生活福祉資金とは?対象・4つの貸付制度・利用方法・事例を社会福祉士が解説
精神疾患を抱えているために、仕事がなかなか見つからない…。
そのため教育を受け、知識を身に付けたいけれど、そのための学費がないなどで困っている方もいると思います。
また、教育以外にも身体が不自由になり、介護サービスを受けたくても、その費用がないということもあるでしょう。
そのようなとき、頼りになるのが「生活福祉資金」という制度です。
障害者の経済的な面や社会参加への促進を助けるために資金を貸付してくれるこの制度について、ご紹介します。
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生活福祉資金の対象
生活福祉資金の利用ができる方は、以下のとおりです。
・精神障害を抱えている方
・上記の障害を持ち、精神保健福祉手帳を持っている方
・精神保健福祉手帳を持っていないが、それ相応の障害があると認められる方
・低所得世帯で、他から資金の貸付をできるあてがなく、貸付を受けることで教育などを受けることができる能力を持っており、生活福祉資金を活用することで自活できる見込みのある方
生活福祉資金の貸付は、上記の方以外にも、身体障害者や65歳以上の高齢者がいる世帯も対象となります。
また、単身者のみではなく、世帯が生活に困窮している場合も当てはまります。
生活福祉資金の支援内容
生活福祉資金には、4つの種類の貸付制度があります。
1つめは総合支援資金で、2つめは福祉資金。3つめは教育支援資金、4つめは不動産担保型生活資金となっています。各々の特徴を以下にあげてみましょう。
1.総合支援資金
日常生活を行うにあたって、必要な費用の貸付のことを言います。たとえば、払いきれない光熱費や就職に必要な技能取得費などがあげられます。
2.福祉資金
病気の治療のための通院費や入院費、介護サービスを受けるための費用などの貸付のことを言います。
3.教育支援資金
高校や大学に通い、知識を身に付けるための教育費の貸付です。
4.不動産担保型生活資金
利用者の自宅を担保とし、生活のための資金を貸付してくれます。
生活福祉資金の費用
貸付ができる金額は貸付制度の種類によって異なり、細かく分かれていますので、利用したい貸付制度の金額を事前に調べたり、尋ねたりすることが必要です。
また、年に1.5%の利子付き(利用する貸付制度によって異なる)や連帯保証人がいれば、無利子で借りることが可能な場合が多いです。
生活福祉資金の利用方法
生活福祉資金の制度を利用したい方は、最寄りの社会福祉協議会の窓口にて申請します。
そこで申請書類などに必要事項を書き込み、揃える書類もあるため、それを用意し、提出しましょう。
書類は、各々の貸付制度で異なりますので、事前に窓口に尋ね、申請時に一緒に提出すれば後々の手続きがスムーズに行くかと思います。
また直接、社会福祉協議会の窓口に行くことができなくても、地域の民生委員に相談して、つなぎ役になってもらうことも可能です。
申請後、担当者が申請者の提出書類や現在の状態などを把握し、貸付制度を利用するにふさわしいとの判断がされると、貸付決定通知書が届きます。
利用者は、借用書を提出し、貸付金の送付がなされます。
生活福祉資金の事例
【Aさん 20代男性】社交不安障害
Aさんは、高校時代のいじめが原因で人前に出ることが怖くなり、高校卒業後は自宅に引きこもるようになりました。
ときどき、母親と買い物に出かけることもありましたが、人混みを見ると、気分が悪くなり軽いパニック状態に陥るため、1人だけ自宅に逃げ帰るということを繰り返していました。
Aさんの将来を心配した母親は、精神科病院を受診してみようと声をかけました。
Aさん自身も、自分の苦しいこの状態を何とか解決したいと思っていたので同意し、精神科病院を受診。社交不安障害と診断されました。
しかし、診察をした医師が優しく話を聴いてくれたため、Aさんはいつものような「人と話すことが怖い」という気持ちにはならず、パニックも起こさずに最後まで話をすることができたのです。
この状態を見た医師は、Aさんは通院治療やディケア、カウンセリングなどを行うことで、社会復帰ができるのではないかと考え、上記のような治療をしながら様子を見て行こうということになりました。
最初は、戸惑いもあったAさんでしたが、数ヶ月が過ぎる頃には、主治医に自分の意見をある程度伝えることができるようになり、ディケアでの活動にも随分と馴染んでいるようでした。
Aさんは母子家庭で育ち、今も母親の少ないパートの給料の中から生活しているため、自分が働くための訓練をし、就職をしたいと思うようになりました。
しかし、職業訓練を受けるにも受講料を払うことが難しく悩んでいました。
以前に、母親が生活保護の申請もしましたが、安くても収入があるといことで、申請が通らなかった過去があります。
Aさんは、職業訓練を受けるためにお金を貸りる方法はないかを主治医に尋ねたところ、生活福祉資金を利用してみてはどうかと勧められました。
社会福祉協議会の窓口で申請ができることを教えてもらったAさんは、母親とともに出向き、申請書や世帯の収入が分かる書類、自分の障害の状態などの書類を提出しました。
その後、Aさんに現在は障害があるけれど、職業訓練を受けることで就職し、自立できる可能性が大いにあること、少しずつなら母親の収入で貸付金を返済できる見込みがあるということで、総合支援資金が貸付されることとなりました。
Aさんは、職業訓練を受けるチャンスを手にし、母親も少ない利子で返済できる、この制度を利用できることに安堵しています。
生活福祉資金の注意事項
生活福祉資金は、利子が低いか無利子で貸付けを行うことができますので、とても便利な制度です。
しかし、多重債務者や返済する能力がないとみなされたら利用できないこともありますので、注意が必要です。
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- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2017年10月6日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。