心の支えがないときの自分との4つの向き合い方とは?臨床心理士が解説
心の支えになるものならないものの違いとは?
それでは、心の支えになるものとそうでないものとの間には、何か違いがあるのでしょうか。少し詳しく考えてみましょう。
人の評価に左右されるか、されないか
社会学者である加藤諦三氏は、著書『心の支え方:人生の試練を乗り切るための心理学』の中で、心の支えについてこんな見解を示しています。
「アメリカで『Best and Brightest』と言われている人たちがヘロインのとりすぎで死んでいくことが問題になっている。『Best and Brightest』と言われることでは心の支えにならない。人気も名声も心の支えにはならない。」
Best and Brightest とは、「最も優秀な人々」を意味するとても名誉な呼称です。
にも関わらず、そう呼ばれる人々が薬物によって命を落としてしまう現実を指摘しています。
このことからは、
心の支えとは「人の評価に依るものではない」
ということが言えるように思います。
例を挙げるならば、「社長」という肩書だけでは心の支えになりづらいものですが、会社をより良いものにしようと奮闘した「社長になるための努力」は心の支えになり得るのではないかと感じるのです。
自分の“つみかさね”によって得たものか、そうでないか
また、だからこそ「心の支え」とは「自分の力で培ったもの」であることが重要です。
誰かに買ってもらった家よりも自分の努力の上で建てたものの方が、それを確たる存在として感じられやすいものです。
それは、誰かに“お膳立てされた”ものではないということ、つまり「自分が建てたのだ」という自信と誇りが、心の支えとしてその人に根付くからであると思います。
「パートナーや家族の存在が心の支えになっている」という場合でも、豊かな人間関係のためにはお互いがお互いを思いやって関わり合う必要があります。
そういった意味では、相手に尽くす見えない努力が知らないうちになされているのかもしれません。
心の支えがない?見つけるには?
冒頭でも触れましたが、「心の支えがない」「見つけ方がわからない」といった人もいることでしょう。
心の支えとは、どのようにして培われるものなのでしょうか。
これまでに見てきた内容も含めて、そのヒントを探っていくこととします。
自分だけの世界を持つ
どんなことでも構いませんから、まずは自分の好きなことや得意なことをとことんやり抜いてみるのも良いと思います。
好きなことや興味のあることほど、惜しみなく努力を尽くせるものです。
そうして、社会的なステータスや評価にしばられない「自分だけの世界」を持つことができると、それはあなたを支えてくれる要素の一つになるかもしれません。
自分の意志を持つこと
「自分の心の支え」を作るには、「自分の意志」を持っていることが必要です。
他人の意志を優先したり言われるがままに振舞っているだけでは、何かを成し遂げたとしてもどこか「他人の手柄」のようで頼りない感じがするものです。
「意志あるところに道はひらける」
という言葉もあるように、自分自身の意志を持ってことにあたっていく姿勢が、やがて成果に繋がります。
そういった結果の積み重ねが、心の支柱を少しずつ作っていくのだと思います。
自分に責任を持つこと
加藤諦三氏は先述の著書の中で、
「責任転嫁をしている限り心の支えはできない」
と述べています。
このことはつまり、心の支えを作るには、
「自分にまつわることを自身で引き受ける強さが必要である」
と言っているように感じられます。
自分に自信を持つこと
心に支えのある人は、苦境の中でも自分を信じて進んでいくことが出来ます。
それは自分に責任をもってやってきた経験と自信が、
「自分はこんな場面でも逃げなかった、だからこの先も何とかなる」
という確かな実感となってその人に力を与えているからだと思います。
問題やその原因を誰かのせいにするのはある意味ではとてもラクなことですが、将来同じような場面に出くわしたときに、それは再び課題となって目の前に立ちふさがります。
心の支えとは、
「難しい現実ほど自分自身の意志をもってあたり、その結果を認めて受け入れていくこと」
の先にあるものなのかもしれません。
さいごに
「心の支え」ということについて、皆さんと一緒に考えてきました。
心の支えとは、簡単に作られるものではありません。
しかしながら、生き方次第で誰もが得ることができるものであるとも感じます。
そして、心の支えを作ることに近道はないのかもしれません。
毎日の地道な積み重ねこそが、やがて大きな柱となっていくのだと思います。
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- 本記事は2018年12月21日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。