自尊心が低いってどういう意味でどんな悩みがある?原因は親?臨床心理士が解説
自尊心の低い人が抱えやすい6つの悩みと原因
自尊心が低い人が抱えやすいお悩みには以下のようなものがあります。
・自分のことをどうせ自分なんて…と思ってしまう
・人にどう思われるか気になって不安
・自分のやりたいことが分からない
・自分を人と比べて落ち込んでしまう
・自分の能力や可能性を信じられず行動を起こせない
・自分の欠点ばかり目に付いて自分を責めてしまう
そして、自尊心が低くなってしまう主な原因として以下3つの視点から考えられます。
家庭での経験によるもの
例えば、
・常に誰かと比較されて育った
・自分を否定されたり受け入れてもらえなかった経験がある
・親からあまり褒めてもらわずに育った
幼少期ほど、家庭での経験は大きな影響力を持ちます。
常に「お兄ちゃんと比べてあんたはダメな子」と比較されて育ったり、自分自身の存在を否定する言葉をかけられたり、虐待に遭ったりする経験から、自分はダメな子なのだと思い込んでしまいます。
そうすると、自分はかけがえのない大切な存在だという自尊心が健全に育ちにくいと言えます。
反対に、身近な人が自分を愛してくれている実感が持てたり、褒めてもらう頻度が高いと自尊心が高まると言われています。
過去の経験によるもの
例えば、
・過去の失敗体験を繰り返し思い出してしまう
・成功体験が少ない、もしくは成功体験があっても他人のおかげで成功したと捉えている
大きなミスや失恋、人間関係での失敗などを引きずって「自分はダメな人間だ」などと自分を責め続けると、自己嫌悪に陥って自尊心を育てるのが難しくなります。
また、成功体験が少ないと自分に自信が持てず自分を卑下してしまいやすいです。
反対に、自分の良い所に気付いて今の自分が好きだと思えたり、成功体験を積んで自分は”やればできる”と思えるようになると、自尊心が高まります。
現在の環境によるもの
例えば、
・SNSで他者から見られる自分を強く意識している
・よく見られようと自分を演じている
現代はSNSが普及し、他者から見られる自分を意識しやすい環境にあります。
SNSでは生活の一部分が切り取られているため、周りの人の優れた部分だけが見えて「それに比べて自分は…」と落ち込んでしまうことも多いでしょう。
反対に、自分を良く見せることばかり考えて、人の評価を気にしすぎ、自分を見失ってしまうこともあるかもしれません。
このような経験によって自尊心が低下してしまっていることもあります。
ただ、このような経験をした人がすべて自尊心が低くなる訳ではありません。
同じ能力、見た目や経歴、経験があっても自尊心の高さは人それぞれです。
大事なのは”その経験をどう捉えるか”という点です。
どんな経験をされた人も、その経験自体は変えることができませんが、捉え方を変えたり考え方の癖を修正したりすることで自尊心を回復していくことができます。
他国と比べて低い日本人の自尊心
現代の日本人は他国の人と比べて自尊心が低いことが分かっています。
2019年度に行われた13~29歳を対象とした内閣府の調査では、
「自分自身に満足している」項目に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の合計は全体の約45%
一方、同じく調査の対象であった韓国やアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの結果では70%を超えていました。
日本には、自分を表現することよりも他者と調和することを重視する文化があります。
そのため、日本では自分は価値のある人間だと表現することより、自分のことを控えめに言ったり謙遜したりするほうが人間関係が円滑に進むことも多いです。
このようなことが、日本が他国と比べて自尊心が低い理由だとも言われています。
そのような文化にあるにも関わらず、今の日本では多くの人が自尊心の低さからくる悩みを抱えています。
ここで重要なのは、特に日本の場合、自尊心を持つことは自尊心を相手にアピールすることとは意味が違うということです。
日本では、自分は価値のある人間だと表現したり自尊心をアピールする人は傲慢な人だと捉えられることもあります。
しかしそれはコミュニケーションの取り方の問題であって、自尊心を持つと傲慢になる訳ではありません。
むしろ適度な自尊心を持っている人は自分の長所も短所も心得ているので、上手に相手を立てながら、必要な時には自信を持って自分の意見を主張できるようになるでしょう。
さいごに
適度な自尊心は、人間関係や幸福感にプラスに働くと言われています。
自尊心が低い人は、他人に振り回されてしまいがちですが、
「他人の期待に応えることには限度がある」
「完璧な人間なんていないんだ」
という考え方を持ってみることもひとつです。
たとえ相手の期待に応えられず、相手が失望の表情を見せてきたとしても、あなたの自尊心を傷つけられるものではありません。
他人の評価に一喜一憂せず、未来にむかってコツコツ自尊心を育んでいきましょう。
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- 本記事は2020年8月30日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。