反抗期の中学生にとっての父親の3つの役割、関わり方とは?臨床心理士が解説
反抗期における父親の3つの役割とは?
では、反抗期における父親の役割とは何でしょうか。
1.避難所
母親と激しくぶつかることが増えてくる一方で、子供は少なからず罪悪感を抱くことがあります。
「あんなこと言っちゃった」
「お母さんを傷つけてしまったかも」
と、後悔したり、反省したりしていますが、そんなこと本人にはとても言えません。
そんなときに、避難所としての父親の役割が大切になってきます。
「本当は、悪かったと思ってるんだよな」
「お前の気持ちも分かるけど、お母さんもお前のことを心配しているんだよ」
気持ちを代弁したり、違った見方を用意しておくことで、子供は罪悪感をやわらげることができます。
長期不在や、立場が弱いなど、父親が避難所としての機能が果たせていない場合、子供は「自分が悪い」という罪悪感を持ち続けることになり、自分を責めるクセがつく可能性があります。
どんなに反抗的な態度を取っていても、内心では自分を責めて苦しんでいることも多いのです。
そこに避難所としての父親がいるといないでは、その後の人生を大きく左右してきます。
2.邪魔な存在になる
反抗期の子供達にとって、父親が「邪魔な存在」であることは、実はとても意味があります。
「父親が邪魔」というのは、
・母親を独占できない
・思うようにできない
という意味です。
反抗期に、父親が子供に嫌がられたり、ウザがられたり、邪魔だと思われているということは、発達的にも健康で、健全な親子関係が構築されているという証拠です。
「子供に好かれなくても、邪魔な存在でもいい」
と思えるくらいがちょうどいいのです。
3.母親を守る
子供の反抗が激しくて、母親に暴力を振るうという人的被害が出始めたら、父親は体を張って母親を守らなくてはなりません。
例え我が子でも、いかなる理由があろうとも、
「俺の大事な人を傷つけるやつは絶対に許さない」
「絶対にお前に母親を渡さない」
という強い意志と姿勢を示しましょう。
母親を傷つけることで子供は罪悪感を抱くことになるので、母親を守ることは、結果的に子供を罪悪感から救うことにつながります。
反抗が向かう相手は弱い者順なので、
物→ペット→妹や弟→母親→父親
という順にエスカレートすることがほとんどです。
従って、暴力が父親に向かうのは最終段階。子供からの危機的なSOSということになります。
ここまで来る前に、なんとか子供を止めてあげるのも父親にしかできない仕事です。
反抗期の子供に対する父親の関わり方のポイント3つ
1.父性を表に出さない
父性というのは、社会のルールや善悪を教え、母子の密着を区切るという父親の役割です。
しかし、反抗期に父性を振りかざして子供に関わってもあまり効果がないようです。
反抗期の子供に、社会のルールや善悪を教えようとして
「そんなことでは、立派な大人になれない」
「社会で通用しないぞ」
「人として良くない」
などとお説教しようとする父親もいます。
しかし、子供たちはもうすでに「社会のルール」や「やっちゃいけないこと」くらいは十分理解しています。
そんなこといくら言われても響きません。
逆に、「じゃ、父さんはどうなんだ?それでも立派な大人なのか?」などと言われるのが関の山です。
本来、父性は子供がもっと幼い頃、母親の母性が発揮されている頃に発揮しておくべき役割です。
母子密着を自分から断ち切ろうとしている反抗期に父性を発揮しようとしても遅いのです。
2.自分の体験を伝える
子供にとって、父親は最も身近な反抗期の体験者です。
自分の子供の頃を思い出して、「父さんがお前くらいの頃は…」と、自分の体験を包み隠さず伝えてあげるといいと思います。
お父さんの体験談や失敗談を聞くことで、子供は
「父さんも同じことやってるんだ」
「お父さんだって完璧じゃないんだ」
「おやじ、全然ダメじゃん!」と知ることができます。
母親と二人きりの二者関係(2次元)だったところに、父親が登場することにより三者関係(3次元)ができるようになります。
二者関係では、自分と相手との関係しか存在せず、相手に執着をしていくことが多くなりがちです。
一方、三者関係では、より立体的に関係を築くことができるようになり、自分とは違う関係性が見えてきて、より広い視野が持てるようになります。
3次元の人間関係は外の社会と同じ仕組みなので、外の人間関係にも通用するものが、家庭内で機能するということになります。
また、
「自分だけじゃない」
「一人じゃない」
という感覚を得ることで、父親の存在を身近に感じ、安心を覚えることができます。
父親が、プライドや威厳を気にして、自分の過去をさらけ出すことができないと、子供は父親を超えることができず、「完璧な父親」という幻想を抱き続けていくことになります。
この時期に父親との関わりが希薄だと、将来対人関係で悩んだり、異性との関係が築けなくなってしまう可能性があります。
3.一貫した対応
どんなに反抗が激しくても、父親は「最後の砦」として堂々と子供に対応してあげてください。
一貫性がなく、子供の言動に振り回されたり、ビクビクして下手に出たりすると、子供も迷うことになってしまい、親に思い切りぶつかることができなくなってしまいます。
思春期に子供が反抗するのは、親との関係に安心があり、それがちょっとやそっとじゃ揺るがないという確信がほしいからです。
その「確信」をサポートすることができるのは、父親だけです。
「安心して、思いっきり反抗していいぞ」
「困ったときはすぐに駆けつけるからな」
「いつでも、お前の味方だ」
「母さんは俺が守るから安心しろ」
逆説的ですが、反抗期を早く終わらせたいと思っているなら、「どんどん反抗しろ」という姿勢を示すことが一番です。
反抗をやりきったと感じたら、もう反抗する必要がなくなって反抗期も終焉を迎えるでしょう。
その先には、いよいよ「一人立ち」が待っています。
さいごに
反抗期の子供と向き合うのは、親としては本当に大変なことだと思います。
だからこそ、母親と父親が足並みを揃えて協力することが、反抗期を乗り越える一番の近道なのだと思います。
夫婦がお互いに「ここが足りない」と粗探しをするのではなく、
・足りないところを認め、
・補い合いながら協力している姿を見る
といったことを、子供たちは一番望んでいるように思います。
母親の役割、父親の役割を上手に活用しながら、子供の反抗期を受け止めてあげてほしいと思います。
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- 本記事は2019年6月21日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。