HSPで職場環境に馴染めない…人間関係に疲れる…職場のライフハックを臨床心理士が解説

2021.06.05公開

転職するたびに「職場環境に馴染めない」と感じたり、人間関係に疲れてしまって辞めてしまう…といったご経験はありませんか?

 

HSP(highly sensitive person)と呼ばれる感受性が強く、繊細な気質や傾向を持つ人の中には、働くことに対する精神的な負担を大きいとお感じになれる人が少なくありません。

 

そこで今回のコラムでは、HSPと呼ばれる気質や傾向を持つ人の

職場環境に馴染めない…

 

人間関係が疲れる…

といったお悩みをテーマに臨床心理士と一緒に考えていきたいと思います。

 

※HSPやHSSは“診断名”ではなく、状態像の呼称(概念)です。

 

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HSPで職場環境に馴染めない…人間関係に疲れる

HSPの人の

「相手の感情を察しやすい」

「その場の雰囲気を感じる」

といった感情や雰囲気を“感じ取る力”は、人間関係において顕著な形で出現します。

 

相手の気持ちに配慮して細やかに対応したり、共感性が強いために相手の思いに深く共感しながら話を聞くなどの良い面がある一方で、

・繊細ゆえに気を遣い過ぎて疲れる

・周りの反応を気にするあまり、自分の意見が言えなくなってしまう

など、HSP特有の悩みも出てきます。

 

職場での人間関係はプライベートなものとは違い、立場や評価なども絡んでくるため、上司には気を遣わなければいけないですし、職場では緊張感を持って過ごされている方も多いのではないでしょうか。

 

ここでは、職場での人間関係のポイントについてご紹介します。

 

非HSPの人との「文化の違い」を理解する

あまり物事について深く考えずに行動できていたり、HSPの人ほど深く相手の感情に共感していない人が世の中の大半を占めています。

 

マイノリティーの存在であるHSPの人たちが生きていくためには、マジョリティーの非HSPの人たちと共存していかなくてはいけません。

 

まずは、「相手の文化を知る」から始めることが大切です。

 

HSPの人と、非HSPの人との感じ方の違いを知り、自分に負担のない接し方を見つけることで、人間関係が楽で穏やかなものに変わります。

 

HSPの人が気を付けなければいけないのは、「非HSPの人の“分からない”という感覚が分からない」ことへの理解です。

 

「相手も自分と同じように感じているはず」と思って非HSPの人に接すると、思わぬすれ違いが生じてしまいます。

 

実際に非HSPの人に「何で、そんなことを気にするの?」と言われ、傷ついた経験をお持ちの方もいるかもしれません。

 

そもそもHSPの人と、非HSPの人とではある意味「文化」が違うとも言えるのではないでしょうか。

 

非HSPの人と接する際には、

「自分が当たり前に持つ感覚が、この人にはないのではないか?」

といった考えを頭の中に入れておくだけでも、他者の見え方が大きく変わってきます。

 

「仮面」をかぶらないといけない辛さ

人間関係のベースとなっているのは、「表に出している自分」に合う人が集まってくるシンプルなものです。

 

言い換えると、「本当の自分」を抑えて「仮面」をかぶっていると、その「仮面」に合う人が集まってきてしまいます。

 

本当は、マイペースで普段はとてものんびりしている人が、職場では緊張していて無理をしてテキパキと仕事をしていて、それを上司から評価されているとどうでしょうか。

 

評価が高くなると、よりテキパキと仕事をこなさなければいけず、現実の自分と評価されている自分で葛藤が生じてきます。

 

また、周りもテキパキしていて、仕事ができる人のように思うかもしれません。

 

本当の自分が出せずに「仮面」をかぶっていると、その「仮面」に合う人が集まってきてしまいます。

 
「仮面」に合う人が集まってきてしまうことを防ぐには、素の自分を出すことです。

 

素の自分を出せば出すほど、自分に合う人が集まって気持ちが楽になります。

 

今まで、場の空気を読んで相手の気持ちを優先にしてきた人が、自分の意見を言ったり、嬉しい時も嫌な時もニコニコしていたのに素直な感情を顔に出してみるとどうなるでしょうか。

 

初めは周りも少し驚くかもしれません。

 

しかし、その一方で、

「自分の意見を言える人は素敵」

「裏表なく、素直な人だな」

と、自然体の自分を良く思ってくれる人だけが周りに集まってくるとも考えられます。

 

こうして素の自分を出すことで、「人間関係の入れ替わり」が起こり始めるきっかけになります。

 

人間関係の入れ替わりが起こることで、「仮面」をかぶっていた自分のことが好きだった、人たちが自然と去っていき、素の自分を好きな人だけが残ります。

 

素の自分を出すことは、勇気がいることかもしれません。

 

しかし、相手に気遣い、自分の本当の気持ちを抑えて合わせ続けることは、とてもストレスが溜まります。

 

HSPの人は、相手に巻き込まれやすいので、自分自身を守る方法も知っておかなければいけません。

 

また、HSPの人は相手に対して「嫌い」と思ってはいけないと考えていたり、怒ることが苦手な人も多くいらっしゃいます。

 

「嫌い」や「苦手」を感じることは生きていく上で、自分を守るための大切なサインになります。

 

自分の中の「嫌い」に気づけないでいると、相手に依存されたり過度に干渉、要求されても断れないなど様々な問題が生じてきます。

 

ですので自分の中で「この人は嫌な感じがする」と感じられた時は、少し相手と距離を置くことも必要です。

 

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【参考・引用文献リスト】

〇岡田尊司(2017):過敏で傷つきやすい人たち HSPの真実と克服への道 幻冬舎新書
〇武田友紀(2018):「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる  「繊細さん」の本 飛鳥新社
〇高田明和(2017):脳科学医が教える 他人に敏感すぎる人がラクに生きる方法 幻冬舎

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佐藤珠理

臨床心理士/公認心理師

心理系大学院修士課程を修了後、臨床心理士資格を取得。NPO法人にて不登校の子どもたちをサポートする事業責任者として勤務。また、同法人にてひきこもり青年の就労支援事業にも携わる。その後はスクールカウンセラーとして、小・中・高校、計10校の学校を担当する。2019年、公認心理師資格を取得。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2021年6月5日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。