「検査の数値を下げるために生きてるわけじゃない」透析生活30年の本音と今

2019.11.07公開 2020.05.07更新

1回4,5時間かかると言われる透析。それを週3回。しかも数十年…。考えただけで気が滅入ってしまう人もいるかもしれません。

 

400人に1人と言われる透析患者。その数は年々増加傾向にあります。ちなみに「透析」とは…

 

腎機能が正常の10-15%以下になると、透析や移植などの腎代替療法(腎臓の機能を代行する治療)が必要です。日本では、「どのような状態になったら透析を始めたほうがいいか」を判定するための「透析導入の基準」(厚生労働省)があります。症状・所見と腎機能・日常生活レベルとの組み合わせで導入時期を考えます。腎機能が正常の15%以上あっても、尿毒症の症状や高カリウム血症、心不全などがあり、適切な治療によって改善しない場合は透析が必要と判断します。(東京女子医科大学病院 腎臓病総合医療センターHPより)

 

日常生活の多くを占める透析を長年続けるには精神面での健康はとても重要。その一方で、透析患者に対する社会からの厳しい目もあるとか。

 

そこで今回は、慢性糸球体腎炎で30年以上の透析生活を続ける、一般社団法人ペイシェントフッドおよび一般社団法人ピーペック代表の宿野部武志さんにお話を伺いました。

 

〈インタビュアー 近藤(Reme運営)〉

 

テレビで見る透析患者の“慎ましさ”

近藤
一時期、テレビで透析がよく取り上げられていましたが、透析患者さんって思っていたより多いんですね。
宿野部さん
ご自身が透析を受けていなくても、親戚が受けているという方も意外と多いと思います。

 

一方で、生活習慣が乱れて自堕落な生活をした人が透析を受けている…みたいな報道が多い印象があって、透析患者に対する社会の風当たりの強さも感じます。

 

原疾患、透析に至る経緯や背景は本当に人それぞれです。

近藤
「透析患者」と一括りにして思考停止してしまうと怖いですね。
宿野部さん
テレビで透析が紹介される時の大半は、透析の大変さと医療費の高さ。

 

以前、ワイドショーから出演のオファーがあったのですが、「透析患者にあった食事を妻が作り、それを僕が慎ましく食べる画を撮りたい」と言われたので断ったことがあります。笑

近藤
そういうお願いもあるんですね…。
宿野部さん
透析患者は慎ましくご飯を食べているって思われてるのかもしれませんが、全くそんなことないんですよ。

 

今日だって、妻から「韓国料理、食べたい」って言われたので大久保でチャプチェを食べてから来ましたし。

近藤
すごいリアル。笑
宿野部さん
透析に関して、まだまだ「知らない」という方が多いと思います。

 

「透析患者」と一括りでとらえず、30万人の透析患者さんそれぞれ違った背景があるんだということを伝え、透析への偏見や誤解を減らす活動をしていきたいと思っています。

 

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近藤
社会の目を気にしすぎて、それこそ慎ましく生きるべきと思う人も少なくなさそうです。
宿野部さん
でも、みんな何かしらで悩んでるじゃないですか。社会や周囲にバリアーがあるのはある意味当たり前。

 

「◯◯があっても大丈夫だよ」って言うのが社会だと思っています。

 

ピーペック(PPeCC)は、「病気をもつひとに力を」という意味。それぞれの力を発揮できて「病気があっても大丈夫」と言える社会を実現をつくることが私達のミッションです。

近藤
ありがとうございます。少し話が逸れるのですが、奥様もご一緒に働かれていますよね。
宿野部さん
そうですね。彼女がいなければ絶対に成り立っていないです。

 

ちょっと照れくさい話ですが、妻は「透析患者のあなたを好きになったわけじゃない。好きになった人が、たまたま透析をしていただけ」と言ってくれたのは嬉しかったですね。

近藤
素敵すぎる…

 

「患者がつくった透析のほんシリーズ」

近藤
先日出された、透析ライフガイドブック「患者がつくった透析のほんシリーズ」についても教えてください。

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じんラボHPより

宿野部さん
この本は「もうすぐ透析です」「そろそろ透析です」「透析導入です」などと言われた方の不安に向き合い寄り添うために作りました。

 

医学的なところは医師に監修してもらいましたが、本の制作委員はみんな透析患者。経験したからこそわかることがこの本には詰まっています。

 

ピアサポート活動もやっていますが、全国各地で開催することは難しい。なので、この本は「活字のピアサポート」だと思っています。

近藤
患者さんの実体験の話はとても貴重ですよね。
宿野部さん
透析をこれから受ける人の中には、「もう旅行に行けない」「仕事も辞めなきゃ」と生活レベルが下がることを心配する人が少なくありません。

 

けれど、この本を一緒に作った透析患者全員が「透析になっても大丈夫だよ」と口にするんですね。

 

もちろん諦めなきゃいけないことはあるけど、全部諦めることはない。「大丈夫だよ」というメッセージを伝えられればと思っています。

近藤
宿野部さんは、透析患者さんの就労支援もされているんですよね?
宿野部さん
そうですね。先日も「じんラボジョブカフェ」というのを開催しました。

 

働いて生活の糧を得るということも大切ですし、働くことが生きる上でのモチベーションにも繋がると思っています。

 

透析は制度的には恵まれていて自己負担はかなり少ない。そのおかげもあり生活ができているので、社会参加をする患者の生き方をもっと見せていく必要があると思っています。

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近藤雄太郎

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  • 本記事は2019年11月7日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。