【学習性無力感】仕事での事例と4つの克服法とは?臨床心理士が解説

2019.03.15公開 2019.05.16更新

【学習性無力感】仕事での3つの事例

仕事でも学習性無力感の危険はいろいろなところに潜んでいます。

 

あなた自身や身近な方で、こんな状況に陥った方はいないでしょうか?

 

①達成への意欲がなくなる

営業ノルマがなかなか達成できないAさん。

 

外回りを増やしたり、営業スキルを磨いたり…

 

休日も返上で、夜遅くまで仕事に時間を割いていましたが、なかなか結果につながりません。

 

そのうち、Aさんの顔からは表情がなくなり、上司に責められてもただ黙り込むようになりました。

 

がんばっていたスキルアップの勉強もやめてしまい、周りも心配しています。

 

②つらい人間関係に耐える

職場の人間関係に悩むBさん。

 

ささいなことがきっかけで同僚から避けられるようになり、仕事に支障が出ています。

 

いろいろと声をかけても無視されて、上司に相談しても取り合ってもらえません。

 

家族を養うためには仕事もやめられず、ただただ耐える日々が続いています。

 

③仕事を抱え込んでしまう

販売店で店長を任されているCさん。

 

アルバイト従業員が短期間でやめてしまうことに悩んでいます。

 

一人ひとりに積極的に声をかけたり、アドバイスをしたり、さまざまな工夫をしましたが状況は変わりません。

 

そのうち「自分に上に立つ素質がないからだ」と自分を責めるようになりました。

 

「自分が悪いのだから、自分が仕事を負担するしかない」と考え、今ではほとんどの業務をCさんが一人で抱え込んでいます。

 

 

学習性無力感の4つの克服法は?

①狭くなっている視野を広げる

学習性無力感に陥ると、気が付かないうちに視野が狭くなっています。

 

まずは問題から少し距離をとって、視野を広げてみることが第一歩。

 

「何をやっても無駄だ」という思いを抱えつつも、少し冷静に周りを観察してみてください。

 

困っている状況や、これまで試した方法(失敗したものも含めて)を紙に書き出してみることもおすすめです。

 

いろいろな立場の人に相談して意見を聞くことで、視野が広がることもあります。

 

また、情報や感情があふれて混乱しているときは、思い切ってしばらく休憩をとってみることも大切です。

 

精神的なつらさが強い場合は、うつ病などにかかっている可能性もありますので、医療機関での受診も検討してみてください。

 

【関連記事】

>>うつ病の超初期症状とは?気づくポイントを元精神科看護師でうつ病経験者が解説

 

②多すぎ・遠すぎの目標を変える

目標が遠すぎたり、多すぎたりすると、なかなか実現に近づけず無力感に陥りがちです。

 

目標が適切かどうか、目標と方法が合っているかどうかをあらためて見直してみましょう。

 

目標までの道のりが遠い場合は、いくつかの「短期目標」を作ってみるといいでしょう。

 

ひとつずつ達成することで前進が実感できるので、無力感に陥りにくくなります。

 

③自分を責めすぎない

うまくいかないことが続くと、

自分が悪い、自分に能力がない

だから何をやっても意味がない

という投げやりな気持ちから、学習性無力感に陥ってしまうこともあります。

 

ただ、

 

「異動で部署やメンバーが変わったら楽になった」

「景気や流行が変わってうまくいくようになった」

 

など、自分以外の要因がからんでいるケースも実際には少なくありません。

 

できるかぎりの工夫をしてもうまくいかないときは、自分を責めすぎないことも大切。

今はたまたま環境が合っていない、今回は運が悪かった

いつかチャンスが来る

と考えると、変化への小さなきっかけを見落としにくくなります。

 

④うまくいっている人に学ぶ

いったん無力感に陥ると、モチベーションをあげるのはなかなか難しいものですね。

 

そんなときは、自分と同じような立場で成功した人を見つけることが励みになります。

 

その人のやり方や考え方のなかに、自分にもできることがあるかもしれません。

「この状況から抜け出した人がいる」

という事実を知るだけで、少し希望が見えてくることもありますよ。

 

身近な人だけでなくメディアも参考にしながら、ぜひいろいろな経験談にふれてみてください。

 

 

さいごに

学習性無力感は、がんばっている人なら誰でも陥る可能性のあるものです。

 

「もうだめだ」「何をしてもムダ」と感じても、希望を捨てる必要はありません。

 

変化は必ずやってきますので、あせらず落ち着いて考えていきましょう。

 

一人で抱えきれないときは、ぜひ誰かに相談してみてくださいね。

 

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倉本梓

臨床心理士

心理系大学院修士課程を修了後、臨床心理士資格を取得。医療機関、教育機関でカウンセリングを担当するほか、スクールカウンセラーとしても活動。子育て、家庭問題、対人問題をはじめ、「自分らしい生き方」のためのメンタルヘルス向上を目指した支援を行なっている。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年3月15日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。