ストレスと病気の関係、ストレスコーピングの3つの方法を臨床心理士が解説

2017.02.22公開 2017.02.24更新
 
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私たちは普段の生活の中で、当たり前のように「ストレス」という言葉を使っています。

 

日々の業務などでストレスがかかり、疲れが取れにくかったり、場合によっては、心身に不調をきたすことも少なくありません。

 

そこで今回は、ストレスと病気の関係性と、ストレスへの対処法として、3つのストレスコーピングをご紹介します。

 

 

そもそもストレスとは?

ストレスという言葉は元々、心理学用語でも医療用語でもなく、工業の世界で使われていました。

 

工業界では、ある物体に力をかけて歪めるときに「ストレスをかける」という使い方をしていました。

 

その言葉をハンス・セリエという学者が、医学的にも使いだしたのが始まりと言われています。

 

セリエは、人の心に何らかの力をかけるもの(=ストレッサー)にさらされたときに感じるものとして、ストレスを医学的に定義しました。

 

例えば、雨が降っていて、「服が濡れるかも。なんか嫌だな」と思ったとしたら、雨というストレッサーにさらされて「嫌だなー」というストレスを感じていることになります。

 

セリエによると、長い間ストレッサーにさらされ続けると、色々な症状が出てくると考えました。

 

ラザルスという学者もストレスに関して研究を行っています。

 

ラザルスによれば、ある特定のストレッサーは、誰にでもストレッサーになるわけではないということを言いました。

 

先ほどの例だと、「雨」が好きな人には「雨」はストレッサーにならないのです。

 

また、解決可能なものであれば、ストレッサーにならないと考えました。

 

「服が濡れる」ということがストレスであるのならば、傘をさして長靴をはけばストレスは感じないのです。

 

このように、ストレッサーにどのように対応して解決するかという行動を「ストレスコーピング」と言います。

 

ストレスコーピングに関しては後ほど詳しく説明します。

 

 

結婚や成功もストレスに

ここで注意したいことは、ストレスを感じるのは、ネガティブな出来事だけではないということです。

 

社会再適応評価尺度という、人生で起こるイベントとストレスの関連を測る表があります。

 

それによれば、最も生活が大きく変わる(これがのちにストレスの評価につながる)イベントは「配偶者の死」です。それに「離婚」「別居」「刑務所入り」などが続きます。

 

ここまではネガティブなイベントが多いのですが、そのいくつか後に「結婚」という項目が張ります。それ以外にも「妊娠」「成功」なども入ります。

 

つまり、人間がストレスを感じる状況というのは必ずしもネガティブなものだけではないということです。

 

おめでたいことだから、体調を崩さないということはないというのは重要なポイントです。

 

 

ストレスと病気の関係

ストレスと精神疾患

私がまだ大学院で勉強をしているときに、私の先生であった医師がストレスと精神疾患に関して言及しました。

 

それは「どんな人であれ、長期間深刻なストレスにさらされ続ければ、誰だって精神疾患になるだろう」という言葉でした。

 

当時は半信半疑で聞いていましたが、卒業して、現場でカウンセリング等の臨床を行うにつれ、それは確信に変わっています。

 

つまり、「ストレスと精神疾患の間には関係がある」というのが、現在の精神科医療の主だった見解なのです。

 

2016年のある選挙の時、出馬していたある候補者が、「私の父は神経症で、そんな心の弱い父親を尊敬することが出来なかったが、後に立派な事業を行っていることを知ってとても誇らしかった」という演説をしていました。

 

これはよくある誤解なのですが、精神疾患であったり、依存症であったり、心身症というのは「心の弱い人」がかかるものではないということです。

 

それらは、心の弱さに関係なく誰だってなりうるものなのです。

 

例えば、人生の半分以上を一緒に過ごしたパートナーが病気で亡くなった時、誰であれ抑うつ反応が出ると思います。

 

それが2か月以上続いたなら、うつ病と診断されることもあります。

 

 

ストレスと心身症

ストレスと関係があるのは、何も精神疾患だけではありません。

 

症状が精神面に出れば、精神疾患と診断される可能性は高いですが、症状が身体に出ることだってあるのです。

 

身体面に症状がでて、その症状がストレスに起因していると考えられる場合は「心身症」ということになります。

 

ただ、心身症というのは病名ではないので注意してください。「ストレスに起因して身体面に症状がでた」という状態を指して心身症と言っています。

 

例えば、極度の緊張状態で、お腹の調子が悪くなる「過敏性大腸炎」は心身症だと言えます。

 

ストレスを感じた時に、どこに症状が出るかというのは人によって違います。精神面に症状が出る方もいれば、大腸に影響が出る方もいれば、喉や目に症状が出る方もいます。

 

精神面に症状が出るから「心が弱い」ということも一切ありません。

 

「彼は心が弱いから前立腺がんになった」なんて聞いたことないですよね。それと同じように「彼は心が弱いから、うつ病になった」ということもあり得ないのです。

 

 

精神科と心療内科

最近は、「心療内科」という看板を掲げたクリニックが多くなってきました。

 

確かに何だが「精神科」というよりも「心療内科」と言ったほうがあたりが柔らかいような気がしますね。

 

今ではほぼ同じ意味でつかわれている「精神科」と「心療内科」ですが、医療の中では使い分けられています。

 

「精神科」は精神科医局であり、「心療内科」は内科医局です。精神科はうつ病や、統合失調症と言った精神疾患を扱うのに対し、「心療内科」では心身症を扱います。

 

ただ、先ほども述べたように、今ではほとんど同じ意味で使われていますので、そこまで神経質になる必要もないでしょう。

 

 

3つのストレスコーピング

冒頭で、ストレッサーとストレスについてのお話をしました。ストレッサーに対してどのような対処をするのかということを「ストレスコーピング」と言います。

 

最近、ストレスを感じた事がありましたか?その時、皆さんは、どのような行動をとったのか思い出しながら読み進めてみてください。

 

ストレスコーピングには3つの種類があります。

 

ストレッサー自体をなくす

1つ目は、ストレッサー自体をなくしてしまおうという対処法です。職場の人間関係が苦痛ならば異動を申し出たり、転職したりという考え方です。

 

ストレッサーへの考え方を変える

二つ目はストレッサーへの考え方を変えるという対処法です。

 

職場の上司が苦痛だったとしたら、その職場の上司の尊敬できる部分を見つけて、嫌なことを言われても助言だと受け止めたりしようとする考え方です。

 

感じたストレスをどうにかする

三つ目は、感じたストレスをどうにかしようとする対処法です。嫌な上司に小言を言われてイライラするから、気分が良くなるまでお酒を飲むという考え方です。

 

ストレスコーピングで大切なのは、どれか1種類に頼るのではなく、複数のコーピングを使いながら日々を生活していくのが良いということです。

 

ストレスコーピングの種類が少ないと対処できる状況が限られてしまい、精神や身体に症状が出てしまう可能性が高まります。

 

 

ストレスコーピングの種類を増やすには?

では、どうやったら、ストレスコーピングの種類は増えるのでしょうか?

 

私がお勧めするのは、プライベートで色々なことに挑戦してみることです。

 

自分の話になってしまいますが、私は初めて聞いたものがあれば、取り敢えずやってみるようにしています。

 

この前、友人と話していたら「最近ボルタリングにはまっている」という話を聞きました。恥ずかしながら、ボルタリングというものを初めて聞いたのですが、早速、今度初心者パックで試してみようと思います。

 

 

世界を広げることがストレスの対処に

見聞が広がると、今までと違ったものの見方が出来るようにもなりますし、趣味も増えることでしょう。

 

違ったモノの見方が出来れば、今までは嫌でしかなかったものが、肯定的に捉えられるようになることもあるでしょう。

 

趣味が増えれば、ストレスが溜まってイライラした時に、発散する方法が増えることでしょう。

 

新しい世界が広がれば、それだけストレスコーピングも広がります。

 

社会人は職場と家の往復になりがちです。

 

ストレスと上手く付き合い、病気を予防する上でも、休日は思い切って初めてのことをしてみたり、遠出してみたりするのが良いかもしれませんね。

 

 

働き方改革特集記事一覧

【第1回】ストレスチェック制度で企業はどう変わる?

【第2回】【事例】働き盛りのうつを防ぐ…社員をうつにしないためには?

【第3回】ストレスと病気の関係、ストレスコーピングの3つの方法

【第4回】パワハラの事例と対策のポイントとは?

【第5回】過重労働の定義やすぐ対策すべきこととは?

【第6回】うつ病の復職のタイミングや復職後の注意点

【第7回】安全配慮義務とメンタルヘルス「4つのケア」の関係とは?

【第8回】EAPの役割とは?休職者を減らす事例を挙げて臨床心理士が解説

【第9回】メンタルヘルスのセルフケアとは?役立つ5つの習慣を解説

【第10回】メンタルヘルスラインケアに必要な管理職の能力とは?

 

 

icon_4【執筆】

林田 一

臨床心理士

 

 

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