「他人のせいにする人生」にしないために。ネフローゼ症候群の私がひとり旅をした理由

ネフローゼ症候群の症状が治っても、ステロイドの副作用は続く

てむたむさん
症状が治まったのは、ステロイドを大量に内服しているから。ネフローゼ症候群の症状が治まってもなくならないのが、ステロイドの副作用なんです。
くまの
ネフローゼ症候群の症状が治まっても、ステロイドは飲み続けなくてはいけないんですか?
てむたむさん
ステロイドを飲まないと、ネフローゼ症候群が再発するかもしれないんです。一生飲み続ける必要はないかもしれないけど、急に減らすことができない薬で…。

 

副作用がつらくても、飲まないわけにはいかないんです。

くまの
そうなんですね…。
てむたむさん
実際、私もステロイドを減らしていく中で、再発してしまったんです。最初のネフローゼ症候群が寛解(かんかい)してから、3ヶ月後のことでした。

 

再発してからは、またステロイドの量を増やして、もう一度ネフローゼ症候群の症状を抑えました。だから、今も寛解(かんかい)の状態。ネフローゼ症候群の症状はありません。

 

でも、ステロイドの副作用は続いています。

くまの
副作用は、例えばどんなものがあったんですか?
てむたむさん
表に出てくるものなら、不眠や筋力の低下、“ステロイドうつ”にもなりました。目に見えない体の中のものなら、感染症の恐れがあるとか、骨粗しょう症のリスクがあるとか。
くまの
ステロイドうつとは、どんなものなんでしょう?
てむたむさん
ステロイドを飲むことによって、うつ病になってしまうんです。私は、同じ病室の人の声がどうしても気になってしまったり、看護師さんの言葉のちょっとしたことが引っかかってしまったり…。

 

人と接することがとても困難になりました。

 

最初の入院を早めに切り上げたのも、ステロイドうつの症状がひどくて、どうしても自宅に帰る必要があったからなんです。他人と接しなくてはいけない病院から、1日でも早く出たかったから。

くまの
そうだったんですね…。

 

・どうしてネフローゼ症候群になるのかも分からず、再発原因も分からない
・ステロイドを飲むと副作用が出るけど、急に減らすことができない

 

こう聞くと、本当に大変な病気なんだなと感じます。

てむたむさん
ネフローゼ症候群の苦しさって、もちろん病気の症状もしんどいんですけど、治療の先行きが不透明だったり、いつ再発するか分からない不安だったり、他人に説明することの難しさだったり…。いろいろなものがミックスされている感じなんです。

 

もっと簡単だったらいいなって、本当に思いますね。

 

自分の気持ちを文章化して、気持ちを整理していった

くまの
ネフローゼ症候群を発症してから、どのように気持ちを整理していったんですか?
てむたむさん
発症当時は、人と会うことが本当にできなかったんです。顔がパンパンになって、別人のようになってしまって…。

 

「ムーンフェイス」と言うんですけど、ステロイドの副作用で顔が丸くなってしまうんです。輪郭をカバーしようと行った馴染みの美容院でも、誰だか分かってもらえないくらい。

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(左)ネフローゼ症候群発症前のてむたむさん。(右)ネフローゼ症候群発症後のてむたむさん。

てむたむさん
あとは、ステロイドうつの症状もあったので。人と会えるようになったのは、本当にここ数ヶ月くらいです。

 

人と話すようになって、少しずつ自分の中の不安を整理できるようになった感じですね。

くまの
本当に、直近のお話なんですね。
てむたむさん
そうですね。あとは、ブログで自分の思いを文章化していることも、気持ちを整理することに繋がっていると思います。

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ネフローゼ症候群のことを書いているてむたむさんのブログ

くまの
てむたむさんのブログ、読みました!ネフローゼ症候群の症状や、入院中の様子が、とても詳しく書かれていますよね。
てむたむさん
ブログやSNSで繋がった方には、とても救われていると思います。

 

健康な方だと、「難病」というだけでとても心配されてしまうから。友達は病気になる前の私の姿を知っているから、見た目で驚かれてしまうこともあるので…。

 

気を使わせるのも、しんどいときがあるんですよね。

くまの
「難病扱い」されるのも、苦しいですか?
てむたむさん
もちろん、副作用がつらいときは、無理に連れ回されたりは困るんですけど…。

 

今まで普通に話せていたのに、どうしても話題が病気にシフトされてしまうのは、息苦しいなと感じるときはあります。

 

友達には、「交通事故にあうようなものなんだよ」と言っているんです。

くまの
交通事故…?
てむたむさん
事故って、いつあうか分からないじゃないですか。交通事故にあって、例えば骨折しても、痛みが治まれば仕事復帰はできますよね。

 

ネフローゼ症候群も同じで、発症の原因も分からないし、いつ再発するかも分からない。ステロイドを減らした状態で、再発しなければ、普通に生活や仕事ができる可能性があるんです。

 

本当に、事故みたいなものじゃないですか。だから、そんなもんなんだよって。

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くまの
なるほど…。確かに、いつ事故に合うのか、いつ病気になるのか、そんなこと誰にも分からないですよね。
てむたむさん
そうなんですよ。気を使ってくれるのは嬉しいなとは思うんですけど、今まで通り、私として話がしたいなと思うこともあって…。

 

だからこそ、ブログを通して同じ境遇の人と繋がれたことは、自分にとって幸運だったと思います。ネフローゼ症候群ではない病気であっても、“病気と戦っている”という点では、同じだと思うから。

くまの
自分の気持ちを分かってくれる人との出会いに、救われたんですね。
てむたむさん
そうですね。いろいろな病気の人がどこかで頑張っているんだなと思うと、自分の励みにもなるんだなと思いました。

 

ブログがきっかけで決意したひとり旅

くまの
ブログを始めようと思ったきっかけは、なんだったんですか?
てむたむさん
ツイッターで、私と同じように病気と付き合っている人と繋がることができて、「ひとりじゃないんだな」と思ったことがきっかけです。病気でも働いている人がいるんだなとか、家の中でも元気に過ごしている人がいるんだなと知って…。

 

私が元気をもらっている人のように、私も明るく過ごせるのかなと思って。入院中に、サーバーやドメインを契約して、ブログを開設したんです。

くまの
入院中に!?すごい行動力ですね。
てむたむさん
思い立ったら、止まらないタイプなので…(笑)

 

つらいことも、楽しいことも含めて、自分が生きている姿を発信したいと思っています。それを見た人が、少しでも元気になったり、気持ちが楽になってくれたらいいなって。

くまの
ブログを始めて、なにかよかったことはありますか?
てむたむさん
ブログを通じて、人と会えたことですね。

 

ネフローゼ症候群の方ではないんですけど、自分が悩んでいたことを、他の人の助けになるようにとブログで発信している姿に、とても勇気をもらって。

 

その人に会うために、九州旅行をしたんです。病気になって、初めてのひとり旅でした。

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ネフローゼ症候群になってから、初めてのひとり旅。体に負担がないように、できるだけ荷物は軽く。

くまの
てむたむさんの行動力、やっぱりすごい…。
てむたむさん
旅行に行けたことは、自分の中でとても大きいことでした。その方以外にも、たくさんの人と出会うことができて…。

 

私、外にずっと出れない状況で、自分のやりたいことが分からなくなっていたんです。

 

働いていなかったので、貯金を使うことにも罪悪感があったし。ご飯はもやしとうどん、みたいな(笑)

くまの
えー!むしろ栄養を付けてほしいと思ってしまう…。自分のしたいことを、見失ってしまった感じ?
てむたむさん
そうです。実は、入院中に「あれやっておけばよかった」「あの人に会っておけばよかった」とすごく後悔したんです。なのに、家でじっと回復を待っている間に、少しずつその気持ちが薄れてきてしまって。

 

ブログがきっかけで旅をすることで、自分がなにが好きだったのか、どんなことがしたかったのか、思い出すことができました。

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旅行に行く前に撮った、中部国際空港の写真。

 

くまの
てむたむさんにとって、とても大切な旅行になったんですね。
てむたむさん
ブログで知り合った人とお会いしたとき、第一声が、「大丈夫?」じゃないのは、嬉しかったですね。

 

「病気になった私」ではなく、「ただの私」として話せたことは、救われた気分でした。

 

自分のやりたいことを、自分の責任で選択して生きていく

くまの
てむたむさんが、一時期もやしやうどんばかり食べていたように、病気のときに自分が楽しむためにお金を使っていいのか、分からない人もいる気がしていて。そんな人は、どうすればいいと思いますか?
てむたむさん
元々、私は「自分って駄目なんだ」と思っていたんです。親が「私って大変なのよ、助けてよ」という感じの人だったので…。

 

「私がもっと頑張らないと、支えてあげないと」と思って、子どものころから生活してきました。自分がやりたいと思うことは、やっちゃいけないんだとずっと感じていたんです。

くまの
そうだったんですね…。その気持ちは、どこで変わったんですか?
てむたむさん
『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』という本があって、それにとても影響を受けました。

 

本を読んで、「自分のやりたいことを、自分の責任で選択していく」ことが、自分にとっては大事だったんだと気がついたんです。本を読んだからって、すぐに行動できるわけではなかったけど…。

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てむたむさん
それでも、1回きりの人生で、自分はなにがしたいんだろう?他の人の意見を聞き続けて生きて、後悔しないだろうか?って、少しずつ考えるようになりました。
くまの
とてもいい方向に、考え方が変わったんですね。
てむたむさん
それに、「病気だから申し訳ない」と考えて行動していると、行動せずに後悔したときに、他の人を責めてしまう気もしたんです。

 

「病気なんだから、きっとこう思われているだろう」と思って自分の行動を決めたら、自分の選択を、すべて他人のせいにする人生になってしまうじゃないですか。それは嫌だなって。

 

ブログをすることも、旅行をすることも、自分で選んで決めたことです。その結果、とてもいい経験ができている。人任せにしていたら、得られなかったことだと思います。

くまの
「他人のせいにする人生」、こうして聞いているだけでも嫌だなと思います…。てむたむさんの言葉って、とても正直で、素直な印象があります。SNSやブログでも、押し付ける言葉がないような感じ。
てむたむさん
私は、SNSやブログって「自分の気持ちをそこに置いてくる」ものだと思っているんです。誰かに「こうしたほうがいいよ!こうするべきだよ!」と押し付けたくはなくて。

 

自分が思ったことや、苦しんだことや、役に立ったことをそのまま書いて、見たい人が見てくれるのが嬉しいと思うから。

https://twitter.com/temtam8/status/1152960357436026880

ツイッターでバズったてむたむさんの投稿。感情を素直に表現するてむたむさんに、多くの人が共感したようです。

 

くまの
最後に、この記事を読んでくれた人に、伝えたいことはありますか?
てむたむさん
私は、自分のやりたい人生を歩むことが、今とても楽しいと思っています。病気になっても、その気持ちは変わりません。人のせいにせずに、自分がやりたいと思うことを、これからも選択していきたい。

 

よく、「この世にホームステイしている」と考えることがあるんですけどね。

くまの
この世にホームステイ…?どういうことですか?
てむたむさん
まぁ、あの世があるのかは分からないんですけど…(笑)

 

私はこの世に一時的にホームステイしているだけだから、つらいことがあっても、この世に遊びに来ているときくらいは楽しもうかなって。

くまの
へぇ~~~おもしろい考え方!
てむたむさん
80年くらいのホームステイなら、やりたいことをして過ごせばいいじゃんって(笑)

 

自分のやりたいことを、自分の責任で選択して、生きていく。

 

そのことは、これからも忘れたくないなと思います。

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「他人のせいにする人生は嫌だ」という言葉は、ネフローゼ症候群になっても懸命に前を向いて歩いてきたてむたむさんだからこそ、生まれた言葉だと感じました。

 

「病気だから我慢しなくちゃ」と抑圧された気持ちは、いつか爆発して、身近な人を傷つけてしまうこともあるのかもしれません。自分のしたいことを、自分の責任で。忘れないようにしたいです。

てむたむさんのTwitterはこちら >> @temtam8
てむたむさんのブログはこちら >> temtam-blog
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くまのなな

ライター

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年8月23日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。