過労死は労働時間だけの問題?過労死の原因と防止策を産業保健師が解説
過労死に関わるメンタル不調の原因
メンタルヘルスの不調は体の病気とは異なり、画像や数値でははかれず、原因も様々です。
例えば、
・個人的なこと(性格、生い立ち、家庭環境、プライベートの人間関係など)がうまくいっていない
・残業時間が多い状態が続いている、残業時間が多い状態の終わりがみえない
・業務時間外も仕事に関わるなどプライベートとの線引きができない
・職場の人間関係が悪い
・多い仕事量、難しい仕事など大きすぎる仕事の負荷
・少なすぎる仕事量、自分を活かせない、成長を感じられないなど、やりがいが感じられない
・仕事が自分の裁量でできない
・仕事に見合った待遇がもらえていない、給料が安い
など、その原因は多岐に渡ります。
これらの要因がいくつも重なることで、メンタルヘルス不調になるリスクは高くなります。
つまり、これらの要因が重なれば、誰にでもメンタルヘルスの不調になる可能性があるのです。
今回の電通の事件について、自殺した新入社員の女性がTwitterに投稿している内容をみてみると、
・労働時間に関する投稿
・終わりが見えないといった長時間労働が常態化していると思われる投稿
・上司との人間関係がうまくいっていないと考えられる投稿
などがあります。
また、新入社員であったということで、職場や仕事に不慣れであり、仕事の負荷が大きかったことが考えられます。
メンタル不調を防ぐために
先ほどあげたストレスを、すべて取り除くことはできませんし、ある程度のストレスは仕事をしていくうえでは必要なものもあります。
ですが、その小さなストレスも積み重なれば大きくなり、「過労死」につながるリスクとなります。
メンタルヘルスの不調によって過労死しないために、日々の生活でできることがあります。
筆者が考える、メンタルヘルスの不調を防ぐために、ご自身でもできる大切なことは
・ストレスをマネジメントすること
・誰かに相談すること
の2点です。
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
ストレスマネジメント法
ストレスをマネジメントするとはどういうことでしょうか。
一つめのステップは、ストレスを受けた自分の状態に気づくことです。
例えば、自分はお腹が痛くなりやすい、イライラしやすいなど、ストレスに対する自分の体や心の反応を客観的にみることを日ごろから意識することが有効です。
二つめのステップは、ストレスに対処する具体的な方法を取ることです。
いわゆるストレス解消法です。
これは、たくさん持っていれば持っているだけ、かつ簡単に実施できるものであるほど有効です。
具体的には、
・起こっている問題自体を解決する
(職場で誰か信頼できる人に相談する、スキルをあげる、コミュニケーションをとるようにするなど)
・仕事に関係ない人間関係をもち、仕事以外での居場所をもつこと
・リラクゼーション
・休息をとる
・仕事と離れた趣味をもつ
・簡単ですぐできる息抜きをいくつかもつ(音楽をきく、ストレッチなど)
・旅行
などです。
ストレス解消の手段を多く持っている人ほど、ストレスに対して強く、メンタルヘルスの不調になりにくいのです。
また、『これをしたらストレス解消になる』と自分に言い聞かせ、その行動を起こすことで、脳はストレス解消になると思い込むため、ストレス解消の効果がUPするとも言われています。
忘れがちな、誰かに相談する重要性
2つ目の誰かに相談するということは、ご自身のストレス状態を重症化させないために非常に有効です。
相談することが苦手という方もいらっしゃるかと思いますが、相談すること自体、一つのストレスに対する対処スキルです。
今の問題自体の解決ができなくても、人に話すことで自分の頭の中が整理でき、客観的に見ることができるようになります。
そのためには、自分が思う存分話せるように、話を肯定的に聞いてくれる相手を選ぶことをお勧めします。
信頼できる誰かでもいいでしょうし、専門家に相談することも有効です。
相談窓口もたくさん知っておくとよいでしょう。
社内の産業医や保健師などの専門家、健康保険組合や会社が連携している医療機関、地域の保健所や医療機関、電話・ウェブ相談などがあります。
さいごに
残業が多いこと、労働時間が長いことは、それ自体が大きなストレスとなり、過労死につながるリスクであることは間違いありません。
しかし、長時間労働以外にも、メンタルヘルスの不調など、過労死につながる要因は数多くあります。
「たかがストレス。されどストレス」
ストレスを甘くみず、一度ご自身と向き合うことをお勧めします。
そして、つらいと感じたときに相談することは、命を守ることにつながるのです。
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2016年11月2日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。