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身体と心の性の不一致。トランスジェンダーの苦しみとそこから生まれた希望とは。
2019.09.02公開 2019.10.01更新
自分が変われば、周りも変わるかもしれないという希望

くまの
プリちゃんとお話をしていると、とても行動力のある人だなぁと感じるので、受け身だったと聞いてとても意外です。気持ちを表に出すようになったのは、なにかきっかけがあったんですか?
プリちゃん
高校入学と同時に、
「受け身の自分を変えたい!」と思ったんです。中学でいじめにあって、それが本当に苦しかったから。
トランスジェンダーのことをカミングアウトはしていないけど、高校生くらいから、少しずつ自分らしさを出すようになっていきました。


くまの
自分を変えるために、どんなことをしたんですか?
プリちゃん
自分から、
積極的に人に話しかけるようにしました。
自分が変われば、周りも変わってくれるかもしれない。その希望があったから、行動できたのかなと思います。


プリちゃん
あとは、感情的にならないようにしたりとか。コミュニケーションが上手くいかなくても、怒りを封印する感じ。


くまの
それって、すごく難しそう…。どうしても怒りが湧き出てしまうときは、ぐっと押し込めるんですか?
プリちゃん
押し込めるというより、受け止める感じかな。
相手の言い分は相手のもので、自分の気持ちとは切り離すような。


くまの
なるほど…。それができれば、無意味に人とぶつかることもなさそう。でも、頭では分かっていても、実際にできることがすごいですね。
プリちゃん
心の中では試行錯誤の連続だったので、大変でしたけどね…。怒りを消化することが少しずつできるようになったのは、
お父さんとの関係も影響していると思います。
お父さんは、自分とは好みもなにもかも正反対で、相性も最悪だったから…。

プリちゃん
お父さんは、私が希望していることに対して、すべて否定から入る人だったんです。自分がいつも正しい、それはする必要ないと才能の芽をついばむような。
好きなものも、野球とか車とか、ザ・男性!って感じのもので。でも、自分はかわいいものや、お絵描きが好きだったから。価値観も全然合わなかったんです。


くまの
お父さんが、プリちゃんに価値観を押し付けてくることもありました?
プリちゃん
押し付けるまではいかないけど、例えば、
お父さんはキャッチボールをやりたがるけど、自分は全然楽しくないとかはありましたね。
なかなか自分の気持ちを言葉に伝えることができなくて、すぐ泣く子供だったし、価値観が全然合わないから懐くこともなく…。それが余計に、お父さんをイライラさせていたのかもしれないです。


くまの
ご両親には、自分の身体の性に違和感があることは打ち明けていますか?
プリちゃん
うーん…、そのことに関しては、
今もちゃんとは話せていなくて…。やっぱり中々難しいことだったりもするんですよね。親はどちらかというと、昔ながらの価値観を強く持っているタイプなので…。
ただ、大切な友達にはやっとここ数年で言えるようになりました。
それでも、毎回心の中では「嫌われたらどうしよう」ってビクビクしていますけどね。友達に伝えるのでさえもそれくらい勇気がいるので、親ならなおさらね…。



くまの
高校から少しずつ自分を出せるようになってから、生活は変わりましたか?
プリちゃん
大学生になって、自分の好きなものにより素直になっていったんです。そのときはミクシィが流行っていたから、そこでも自分の好きなものを発信するようになって。
自分が好きなものを知ってもらって、受け入れてもらって、さらに自分らしさを出せるようになって…。少しずつ、輪が広がっていきました。

プリちゃん
でも、就活が始まって、また世間の型にハマらなくてはいけなくなったんです。あの時期は、つらかったですね。

プリちゃん
男性は黒のスーツを着なくてはいけないとか、
髪は短く切らなくてはいけないとか。そういうのが、本当に苦しかったんです。
無理矢理合わせた時期もあったけど、どこかで「なにか違うな」とは感じていて。先々のことを考えたときに、なにもかも嫌になってしまったんです。
だから、就職先を探すことを一旦止めたこともありましたね。


くまの
世間が求める「型」に合わせるのが、苦しかったんですね。
プリちゃん
そうです。どこかに属するとしても、
自分らしさを押し殺すところは嫌だったから。
そこからは、髪型や身につける服も決まりがない美容師を目指したり、アパレルの販売員をしたり、自分らしく働ける場所を選んで、いろいろな経験を積んでいくようになりました。

自分らしく働くために選んだ、アーティストの仕事

くまの
プリちゃんは、今はアーティストとして活動されていますよね。すごく単純な質問なんですけど、アーティストの仕事を選んで、よかったですか?
プリちゃん
よかったですよ!
自分がやりたいことを、自分の感情で決められるから。
それに、アーティストになってから、世界が本当に広がったんです。人との出会いが増えて、自分らしさをオープンにしながら話せる人も増えたし。
応援してくださる多くの方々に支えられて、お陰様で個展も開けるようになって、さらに自分のことを好きになってもらえる人が増えて…。本当にありがたいなと思います。


くまの
プリちゃんの創作テーマの「心に灯す光と色彩のパレット」が生まれたのは、いつ頃だったんですか?

プリちゃんが撮影した「心に灯す光と色彩のパレット」の作品。(photo by @priusshota)
プリちゃん
2016年1月からですね。もう4年目になります。

プリちゃん
そうですね、好きでした。
写真って、思い出としてずっと残っていくじゃないですか。数年経って写真を見返したときに、楽しかった記憶が蘇ってくるタイムマシンのような感じが好きで。
ガラケーのときから、写真を撮ることは身近にありました。

プリちゃん
撮るうちに、ガラケーじゃ物足りなくなっていったんです。
コンパクトデジタルカメラを買って、それでも物足りなくなって、一眼レフに…って。 徐々にレベルアップしていきましたね。


くまの
段階を踏んで、写真にハマっていったんですね。アーティストとして活動を始めるきっかけは、なんだったんですか?
プリちゃん
自分で撮影した写真を、インスタグラムに投稿するようになったのがきっかけです。
インスタグラムの中で、すごく有名なアーティストの方と繋がることができたんです。その方の作品を見たときに、「写真って、こんな芸術的に撮れるんだ」と感動して。
自分もなにかテーマを決めてやってみたいなと思って生まれたのが、「心に灯す光と色彩のパレット」です。


最近のプリちゃんのインスタグラム。ひとつのギャラリーのように美しいです。

くまの
「心に灯す光と色彩のパレット」を見たとき、光が本当に綺麗で、幻想的な印象がありました。見ていると、どこか勇気付けられるような…。創作のテーマは、どのように決めていったんですか?
プリちゃん
自分が楽しむことはもちろんですけど、
癒しの感情を届けたいなと思ったんです。
写真をひとつのキャンバスに例えて、光と色彩という魔法のパレットでいろいろな光や色を描いて、一つの作品に仕上げていくような…。見てくださった方々が、少しでも気持ちが楽になるようなものになればいいなって。
元々印象派のモネも好きだったので、その影響もありますね。


くまの
テーマって、すぐに決まったんですか?この方向性でいいのかって、迷うことはなかったですか?
プリちゃん
特に悩まなかったですね。写真を見てくれた人に「光を捉えるのが上手だね」と言われたこともあったし、光とか、淡い感じのカラーが昔から好きだったから。だから、
“光と色彩のパレット”はすぐに決まって…。
作品を見てくれた方々に癒しを届けて、また前向きにそれぞれの使命の道を歩んでいけたらいいな、という気持ちを込めて、“心に灯す”をくっ付けたら、「あ、いいじゃんいいじゃん!」って思って(笑)


くまの
そうして生まれたのが、「心に灯す光と色彩のパレット」なんですね。なんだか、生まれるべくして生まれた感じだ!

photo by @priusshota
苦しみや悲しみがあるからこそ、綺麗なものが生まれる

くまの
プリちゃんは、
ブログや
noteでもトランスジェンダーのことを赤裸々に発信していますよね。どうして、自分の気持ちを発信しようと思ったんですか?
プリちゃん
今まで、本当に悩みながら生きているうちに、なんだかんだ経験値を積んできていると感じるようになったんです。だから、
同じように悩んでいる人に、希望とか、救いとか、そういうのを発信を通してちょっとでも届けられたらいいなと思って。
最初は、正直に書いたものの、なかなか公開できなかったんです。それでも、公開したらものすごく反響があって…。


くまの
そうなんですね!どんな反響があったんですか?
プリちゃん
本当に、たくさんの人にコメントをいただきました。
「いろんな挫折をしても、それでも挑戦する姿に勇気付けられました」とか、「プリちゃんはプリちゃんらしく生きていれば、全然オッケーだよ!」とか。

プリちゃん
本当に嬉しかったです!自分のことをオープンにするのって、やっぱり怖さもあったから。肯定的な反応を返してもらって、公開してよかったなと思えました。
もちろん、公開したからって、悩みがすべてなくなるわけじゃないんです。今でも悩みはある。見た目は男性だから、周りのちょっとした態度に苦しむこともあるし、両親にもちゃんと話はできていないし…。
それでも、自分の悩みをオープンにすることによって、誰かが勇気付けられるならとても嬉しい。自分が苦しんだり悲しんだりすることにも、どこかに意味があるのかもって、最近は少しずつ思えるようになりました。



くまの
プリちゃんは、心と身体の性の不一致を隠したまま苦しんでいる人が少しでも楽になるには、どうすればいいと思いますか?もちろん、オープンにすることがいい、悪いとは言えないとは思うんですけど…。
プリちゃん
本当に、難しい問題ですよね。周りが気がついていないだけで、身体は男性でも心は女性とか、またはその逆とか、とても多いと思います。本当に人それぞれだと思うから、自分がとやかく言えることって、あまりないんですけど…。
少しでも、理解を示してくれる人を見つけられたらいいですよね。
今はSNSやYoutubeで、自身のセクシュアリティについてオープンにしながら発信されている方がとても増えてきているので、彼らや彼女らの投稿を見て「ひとりではない」と知ることができたら、ほんの少し心が和らぐのかなと思います。


くまの
誰も気持ちを分かってくれないと思ってしまうのは、つらいですもんね…。
プリちゃん
そうですね、ひとりで誰にも言えなくて抱え込んでしまうことが、一番苦しかったりするので…。
海外の国々からするとまだまだだけど、それでも少しずつ理解を示してくださる方は増えつつあるので、まずはインターネットを通して同じ仲間を見つけるところから始めるといいのかなと私は思いますね。


くまの
プリちゃんも、勇気を出して発信することで、自分を理解してくれる人の輪が広がったんですもんね。
プリちゃん
本当に勇気が必要だったけど、公開したことを悔やんではいないです。
今って、LGBTへの理解が少しずつ広まっていると思うから。社会的にも、いい流れが起きつつあるんですよね。
自分らしさを受け入れてもらえる世の中に、どんどんなっていると思うんです。だから、全然大丈夫だよ!って、伝えたいですね。


くまの
最後に、この記事を読んだ方に、プリちゃんから伝えたいことはありますか?
プリちゃん
生きていると、どうしても、
苦しいことや悲しいことに直面すると思うんです。もうセットなんですよね、嬉しいことや楽しいことと。絶対に、避けては通れない。
だけど、苦しみや悲しみがあるからこそ、綺麗なものが生まれるし、心癒される瞬間がある。いつまでも、苦しみや悲しみが続くことはないんです。
その過程や、克服できた喜びなどを、作品やブログといった様々な形で、これからもお届けしていきたいですね。


Photo by Mari Zaima
「この人は男性だから、こうだろう」
「この人は女性だから、こうだろう」
私たちは無意識に、”性”のイメージに他人を当てはめているのかもしれません。
その人の”性”ではなく、目の前の人がなにが好きなのか、なにが嫌いなのか。その人自身と接することが大切なのだと、今回のインタビューでプリちゃんに教えてもらいました。相手を決めつけることなく、”人”として話ができれば、誰かを無意識に傷つけることも少なくなるのかもしれません。

【ご案内】2019年11/21~11/26、京都で個展を開くプリちゃん。みなさま、ぜひ足を運んでみてくださいね。「光と色彩」が、心にぱっと光を灯してくれるかもしれません。

くまのなな
ライター
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2019年9月2日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2019年9月2日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。