「やる気のない自分」の研究で心理学と出会い、心理学を事業にするまで

2017.02.04公開 2020.05.16更新

「心理学をもっと身近に」

現在、「心理学をもっと身近に」をモットーに、心理学の教育や研究の支援事業を中心におこなっています。

 

大学院に入学したい方や臨床心理士試験や心理学検定、臨床発達心理士など、さまざまな資格試験や受験のための予備校的機能もあります。

 

ただ、最近の活動の中心は、大学院生に対する研究のアドバイスです。

 

研究のアドバイスとして、具体的には研究の方向性やデータのまとめ方、分析の仕方、統計的な側面、論文をまとめていく作業、学会発表でどういうポスターを作るべきか、どういう抄録を作るか、などなど。

 

この「個別指導講座」の需要が非常に高くて、受講を希望する方にはお待ちいただいている状態です。

 

私たちのように外部の立場から学習支援や研究に対してアドバイスするのは、かなり珍しいスタイルだと言えます。

 

ただ、これも心理学が社会の中に根づいていく中での、一つの現象だと言えるのではないでしょうか。

 

例えば、指導教員の先生からのアドバイスが「よく分からない」と言う人や、ゼミ発表の前に「内容を1回聞いて欲しい」という人も多いです。

 

もちろん、大学や各研究室ごとの指導方針がありますから、それに関して「それは違う」と言うことは全くありません。

 

各大学それぞれの方針に従って、私の立場から言えるアドバイスや「こういった視点もあるんだよ」ということをお伝えしています。

 

昔は、大学が24時間開いていて、研究室に行くと誰か先輩がいたり、リーダーみたいな先輩がいて、

 

「先生から、こういうこと言われちゃったんだけど、どういうことなんですか?」

「今度、学会で発表したいと思うんですけど…」

 

などと何でも聞ける環境にありました。

 

ところが最近は、大学にずっとはいられないので、分からないことや不安なことがあっても、意外と相談できていないという人が増えています。

 

ですので、「相談できる先輩」といったイメージで活用してもらっていますね。

 

先輩と違うところがあるとすれば、受講者さん自身が、言いたいことが言えやすかったたり、気を遣わなくても良いという点にあると考えています。

 

024

 

2番目という位置づけ

弊社の名前は「Secondary, LLC(セカンダリー)」。「2番目」ということを最初から掲げています。

 

心理学に限らず、学問がもっと社会に根づいたり、学問をすること自体がおしゃれな存在になれば良いなと思います。

 

「教養があると、かっこいい」という意識が根付いていくことがすごく大きな目標としてあります。

 

高等教育としては、大学と大学院が一番上になりますよね。そこの2番目のような、セカンドオピニオン的にお役に立てていければ良いな考えています。

 

勉強自体のサポートだけではなく、進路相談的な活動もしています。研究室を移る際や、研究のテーマが変わってきたというときに、「アドバイスが欲しい」と弊社に来られる方も多いです。

 

そんなときには、ほかの大学の研究の傾向や論文の方向性、学界のトレンドなどをお伝えして、少しでも支えになれれば良いなと思って取り組んでいます。

 

自分なりに、ちゃんとしたビジョンがあって、大学で心理学を勉強しているのに、勉強したい科目を教えてもらえない…という人が実は多いなと感じていたので、外部、民間でできる教育があってもいいんじゃないかな、というのがサービスを始めたきっかけなんです。

 

心理学って高校まではない学問じゃないですか。大学の学部スタートの学問なので、自分で方向性を決められるようになって、自分で選んで勉強を始めるというのが多いんですよね。

 

だから、「こういう科目を勉強したい」「もっと深い知識を身に付けたい」といった自主性の部分は重んじてあげたい。

 

学生たちの熱い想いをきちんとすくい上げてあげられればなと思っているのです。

 

現在の仕事で意識していることは、アドバイスするときになるべく自分の色を出し過ぎないということ。

 

「僕がどう思うか、どうしたいか」ではなくて、「相手が何を望んでいるか、どう仕上げたいのか」というゴールを理解して、ゴールに近づけることは常に心掛けていることでもあり、難しい部分でもあります。

 

そういう意味では、失敗させてあげる余裕みたいなものも必要になります。

 

心苦しいですが失敗で学ぶこともありますし、それも一つの方法だと思うんです。

 

相手の求める方向に向かわせてあげるのが、僕たちの役割。

 

一概に正しい方法があるわけでもないですし、僕が「絶対、こっちが正解」だと思っても、アドバイザーとして無理強いはできないですし、しないように心がけています。

 

大学では、研究者の評価が厳しくなってきていて、これまで以上に競争社会になってきています。

 

以前は、大学自体は、研究と教育をやっていれば良いようなところがありましたが、今は、入試をはじめ、高校訪問など営業的な方面も求められているんです。

 

そうなると若手の先生は、いろんな雑務に追われて研究ができなくなってしまう悪循環に陥っています。その上、ハードな労働が精神面にダメージをきたしてしまうことも非常に多いんですよ。

 

それでも研究を進めないといけないので、そういった教員の方にも弊社のサービスは重宝されています。

 

僕たちが研究をお手伝いすることによって、少しでもいい方向に行けばいいですが、大学内部の状況を聞いてしまったりすると心苦しいときもあります。

 

もちろん守秘義務ですが、すごくダークな部分をたくさん拾っちゃうと個人的には少し苦しくなりますね。

 

だから、自分自身のメンタルヘルスにも気を遣っています。たまに、臨床心理士の先生に来てもらっています。

 

心理学はオカルトではないから

心理学に対する社会の認識として、すごく軽い言い方をすれば、心を読む学問みたいな読心術だと思われていたり、テレビなどの影響もあり、まだまだ学問として正しくは認識されていない印象があります。

 

心理学という学問は、オカルトのような見方を一時期されたというのがあって、日本の学問の中でも特異な形を取ってしまっていると思います。

 

僕自身、調査法を専門としていますが、心理学は科学的であろうとする学問なので、ちゃんと根拠のある学問であることをもっとアピールすることが必要だと感じています。

 

臨床心理士という立場が、一般の人と心理学をつなぐ身近な存在だと思いますが、臨床心理士に相談するのも今はまだ気軽ではありませんよね。

 

相談に行く側がちょっと隠れていくような雰囲気は拭えません。

 

だからこそ、心理学が魅力のある楽しい学問だということを知ってもらいたいです。

 

人の心は実態がないところがありますが、そういう一面を楽しいなと思ってくれる人が増えていってほしいなとは思っています。

 

心理学が大衆化するにあたって、いろいろな意見が出てくるとは思います。それは何の分野でもそうですよね。

 

音楽でも何でも、多くの人が聴いたことのない分野の音楽が大衆化するとき、受け手側も少し引き気味になったり、「それは本当の音楽じゃない」みたいな意見もあるかもしれません。

 

でも、エッセンスとなる「要」の部分をしっかり残しておくことで、心理学だってもっと社会に浸透していくことが可能になると思うんです。

 

そしてこれから、公認心理師という国家資格がスタートします。

 

国家資格に関しては、それぞれの立場での意見があるかと思いますが、国家資格という制度としてしっかりとした基盤を持つことによって、医療現場をメインとした他職種との連携がしやすくなるのではないでしょうか。

 

僕自身、心理職の資格でキャリアを形成してきたわけではないのですが、国家資格という柱によってケアがより多くの人に行き届いたり、ケアをする側が十分に力を発揮できるような場が得られることにつながっていけばいいと思っています。

 

心理学は、人の気持ちを読んで自分の思うように操縦するとかそういうことではなく、他者の視点を増やすことによって、人間関係を豊かしていくものですから。

 

017

シェア
ツイート
ブックマーク

近藤雄太郎

Reme運営

インタビューのご希望の方はこちら

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2017年2月4日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。