ADHDの人のお金の管理…ポイントを臨床心理士が解説
思いつきで買ってしまう
もう一つの抑制制御の問題は、不注意と関連があります。
不注意と書くと、ぼーっとしているというニュアンスがありますが、英語のInattentionには、ぼーっとしているというよりも、注意(集中)できないというニュアンスの方が大きいです。
不注意の症状は、『乱されやすい』『反応しやすい』という表現が近いでしょう。
この症状は、遂行機能障害という症状を生み出します。
例えば、スーパーに買い物に行ったとして、定型発達障害の人は、買いたいものを頭に浮かべながら、スーパーの端から回っていくと思います。
そうした方が、移動距離は少なく、時間も短いですよね。
不注意がひどい場合は、頭に思いついたものを買いに回ります。
例えば、
「あ、牛乳が必要だった」
「あっ、カップラーメンも必要だった」
「そういえば、チーズもいいなぁ…」
などのように、売り場が近い場所を回るのではなく、思いついた順番に回ります。
このように、計画が立てられない状態を遂行機能障害といいます。
余談ですが、遂行機能障害は交通事故等の高次脳機能障害で起ることがよく知られています。
その遂行機能障害があると、計画的にお金を管理することが難しくなります。
「〜まで待てば、自由なお金が手に入る」などの先を見越して考えるよりも、「目の間に余っていそうなお金がある…」というだけで、使っても良いかもしれないと感じて使ってしまいます。
計画的にお金を管理するには…
さて、こんなADHDの方のお金の管理について思うことですが…
②その上で、貯金する金額は、おろさずに銀行に入れておきます。
③そして、おろしたお金から、1ヶ月の食費を別の財布に入れます。
食べるものは、この財布からしか使わないようにします。
残ったお金が1ヶ月のお小遣い(自由に使えるお金)になります。
食費用の財布のお金は、すぐなくなってしまうかもしれません。
しかし、それは症状から来ているので、大丈夫です。
1ヶ月の間に必要なその他のお金は確保されています。
ちなみに、家計簿をつけるのは、あまり向かないような気がしています。
最近は、レシートを写真にとるだけで解析してくれるアプリがあるので、できるかもしれませんが、根気が続かないような気がします。
また、クレジットカードは、使わないようにします。
これが最も重要です。
特に浪費癖があるADHDの人には大敵です。
特にリボ払い等に頼ると、毎月の返済額がとんでもないことになってしまいます。
さいごに
ADHDの方にとってお金の管理はとても大きな問題です。
しかし、症状をしっかりと理解して、対策を立てれば、改善していく所は必ずあるはずです。
【記事提供】
矢野宏之 臨床心理士
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2016年8月18日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。