【臨床心理士解説】愛着障害の克服は大人になってからも可能?回復のステップとは?
(質問)愛着障害を克服したいです。大人になってからも可能ですか?どのような回復の方法やステップがありますでしょうか?
(回答)結論から言うと、大人になってからでも愛着障害は克服できます。
また、最近ではセルフマネジメント(自分で自分を管理する)という考え方が広まってきたので、<愛着障害は自分一人で完全に克服できる!>と謳う専門家もおられます。
しかしながら愛着障害は人との関わり方の困難さともいえる問題なので、できれば最終的には、心の専門家と一緒に信頼関係を再構築しながらゆっくり克服していくことをおすすめします。
大人になってから自分自身の生き辛さを見つめ直し、「これって愛着障害かもしれない」と気づいたときから愛着障害克服への道は始まっています。
愛着障害の克服法(回復法)についてお話しする前に、まずは愛着障害克服のために重要なキーワードである「安全基地」についてご説明をします。
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愛着障害克服のキーワード「安全基地」
「安全基地」とは本来、子供のころの養育者(主に心理的な母親役)が担う、子どもにとって安心安全な居場所のことです。
例えば、生まれたばかりの赤ちゃんは自分で身を守ることができず、誰かに守ってもらわなくては生きていけません。
そのため泣いてメッセージ発し、養育者(ここでは母親とします)を呼びます。
すると母親は抱いてあやしたり優しい声掛けをしたりお世話をして、赤ちゃんを守り育てていきます。
母親が安定した愛情を赤ちゃんに注いでいると、やがて赤ちゃんと母親の間に信頼関係ができ、赤ちゃんにとって母親は「安全な場所」となります。
安全な場所を得た子どもは、そこを拠点に様々なものに興味を示し、いろんな経験をしていきます。
そうして疲れたり不安になった時には安全基地に戻って休息をとり、再び外の世界にチャレンジしていくのです。
また、安全基地は最初は身近な人との1つの関係から始まりますが、成長に伴ってその関係性をベースに新たな安全基地を作っていくと言われています。
初めは母親、そこから保育園の先生、学校の先生など、色々な人を安全基地として安定した関係を築き、安心して世界と関わっていくのです。
それでは、愛着障害の克服法を「自分でできる克服法」と「誰かの力を借りる克服法」の2種類に分けてご紹介します。
【愛着障害】自分でできる克服法
自分が自分の安全基地になる
自分が自分自身の安全基地になることで、愛着障害を克服していく方法です。
具体的には、子どものころに親にしてほしかったことを自分にしてあげるという方法があります。
例えば、
「子どものころ、私が辛い時に優しい言葉をかけてもらったことが無かった。それどころか余計に私を責め立てるようなことを言われて悲しかった」という想いがあるとします。
その場合は、具体的にどんな言葉を親に言ってほしかったのかを思い浮かべ(「頑張ったのにね、辛かったね」「大丈夫だよ、気にしなくていいよ」等)、その言葉を今の自分に言ってあげるのです。
イメージ的には、子どもの自分に、大人になった自分が優しく語り掛けてあげるような感じです。
自分が誰かの安全基地になる
自分が誰かの安全基地になることで、愛着障害から回復することもあります。
その誰かは、人である必要はありません。
例えば、ペット(犬がおすすめです)を飼ってみるというのも手です。
ペットの命に責任をもってきちんとお世話をすることが肝心です。
人に対しては何かをしてあげると見返りを求める、という人でも、相手がペットの場合は無償の愛を注ぐことができることも多いです。
また、人相手では相手の言葉の意図を深読みしてしまって素直に受け止められず辛いという人でも、純真無垢なペットならばその心配なく関われます。
ペットを大切に育て、またペットと絆を結ぶことで信頼感が生まれ、自己肯定感も高まり、愛着障害の克服に繋がっていきます。
【愛着障害】誰かの力を借りる克服法
安全基地になってくれる人を見つける
信頼できるパートナーと出会ったり、結婚を機に愛着障害を克服することは決して珍しいことではありません。
かつて子どものころに得られなかった愛情や信頼関係を、大人になって出会った相手と作り直すことができるのです。
気を付けていただきたいのが、誰でも安全基地として信頼していいとは限らないため、見極めが必要です。
例えば、
・損得なしであなたに関わってくれる
・あなたの不安定な感情に巻き込まれない
・精神的に安定している(急に不機嫌になったりしない)
・自立している(精神的にも経済的にも)
・あなたを攻撃しない
といった点を確認することが大事です。
臨床心理士・公認心理師などの心の専門家とつながる
愛着障害を克服するために愛着障害を理解することも大切ですが、まず自分自身のことを見つめ直し、理解することが大切です。
その作業は自分一人ですることが可能ですが、心の専門家に相談しながら行うことをおすすめします。
というのも、心の専門家と話すことによって自分自身のことや気持ちを整理しやすくなりますし、「誰かと一緒に作業している」という安心感を得ることもできます。
直接会って話をするのが億劫だったり、つい警戒してしまうという時には、最近ではオンラインで匿名で相談に乗ってくれたり、音声ではなくメールなどの文面でのやり取りが可能なものもありますので、自分に合った相談方法をとることが可能です。
さいごに
最後に、愛着障害を克服したい、と自分で思えた時点で愛着障害の克服は始まっています。
自分に合った克服法を見つけ、愛着障害を完全に克服するまでには時間がかかることもありありますが、「愛着障害は克服できる」という想いをもってぜひ取り組んでみてください。
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【参考文献】
〇岡田尊司(2011):愛着障害 光文社
〇岡田尊司(2013):回避性愛着障害 光文社
〇岡田尊司(2016):愛着障害の克服 光文社
〇愛甲修子(2016):愛着障害は治りますか? 花風社
〇中野日出美(2019):それは、“愛着障害”のせいかもしれません。 大和出版
〇米澤好史(2022):愛着障害は何歳からでも必ず修復できる 合同出版
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2023年6月8日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。