもストレスフルです。

 

それよりも、

「私はこの人が好き」

「いつも親切にしてくれる」

「私に優しくしてくれて嬉しい」

というふうに思っている方が、気持ちが楽ではありませんか?

 

このように、無意識のうちに心の安定を図るために感情が歪められていることがあります。

 

こういった抑圧によって、

「本当は嫌いな人がいるけれども、いないように錯覚している」

ということもありえます。

 

3.「嫌いな人」がいない親をモデリングしている

人間は、どのように対人関係の「スタイル」を構築していくのでしょうか?

 

生まれつき持った「スタイル」と、観察によって学習し身につけた「スタイル」の2つがあります。

 

第一に、「生まれたときからおとなしい」「幼稚園の頃からリーダー基質」といった、ある程度の対人関係スタイルは生まれる前からDNAで決まっています。

 

生まれたばかりの赤ちゃんも、すでに泣き方や怒り方といった「個性」があるのは面白いことですよね。

 

しかし、成長に従って、親や友達、メディアなどから影響を受け、様々な対人関係スタイルを取り入れていくこともわかっています。

 

過去に行われた実験では、

「攻撃的な行動を見た子どもたちは、その後に攻撃行動を生起させる頻度が高い」

といったことが明らかになっています。これを「モデリング」といいます。

 

したがって、一番身近で、自分自身の行動指針となる両親の存在は、自分自身の「モデル」として対人関係スタイルに多大な影響を与えると考えられます。

 

ご両親の対人関係スタイルを振り返ってみると、「嫌いな人」がおらず、どちらかというと浅く広く、有効な人間関係を築くスタイルであることに気づくかもしれません。

 

 

良い場合の「嫌いな人がいない人」

「嫌いな人がいない」というのは、あなたにとって生まれながらの性格かもしれませんし、後天的に身につけたコミュニケーションスタイルかもしれません。

 

もしくは、知り合いに対する「身内」意識が強いことから生じた「思いやり」かもしれません。

 

特に、リーダー気質で周囲への仲間意識が高い人は、こういった内集団びいきが生じやすいと考えられます。

 

もし、これらの理由で「嫌いな人がいない」のであるならば、無理に思い悩んだり、反省する必要はないと考えます。

 

なぜなら、「嫌いな人がいない」という性格は「あなたらしさ」だからです。

 

「嫌いな人がいない」人物であるからこそ、今の交友関係や社会的信頼が得られているのです。

 

 

注意が必要な「嫌いな人がいない人」

しかしながら、自分の本当の気持ちを歪めた上で、「嫌いな人がいない」と思っているようでしたら、少し注意が必要です。

 

自分の本心と向き合うことは、苦しく辛い作業ですが、本当の気持を無視し続けることは、

「偽りの人生」を生きている

といっても過言ではないからです。

 

例えば、本当は嫌いな上司に対して、

「仕事だから厳しいことも言うけれど、雇ってもらっているのだから感謝しないといけないな(でも、本当は苦手で大嫌い)」

と思いながら、毎日過ごしていたとします。

 

毎日、本心を抑圧しながら生きていくことは、本当に自分自身の人生を生きていると言うには少し無理がありますよね。

 

 

さいごに

人間関係はすべての社会生活の基盤となります。

 

したがって、自分自身のコミュニケーションスタイルや、知り合いに対する「距離感」などを客観的に振り返ることは、予想外の問題解決につながるかもしれません。

 

月に1回位の頻度で、日常のルーティーンになっているコミュニケーションスタイルの「断捨離」から始めてみてはいかがでしょうか?

 

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広瀬絵美

臨床心理士

心理学の大学を卒業後、広告会社にて勤務。退職後、心理系大学院修士課程を修了し臨床心理士資格を取得。精神科病院にて従業員のメンタルヘルスケア業務に従事する。また、国立研究所にて職場組織や妊婦さんのメンタルヘルスに関する研究にも携わっている。理想的な「ワークライフバランス」を目指し、研究と実践の両面から支援を行っている。一児の母。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年12月13日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。