精神障害者ステップアップ雇用とは?対象・支援内容・費用・申請方法・事例を専門家が解説

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精神障害者ステップアップ雇用とは?

「精神疾患を抱えているけれど、症状が落ち着き、日常生活は大体できるようになった。だからこそ、次のステップとして仕事がしたい」とお思いの方もいることでしょう。

 

ですが、「勤める企業が疾患について理解があるだろうか」、「突然の長時間勤務は無理なので、勤務時間の配慮はしてくれるだろうか」など働くうえでの心配はつきませんよね。

 

そんな場合は、「精神障害者ステップアップ雇用」のサービスを利用すると良いかもしれません。そこで今回は、「精神障害者ステップアップ雇用」についてお話し致します。

 

 

精神障害者ステップアップ雇用の対象者

精神疾患を抱えているが、仕事がしたい方。および、初めから長時間の勤務は無理だが、短時間勤務から段階的にステップアップしていきたい方。

 

 

精神障害者ステップアップ雇用の支援内容

精神障害者ステップアップ雇用は、週10時間以上の短時間勤務から始めることができ、段階的に勤務時間を延ばし、最終的には常勤勤務を目指すというサービスです。

 

このサービスを利用する障害者の方は、3ヶ月以上~12ヶ月以内の間で勤務を行うことができるという期間が定められています。

 

障害者トライアル雇用のサービスと似た制度ですが、違う点として、障害者トライアル雇用の場合、基本的に、週20時間以上の勤務から開始するのに対して、ステップアップ雇用は短時間の週10時間以上から状態や能力に合わせて、ステップアップさせていくということが特徴です。

 

採用形態は、試雇採用となり、事業主が障害者1人を雇うと、月に25,000円の報奨金が支払われるしくみとなっています。

 

 

精神障害者ステップアップ雇用の費用

精神障害者ステップアップ雇用は、企業主と利用者が雇用契約を結ぶため、企業から給料が支払われることとなります。

 

その費用(給料)は、各企業の採用条件などにより異なります。

 

 

精神障害者ステップアップ雇用の申請方法、利用方法

精神障害者ステップアップ雇用サービスの管轄は、ハローワークになります。このサービスを利用したい方は、ハローワークの窓口に相談してみましょう。

 

そこで、精神障害者ステップアップ雇用の求人を募集している企業を見つけ、ハローワークを介して応募することになります。

 

企業の採用担当者と面接をし、採用が決まったら、各企業の条件のもと就業することとなります。

 

 

精神障害者ステップアップ雇用の該当する事例

【Aさん20代女性】摂食障害

Aさんは大学卒業後、就職活動に失敗し、アルバイト生活を送っていましたが、母親の厳しいしつけが原因で、食事を食べてもすぐに吐いてしまうという症状を繰り返していました。

 

しまいには、155センチの身長に対して、体重が25キロまで落ちてしまったため、精神科病院を受診。摂食障害と診断されました。

 

自宅療養だと、命の危険性や食事のコントロールが難しく、母親と距離を取ることも必要なため、入院治療を勧められ、Aさんも同意し、入院治療を開始。

 

それと同時に、もともとは、Aさんを心配していた母親も、摂食障害の家族会に参加するようになりました。

 

治療のおかげで、Aさんは回復し、母親も理解を示すようになったため、退院することになりましたが、ある程度母親との距離を保つ必要があるということで、グループホームに入所しました。

 

同時に、仕事をしたいと思うAさんでしたが、退院後も精神的な負担がかかることは避けたいため、長時間勤務は難しいと思っていました。

 

そこで、主治医は精神障害者ステップアップ雇用を提案。ハローワークに行き、それらを募集している企業を見つけ、応募したAさんは簡単な事務作業をする会社に採用されました。

 

Aさんは、その企業で10時間程度働き、グループホームのスタッフなどにもアドバイスをもらいながら、少しずつ自立を目指しています。

 

 

【Bさん40代男性】アスペルガー障害とうつ病

Bさんは、大学卒業後、大手広告代理店の営業として、ある企業に就職しましたが、顧客などとのコミュニケーショントラブルが絶えず、わずか2週間で退職。

 

その後もさまざまな仕事を転々としましたが、場が読めなかったり、他人に失礼なことをいうなどして、退職を余儀なくされることが度々ありました。

 

自分に自信を失ったBさんは、ある日から食事も入らなくなり、不安感や焦りにかられ、何もやる気がなくなり、ふさぎ込む日が続きました。

 

心配した母親が精神科受診を勧め、Bさんとともに受診。うつ病だと診断されました。

 

Bさんのあまりにも衰弱しきった様子に、自宅療養よりも入院治療が良いだろうと主治医は入院を勧め、Bさんも同意したため入院生活を送ることになりました。

 

薬物療法などで、うつ症状はみるみる回復していったBさんですが、退院に向けての院内ディケア内や同室の患者とのコミュニケーショントラブルが度々起こっていました。

 

それを見ていた主治医はアスペルガー障害がベースにあるのではないかと判断。退院後の仕事の選び方や働き方も考える必要があると感じていました。

 

Bさんが退院を迎える目前、主治医はBさんと母親にアスペルガー障害の可能性もあることを告げると、Bさんと母親は納得するところがあったようで、今後どのようにしていけばよいかを相談するようになりました。

 

退院後は、何かしらの職業で働きたいことを告げるBさんには、疾患の特性上、接客業ではなく集中力などが活かせる仕事が良い事と、少しずつ環境に慣れていくことが必要と、主治医が判断。

 

精神障害者ステップアップ雇用サービスの利用をBさんに勧め、Bさんは退院後にハローワークに訪れ、倉庫の仕分け作業の求人を見つけました。

 

また、ハローワークの職員からグループ単位で雇用者を雇い入れている企業の方が、支援担当者も付くので働きやすいのではないかと勧められ、条件の合った企業を紹介され、入社。

 

自分でもくもく働くことができる仕分けの作業は、Bさんにとってストレスや対人間のコミュニケーショントラブルが起きにくく、彼も安心して働くことができています。

 

また、Bさんは仕事内容が分からない時に、他人に尋ねるというタイミングが、なかなかつかめないこともあります。

 

そのため、支援担当者に指導を受けながら、自分の働きやすいスタイルにするために、どのようにすればいいのかを徐々に身に着けて行っている段階です。

 

 

精神障害者ステップアップ雇用の注意事項

精神障害者ステップアップ雇用は、短時間からでも働くことができるという有難い制度と言えるでしょう。

 

企業側も障害者を雇用すれば報奨金が支払われるため、力を入れてくれることになります。

 

また、企業側が障害者を2人以上~5人以内のグループで受け入れ、彼らに支援担当者を付けた上で援助を行う場合は、グループ雇用奨励加算金が加算されます。

 

そのため、より手厚いサポートを望む利用者は、グループで雇用を募集している企業を見つけることも良いかもしれません。

 

 

Misudu Kukita【執筆者】

久木田みすづ 精神保健福祉士 社会福祉士

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