承認欲求とSNSの関係・自撮りがうざい心理とは?臨床心理士が解説

2018.12.27公開 2019.05.16更新

SNSが満たすのは承認欲求だけじゃない

他者からの評価が簡単に返ってくるSNSは、承認欲求を満たすうってつけの場です。

 

特に、日本人は相手に対する良し悪しをはっきりと表現しない傾向があるので、「褒め」に飢えている私達にとってSNSは依存性があります。

 

そして、SNSと承認欲求の関係を語る上で重要なキーワードに「回避欲求」があります。

 

人間は他者から承認されたいという願望とともに、「拒絶されたくない」という「回避欲求」も持っています。

「嫌です」

「ダメです」

「嫌いです」

と言われたくないため、無意識に自分の意見を隠した経験はありませんか?

 

「どこに行きたい?」と聞かれて「どこでもいいよ」と答えるのも、1つの回避欲求と言えます。

 

SNSでは承認されることがあっても、相手から拒絶されることはありません。

 

「いいね!」ボタンがっても「ダメです」ボタンはありませんよね。

 

つまり、SNSは「承認欲求」と「回避欲求」が同時に満たされる、最高のツールと言えます。

 

 

自撮りをうざいと感じる心理

では、どうして仲がよい友達の楽しそうな自撮りを見ているのに、「うざい」という不快な気持ちになるのでしょうか?

 

それは、自分は実現できていないことを相手が実現しているという「嫉妬心」です。

 

まず、自撮りによって友達は自分を表現するという「自己実現」をしています。

「彼氏がいる自分」

「素敵なホテルで食事ができる自分」

といった理想の自分を披露しているわけです。

 

心理学ではこういった「自己実現」を「人間にとって最上級の欲望」に位置づけています。

 

つまり、

・毎日の衣食住が満たされ、

・仕事や安定的な人間関係といったコミュニティーを持ち、

・人間の基本的欲求をすべて満たした状態

このような「最上級の人間」が手にい入れられるものが「自己実現」なのです。

 

その一方で、

・毎日500円のお弁当しか食べられない人

・恋人や友達がいない人

・安定した仕事がない人

などが、そういった「自己実現」に対して「嫉妬」するのはある意味当然と言えます。

 

欲しいものをすべて持ち、自分がやりたいことをエンジョイしている「自撮り」に対してイラッとするのは、「自分が満たされていない」証拠でもあります。

 

あなたはどんな「自分」に対して、満たされていないと感じているのでしょうか?

 

 

SNSを上手に活用する3つの方法

①「うざい」は「羨ましい」の裏返し

うざいという感情の裏には嫉妬が隠されています。あなたはどんな投稿にうざいと感じますか?

 

家族団らんの写真なら、自分自身も家族への愛情に飢えているのかもしれません。

 

結婚式の写真なら、プライベートに不満があるかもしれません。

 

SNSを使う以上、必ず「自分が羨ましいと思っているもの」と遭遇してしまいます。

 

イライラしてしまわないよう、自分が何に対して羨ましいと感じているのかを予め理解することは、感情をコントロールする上で重要なことです。

 

②究極のゴール「自己実現」を目指す

先程、人間の基本的欲求が満たされた結果、「自己実現」という段階に向かうことができるということをお話しました。

 

「自分らしさ」「本当に自分がやりたいこと」を実現するためには、安定的な衣食住、信頼できる人間関係の構築が必要です。

 

まずは自分自身がどの欲求の段階にいて、これから何を満たさなければいけないのか振り返ってみましょう。

 

そして、本当に自分がやりたいことを、自信をもって行える「自己実現」の段階にたどりついたならば、SNSでイライラすることはなくなっているはずです。

 

③褒めあえる人間関係を現実でつくる

SNSに依存してしまう原因は、自分自身が他者からの「評価」に飢えているからです。

 

「いいね」をもらうことで、この願望を多少満たすことはできますが、完全に満足することはできません。

 

だから、「いいね」をお金で買う人も中にはいらっしゃるわけです。

 

現実の世界で、「褒めあえる」関係性を構築し、本当の自信を高めていくことで、「いいね」へ執着することなく、適度な距離をおいてSNSを使うことができるようになります。

 

 

さいごに

いつでもたくさんの友達とつながれるSNSは便利ですが、ときに複雑な感情が伴います。

 

自尊心を高め、自分自身を自由に表現できるようになれば、こういった感情から開放されるはずです。

 

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広瀬絵美

臨床心理士

心理学の大学を卒業後、広告会社にて勤務。退職後、心理系大学院修士課程を修了し臨床心理士資格を取得。精神科病院にて従業員のメンタルヘルスケア業務に従事する。また、国立研究所にて職場組織や妊婦さんのメンタルヘルスに関する研究にも携わっている。理想的な「ワークライフバランス」を目指し、研究と実践の両面から支援を行っている。一児の母。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年12月27日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。