身体と心の性の不一致。トランスジェンダーの苦しみとそこから生まれた希望とは。
目次
自分が変われば、周りも変わるかもしれないという希望
トランスジェンダーのことをカミングアウトはしていないけど、高校生くらいから、少しずつ自分らしさを出すようになっていきました。
自分が変われば、周りも変わってくれるかもしれない。その希望があったから、行動できたのかなと思います。
相手の言い分は相手のもので、自分の気持ちとは切り離すような。
お父さんは、自分とは好みもなにもかも正反対で、相性も最悪だったから…。
好きなものも、野球とか車とか、ザ・男性!って感じのもので。でも、自分はかわいいものや、お絵描きが好きだったから。価値観も全然合わなかったんです。
なかなか自分の気持ちを言葉に伝えることができなくて、すぐ泣く子供だったし、価値観が全然合わないから懐くこともなく…。それが余計に、お父さんをイライラさせていたのかもしれないです。
ただ、大切な友達にはやっとここ数年で言えるようになりました。
それでも、毎回心の中では「嫌われたらどうしよう」ってビクビクしていますけどね。友達に伝えるのでさえもそれくらい勇気がいるので、親ならなおさらね…。
自分が好きなものを知ってもらって、受け入れてもらって、さらに自分らしさを出せるようになって…。少しずつ、輪が広がっていきました。
無理矢理合わせた時期もあったけど、どこかで「なにか違うな」とは感じていて。先々のことを考えたときに、なにもかも嫌になってしまったんです。
だから、就職先を探すことを一旦止めたこともありましたね。
そこからは、髪型や身につける服も決まりがない美容師を目指したり、アパレルの販売員をしたり、自分らしく働ける場所を選んで、いろいろな経験を積んでいくようになりました。
自分らしく働くために選んだ、アーティストの仕事
それに、アーティストになってから、世界が本当に広がったんです。人との出会いが増えて、自分らしさをオープンにしながら話せる人も増えたし。
応援してくださる多くの方々に支えられて、お陰様で個展も開けるようになって、さらに自分のことを好きになってもらえる人が増えて…。本当にありがたいなと思います。
プリちゃんが撮影した「心に灯す光と色彩のパレット」の作品。(photo by @priusshota)
写真って、思い出としてずっと残っていくじゃないですか。数年経って写真を見返したときに、楽しかった記憶が蘇ってくるタイムマシンのような感じが好きで。
ガラケーのときから、写真を撮ることは身近にありました。
コンパクトデジタルカメラを買って、それでも物足りなくなって、一眼レフに…って。 徐々にレベルアップしていきましたね。
インスタグラムの中で、すごく有名なアーティストの方と繋がることができたんです。その方の作品を見たときに、「写真って、こんな芸術的に撮れるんだ」と感動して。
自分もなにかテーマを決めてやってみたいなと思って生まれたのが、「心に灯す光と色彩のパレット」です。
最近のプリちゃんのインスタグラム。ひとつのギャラリーのように美しいです。
写真をひとつのキャンバスに例えて、光と色彩という魔法のパレットでいろいろな光や色を描いて、一つの作品に仕上げていくような…。見てくださった方々が、少しでも気持ちが楽になるようなものになればいいなって。
元々印象派のモネも好きだったので、その影響もありますね。
作品を見てくれた方々に癒しを届けて、また前向きにそれぞれの使命の道を歩んでいけたらいいな、という気持ちを込めて、“心に灯す”をくっ付けたら、「あ、いいじゃんいいじゃん!」って思って(笑)
photo by @priusshota
苦しみや悲しみがあるからこそ、綺麗なものが生まれる
最初は、正直に書いたものの、なかなか公開できなかったんです。それでも、公開したらものすごく反響があって…。
「いろんな挫折をしても、それでも挑戦する姿に勇気付けられました」とか、「プリちゃんはプリちゃんらしく生きていれば、全然オッケーだよ!」とか。
もちろん、公開したからって、悩みがすべてなくなるわけじゃないんです。今でも悩みはある。見た目は男性だから、周りのちょっとした態度に苦しむこともあるし、両親にもちゃんと話はできていないし…。
それでも、自分の悩みをオープンにすることによって、誰かが勇気付けられるならとても嬉しい。自分が苦しんだり悲しんだりすることにも、どこかに意味があるのかもって、最近は少しずつ思えるようになりました。
少しでも、理解を示してくれる人を見つけられたらいいですよね。
今はSNSやYoutubeで、自身のセクシュアリティについてオープンにしながら発信されている方がとても増えてきているので、彼らや彼女らの投稿を見て「ひとりではない」と知ることができたら、ほんの少し心が和らぐのかなと思います。
海外の国々からするとまだまだだけど、それでも少しずつ理解を示してくださる方は増えつつあるので、まずはインターネットを通して同じ仲間を見つけるところから始めるといいのかなと私は思いますね。
今って、LGBTへの理解が少しずつ広まっていると思うから。社会的にも、いい流れが起きつつあるんですよね。
自分らしさを受け入れてもらえる世の中に、どんどんなっていると思うんです。だから、全然大丈夫だよ!って、伝えたいですね。
だけど、苦しみや悲しみがあるからこそ、綺麗なものが生まれるし、心癒される瞬間がある。いつまでも、苦しみや悲しみが続くことはないんです。
その過程や、克服できた喜びなどを、作品やブログといった様々な形で、これからもお届けしていきたいですね。
Photo by Mari Zaima
「この人は女性だから、こうだろう」
私たちは無意識に、”性”のイメージに他人を当てはめているのかもしれません。
その人の”性”ではなく、目の前の人がなにが好きなのか、なにが嫌いなのか。その人自身と接することが大切なのだと、今回のインタビューでプリちゃんに教えてもらいました。相手を決めつけることなく、”人”として話ができれば、誰かを無意識に傷つけることも少なくなるのかもしれません。
【ご案内】2019年11/21~11/26、京都で個展を開くプリちゃん。みなさま、ぜひ足を運んでみてくださいね。「光と色彩」が、心にぱっと光を灯してくれるかもしれません。
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2019年9月2日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。