HSPで仕事が遅い、仕事で疲れやすい、仕事が怖い…HSP必見の仕事術を臨床心理士が解説

2021.06.06公開

HSPかも…と自覚がある人の中には「仕事が遅い」「仕事で疲れやすい」と感じたり、さらには「仕事が怖い」と思う人も少なくありません。

 

HSP(highly sensitive person)と呼ばれる感受性が強く、繊細な気質や傾向を持つ人の中には、働くことに対する精神的な負担を大きいとお感じになれる人が少なくありません。

 

そこで今回のコラムでは、HSPと呼ばれる気質や傾向を持つ人が仕事で疲れやすいと感じる理由や、仕事で必要以上のストレスを背負ってしまわないためのポイントについて臨床心理士と一緒に考えていきたいと思います。

 

※HSPやHSSは“診断名”ではなく、状態像の呼称(概念)です。

 

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HSPで「頭が疲れる」の正体

HSPの方で、職場で緊張していることが多く、休日はゆっくり過ごす…という方も多いのではないでしょうか。

 

肩が凝っていたり、多くのことを考え過ぎて胃の調子が悪かったりと身体の不調を訴える方も多くいます。

 

実際、HSPの人は身体よりも頭が疲れる方が多く、実は体の不調の原因は「考え疲れ」や「緊張疲れ」から来るものだと言われています。(武田、2018)

 

さらに、「考え疲れ」や「緊張疲れ」は不安から来るものなので、「安心感」を増やすことで「考え疲れ」「緊張疲れ」を減らすことができます。

 

HSPの人は仕事が遅い?

HSPの人の中には「一つひとつの仕事に時間がかかってしまう」と悩んでいる方も多くおられるかと思います。

 

先ほども述べたように、HSPの人は様々なことを感じ取り、深く考えながら仕事をし、一つ一つの仕事に集中して丁寧に仕上げるのが得意です。

 

メールを1通取引先に送るだけでも、様々なことを想定しながら作成しています。

 

そのため、とても時間がかかってしまいます。

 

HSPで仕事が遅いと言われる理由

HSPの人の「仕事が遅い」理由は2つあると言われています。(武田、2018)

 

①周りの雰囲気を感じ取り、自分まで急かしている

職場の同僚がバタバタしていたり、全体的に忙しい雰囲気になっているとHSPの人は敏感に感じ取り、「自分も早くしなければいけない」と思ってしまいがちです。

 

周りの様子に振り回されず、自分のやることリストを確認しながら、自分のペースで取り組んでいきましょう。

 

②常に頭の中でシミュレーションしている

HSPの人は、

「あの情報も必要かもしれない」

「もっとこうした方が良いかもしれない」

という想定を常に頭の中でシミュレーションしていたり、

「これをやっておかないと後で困る」

といった未来に対するリスクまで 数多くのことを考えながら作業をしています。

 

常に先回りして起こりうるリスクに対処しようとするため、リスクに気がつかず目の前の仕事をこなしていく人と比べるとどうしても時間がかかってしまいます。

 

結果的にHSPの人の仕事の仕方は、一概に「遅い」とは言い切れません。

 

総合的に見るとミスが少なかったり、トラブルを未然に防ぐという点では同僚たちと同じか時には早いことさえあるのです。

 

そして何より、HSPの人の丁寧な仕事ぶりは、周りの人の信頼感を得ることにも繋がるでしょう。

 

一方で、HSPの人は色々な仕事が同時に重なると焦ってしまったり、一度に複数の仕事を頼まれるとパニックになってしまいがち。

 

会社や組織に属している限り、複数の仕事を抱えることは避けられないことですので、ここでは仕事を乗り切るための習慣についてご紹介したいと思います。

 

一つひとつ確実に取り組む

仕事が同時に重なったり、一度に複数の仕事を頼まれた時は、「一つ一つやっていく」ことを心がけます。

 

バランスよく全てのことを同時並行することは難しいので、まずは状況を整理して、締め切りが近いものなどから手をつけていきましょう。

 

優先順位をつけるか、重要なものを一つだけ選ぶ

状況を整理する際に優先順位を付ける方法がありますが、優先順位を付けることが苦手な方は重要なものをひとつだけ選んでいきましょう。

 

絶対に今日やらなければならない大切な仕事をひとつだけ選び、作業に集中しましょう。

 

さらにそのひとつの仕事を

「午前中は〇〇までする」

「午後からは△△まで」

と細分化しても良いでしょう。

 

「やることリスト」を作成することも有効です。

 

一つひとつ仕事をこなしていくことで達成感を感じやすく、仕事が減っていくという安心感にも繋がります。

 

もしこの方法でやっても終わらないのであれば、自分ができる仕事量を超えている可能性もあるので、上司に相談したり、同僚に手伝ってもらうなど、周りの人の力を借りることが必要になってきます。

 

その際は、以下の記事で述べた「頼るための心得」を試してみてください。

>>【HSPで仕事がつらい】すぐできる3つの工夫・人に頼る際の心得を臨床心理士が解説

 

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【参考・引用文献リスト】

〇岡田尊司(2017):過敏で傷つきやすい人たち HSPの真実と克服への道 幻冬舎新書
〇武田友紀(2018):「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる  「繊細さん」の本 飛鳥新社
〇高田明和(2017):脳科学医が教える 他人に敏感すぎる人がラクに生きる方法 幻冬舎

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佐藤珠理

臨床心理士/公認心理師

心理系大学院修士課程を修了後、臨床心理士資格を取得。NPO法人にて不登校の子どもたちをサポートする事業責任者として勤務。また、同法人にてひきこもり青年の就労支援事業にも携わる。その後はスクールカウンセラーとして、小・中・高校、計10校の学校を担当する。2019年、公認心理師資格を取得。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2021年6月6日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。