【臨床心理士解説】日本は毒親が多い?毒親になってしまう4つの背景とは?

2021.09.04公開 2021.09.26更新

過干渉をはじめ、なんとなく日本に毒親が多い気がするけど、そもそも毒親になってしまうのってなぜなのでしょうか。

 

1989年にアメリカのスーザン・フォワードの著書『Toxic Parents』(『毒になる親』)で初めて使われた「毒親」という概念。

 

過干渉、暴言などで、子どもを思い通りに支配したり、自分を優先して子どもを構わないなどの親の言動に苦しめられたり…。

 

子供に悪い影響を与える親という意味でも広く使われるようになりましたが、「毒親」になってしまう背景にはどのようなものがあるのでしょうか。

 

今回は、毒親になってしまう4つの背景について心理学の視点から臨床心理士がご紹介します。

 

「毒親」は医学的用語ではなく、あくまで一般的な呼称(概念)です。

 

【関連記事】

>>毒親の5つの特徴・過干渉への5つの対処方法とは?臨床心理士が解説

>>【臨床心理士解説】毒親の特徴(過干渉・暴力暴言・ネグレクト)8つの具体的な言動

>>【臨床心理士解説】「もしかして毒親かも…」毒親を止めるための4つのヒント

>>【臨床心理士解説】毒親育ちの生きづらさ…5つの例と克服するためのはじめの一歩

>>【臨床心理士解説】毒親育ちで恋愛苦手、友達ができない背景にある3つの心理とは?

 

毒親になってしまう4つの背景

誰も毒親になりたくてなっているわけではなく、毒親自身がそうなってしまう背景を抱えていることがほとんどです。

 

その背景は大きく分けると4種類あります(水島,2018)。

①不安定な愛着スタイル

②発達障害

③臨床的疾患

④DVなどの家庭環境

以下より、それぞれの背景について深堀りしてご紹介いたします。

 

【毒親の背景①】不安定な愛着スタイル

まず、毒親自身が不安定な愛着スタイルを抱えている場合です。

 

ここで少し愛着について説明させてください。

 

愛着とは、

幼少期に世話をしてくれる人(親や養育者)と子供との間に形成される特別な絆のことです(岡田,2018)。

幼少期に親(養育者)から一貫して適切な世話を受けることができ、子供が求めた時に愛情が受けられると、安定した愛着が形成されます。

 

安定した愛着が形成されると、親(養育者)との関係が「安全基地」として機能するので、子供は”安全である”という感覚が得られ、その安全基地をもとに自分の世界を広げていくことができます。

 

すると次第に、親と一緒にいなくても安心していられるようになり、

”困った時には助けが得られるから大丈夫”

といった希望が育まれていきます。

 

一方で、親(養育者)から適切な世話が受けられなかったり、関心を寄せられ時に冷たく突き放されるような不安定な関わりを受けると、愛着の形成が上手くいかず、不安定な愛着を抱えることになります。

 

不安定な愛着では親との関係が「安全基地」として機能せず、子供は安心できず警戒心を持って常に親の顔色をうかがわなければならなかったり、いつ見捨てられるかと不安を抱いたりしやすくなります。

 

すると、

安心して周囲と関わることができず無関心や消極的になったり、

相手を失いたくないあまり、激しい束縛や支配、攻撃などをしてしまう

といったようになることもあります。

 

このように、親や養育者との関係性から形成された行動の様式は「愛着スタイル」として、子供が大人になってからも、他者との関わり方や様々な出来事の体験の仕方などに影響を与えると言われています。

 

毒親とされる親は、自分自身の親との関係などから不安定な愛着スタイルが築かれために、警戒心や不安が強く、自分の子供に対しても不安定な愛着の基盤を形成してしまう毒親となることがあるのです。

 

【毒親の背景②】発達障害

親自身に発達障害があり、特性として得意な部分や苦手な部分の凸凹が大きいことで、子供と安定したほどよい関わりを持つのが難しくなってしまう場合もあります。

 

例えば、

・相手の気持ちを推論するのが苦手という特性から、子供の気持ちを読み取ってそれに合わせた対応をすることが難しくなってしまう

 

・感覚過敏という特性から、子供とスキンシップが極端に少なくなってしまう

 

・複数のことに同時に注意を向けるのが難しいという特性から、家事や仕事をしていると子供に注意を向けられなくなってしまう(子供からすると、無視された、配慮してもらえなかったという体験になる)

など、親自身の特性が子供との関わり方に影響を与えてしまうことがあります。

 

【毒親の背景③】臨床的疾患

次に、親自身に心の病気があり、それによって気力や体力が十分でなく、子供と安定したほどよい関わりを持つのが難しい場合も考えられます。

 

例えば、

・うつ病によって子供の話を聞いたり子供の世話をするエネルギーがなくなってしまう

 

・双極性障害によって躁状態とうつ状態で子供への関わり方ががらっと変わってしまう

 

・アルコール依存によって暴力をしたり、家事や育児を放棄してしまう

など、親の状態によって子供と関わること自体が難しくなったり、子供にネガティブな気持ちやイライラをぶつけてしまったりと、関わり方が不安定になってしまうことがあります。

 

【毒親の背景④】DVなどの家庭環境

最後に、親が配偶者からDVを受けている、深刻な嫁姑問題に悩まされているなど、現在の家庭環境が安定していない場合です。

 

現在の家庭環境が不安定であることは、親自身にとって(もちろん子供にとっても)大きなストレス要因となります。

 

また、そのような環境では子育てにおいて家族のサポートを得ることが難しく、親は悩みやストレスを一人で抱え込むしかないこともあります。

 

そのような逼迫した環境によって、子供と安定した関わりが持てなかったり、ほどよい世話をするのが難しくなってしまうことがあります。

 

※これら①~④の要因があると必ず毒親になってしまうというわけでは決してありません。

 

【関連記事】

>>毒親の5つの特徴・過干渉への5つの対処方法とは?臨床心理士が解説

>>【臨床心理士解説】毒親の特徴(過干渉・暴力暴言・ネグレクト)8つの具体的な言動

>>【臨床心理士解説】「もしかして毒親かも…」毒親を止めるための4つのヒント

>>【臨床心理士解説】毒親育ちの生きづらさ…5つの例と克服するためのはじめの一歩

>>【臨床心理士解説】毒親育ちで恋愛苦手、友達ができない背景にある3つの心理とは?

 

【参考・引用文献リスト】

水野将樹(2009). 乳幼児期と心理的問題 下山晴彦(編) よくわかる臨床心理学 ミネルヴァ書房, 98-101.

水島広子(2018). 「毒親」の正体―精神科医の診察室から― 新潮社

岡田尊司(2018). 崩壊家庭における愛着障害 Webマガジン「みらい」, (2), 1-16.

シェア
ツイート
ブックマーク

山崎日菜乃

臨床心理士/公認心理師

心理系大学院在学中よりカウンセリング、フリースクールや児童養護施設の訪問、心理検査業務などを経験。夢だった中学教諭としての就職が決まるもうつ病を発症し断念。大学院修了後、うつ病治療に取り組みつつ臨床心理士と公認心理師の資格を取得。うつ病経験者の心理士としてお役に立てることを模索中

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2021年9月4日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。