【臨床心理士解説】アダルトチルドレンと認知行動療法。効果的な活用方法は?

(質問)アダルトチルドレンの対処法として認知行動療法は有効なのでしょうか?どのように取り組めばよいかなどについても教えてください。

 

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※アダルトチルドレンは診断名ではなく医学的な概念ではありません。

 

アダルトチルドレンと認知行動療法

アダルトチルドレンは診断できる疾患名ではありませんが、アダルトチルドレンに特徴的な生きづらさや困難さは認められており、それらを克服していく心理療法として認知行動療法の有用性は認められています。

 

認知行動療法では、

自分自身のストレスに気づき、そこにはどんな問題があるか、

 

ある状況下で自分の中に自然と沸き起こる考え(自動思考)はどのようなものか、

 

その自動思考がどのようにあなたの感情や行動に影響を与えているか、

などじっくりと振り返りながら気づき、新しい行動や考え方を獲得していきます。

 

原則的には認知行動療法はおおむね16回のパッケージ化された心理療法ですが、進度などによって回数が変わる場合があります。

 

そのため、克服までの期間はそれぞれの方のこれまでのご経緯やアダルトチルドレンの根深さや度合いなどによってさまざまではあります。

 

培ってきた思考パターンや行動パターンについてアプローチを行っていきますので、一朝一夕にはいかず、長い目で見てどっしりと構えるような心構えでいていただけたらと考えます。

 

効果や進度も人によりばらつきがありますし、直線的に進むものではなく、時に足踏みをしているような気持ちになられることもあるかもしれません。

 

続けていく中であるときにふと点と点がつながって線になり、スッと納得出来たり、受け入れがたかった思いから解放されたりと、それぞれの方に必要な時間をかけながら向き合い克服を図っていくイメージかと考えられます。

 

安全な場所・人にあなたの過去を整理し、需要するプロセスをたどり、心理的な欲求を満たしてもらうことで自己を癒しながら、自分の中にある、培われてきたあなたを苦しめる信念などに気づき、認知行動療法を用いて新しい考え方やスキルを習得していきます。

 

認知行動療法の活用ポイント

専門家のアドバイスを受けながら取り組む

アダルトチルドレンによる、生きづらさが大きい、一人で抱えきれない・処理しきれない場合には専門家を活用されることをお勧めします。

 

あなたのお話を伺い、ご体調やご状況を見ながら一緒に克服に向けて認知行動療法に取り組んでいきます。

 

どのような困りごとがあり、どのような自動思考があるか、別の方法はどのようなものがあるかなど、一緒に探していくことができます。

 

また、過去の辛いご経験などをお話することで、受け入れがたい考えや抑え込まれていた感情を解放することも期待できます。

 

コラム表を通じて自分を見つめてみる

専門家にかかるほどではなく、自分で自分を振り返ってみようと考えられる場合には、ご自身で認知行動療法を行ってみることも可能です。

 

ネットや書店の本などに「認知行動療法」について様々紹介されています。

 

認知再構成法と呼ばれるものでは、コラム表を用いて、どんな状況でどんな気持ちになるか、どんなことを考えるか、などを丁寧に振り返り、自分自身を見つめることが出来ます。

 

繰り返し行うことで、自分の中の考え方の癖に気づき、同じような場面に出くわした際に、苦しくならないように新しい考え方を獲得していくことを目指します。

 

コラム表は5つのものや7つのものなどいくつかのパターンがありますので、取り組みやすいものから始めてみてもいいですね。

 

【認知のゆがみ】について見つめる

「~するべきだ」

「白か黒か」

「悪いことが起きたときに自分のせいにしてしまう」

など【認知のゆがみ】と呼ばれる考え方がある場合には、自分が苦しくなってしまいやすいと考えられています。

 

こうした認知のゆがみを持っていないか、日常生活を振り返ってみるのも良いですね。

 

頭の片隅においておくと、日常生活の中でふと「あ、これ認知のゆがみかも」と気づきやすくなりますよ。

 

認知のゆがみも認知行動療法を用いて新しい思考パターンを探していく方法がありますので、ご関心がある際には挑戦してみていただけたらと思います。

 

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【参考】

・こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳 大野 裕(著)

・発達障害とトラウマ  杉山 登志郎

・毒親概念の倫理1  ―自らをアダルトチルドレンと「認める」ことの困難性に着目して
高倉 久有 ・ 小西 真理子

・サブシステムに着目した家族機能とアダルトチルドレン傾向との関連について  井村 文音
松下 姫歌

・家族機能認知とアダルト・チルドレン傾向 諸井克英

ほか、臨床経験と講義資料より構成

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花井菜美

臨床心理士/公認心理師

心理系大学院修了後、渡米。現地NPOサポート団体に所属し活動をする。帰国後精神科や発達障害児支援施設にて勤務。学生、主婦、子ども、夫婦関係など様々な問題を抱える方の支援を行う。2児の母。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2023年4月24日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。