地域移行支援とは?対象・支援内容・費用・利用方法・事例を専門家が解説

2017.09.17公開 2020.06.08更新

地域移行支援とは?

障害者施設に入所していたり、精神科病院に入院していた方が、地域社会へと社会復帰することは決して珍しいことではないですよね。

 

しかし、地域社会に戻った際に、「どのような物件を探してよいのか」、「利用できる福祉サービスはあるのか」、「どのような準備をするべきか」などで迷うこともあるでしょう。

 

このようなときに、心強いサービスが「地域移行支援」です。

 

地域で生活したいという希望をお持ちの方は、このサービスを覚えておくと便利ですよ。

 

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地域移行支援の対象

地域移行支援のサービスを利用できる方は、以下のとおりです。

 

・障害者支援施設や児童福祉施設、精神科病院などに障害を持ち、入所や入院している方

・救護施設や更生施設に入所しており、障害を持っている方

・刑事施設(刑務所、少年院など)に入所しており、障害を持っている方

・就業支援センターや自立準備ホームなどに宿泊しており、障害を持っている方

 

対象は、精神障害者に限らず、障害者総合支援法にて「障害者」と認められる方すべてが含まれます。

 

 

地域移行支援の支援内容

地域移行支援とは、精神障害などを抱えながら施設や精神科病院などに入所、入院している方に対して、退所や退院後の住居の確保や地域生活をスムーズに行っていくことができるような支援や援助を行います。

 

援助の主体は、地域の地域移行支援事業所で、看護師などの専門職者が必ず配置されているので、安心して相談することができるでしょう。

 

利用希望者の話を聞いたうえで、彼らに必要な地域移行支援の計画を立て、現在入所や入院している施設や病院とも連携を図りながらサポートをします。

 

支援期間は、原則として6ヶ月となっています。

 

 

地域移行支援の費用

利用者が払う費用は無料です。

 

サービス計画作成などでかかった費用も、事業所側に対して地域相談支援給付費が支給されることとなっています。

 

 

地域移行支援の利用方法

地域移行支援を利用したい方は、まず主治医に相談をしましょう。

 

そのうえで、保健福祉センターの窓口に利用希望の申請書を出してください。その後、利用者の障害の程度を後日、担当職員が本人の施設や病院を訪問し、確認します。

 

また、現在受けているサービスや制度の把握も行い、適切なサービスを受けることにふさわしい特定の事業所が選択され、希望のサービスに即したサービス等利用計画案を作成してもらいます。

 

それが適切だと判断されたら、利用希望者にサービスの支給決定受給者証が送付されます。

 

その後、サービスを提供する特定の事業所より、支援計画の作成書が作られ、本人や家族の同意を得た後、サービスが開始されます。

 

地域移行支援の事例

【Aさん20代女性】うつ病・アスペルガー障害

Aさんは、アスペルガー障害を持っており、その障害を隠して事務の仕事をしていました。

 

しかし、臨機応変な対応ができないことから、職場での人間関係を上手く築くことができずにいました。

 

このような環境が続いたせいで、不安感や焦燥感が激しくなり、仕事が手につかなくなったため、会社を退職。

 

その後、かかりつけ病院を受診したところ、仕事でストレスがかかったせいでうつ病が併発しているとの診断を受けました。

 

心身をゆっくりと休ませるため、Aさんは主治医に入院を進められ、4か月程度の入院生活を過ごしました。

 

うつ病の症状は軽快してきたため、近いうちに退院の話がもちあがり、主治医がAさんにその旨を伝えました。

 

しかし、彼女は退院しても、家事などを上手くやっていけるかどうか不安だと退院を尻込みするかのような態度が見受けられました。

 

そこで、主治医はAさんがスムーズに退院でき、その後の生活の基盤を安心して作ってもらえるきっかけになればと、地域移行支援のサービスを受けてみないかと提案。

 

Aさんも、それなら不安が減るかもしれないということで、サービスを利用するという決心をしました。

 

Aさんは、主治医や医療スタッフと協力し、市役所へサービスの申請を行いました。その後、入院しているAさんのもとに訪れた担当職員に、彼女の状態や退院後に望むことなどをじっくりと聴いてもらいました。

 

Aさんは、ベースにアスペルガー障害を持っているため、精神保健福祉手帳2級も持っていましたが、これまで周りに自分の障害が知られるかもしれないという恐怖から、利用できるサービスなども一切利用していませんでした。

 

彼女の思いや障害の状態を把握した担当職員は、まずは身の回りのことを支えてもらうことのできるサービスを利用した方が効果的だろうと考え、適切なサービス提供の事業所を検討するということになりました。

 

Aさんが、退院しても無理をしないことが第一だと、選ばれた事業所は考えました。

 

病気が再発しないように、週に何度か自宅の家事やそうじを手伝ってくれるサービスや個人情報はきちんと守りながら、利用できそうなサービスは積極的に活用できるような退院後の利用計画案が作成されました。

 

その後、その計画案が通り、Aさんに地域移行のサービスを利用できるという支給決定受給者証が送付されてきました。

 

退院の準備が周りのサポートとともに着々と進んでいることを目の当たりにしたAさんは、以前と比べて退院することや、その後の生活を前向きに捉えています。

 

 

地域移行支援の注意事項

地域移行支援のサービス提供の期間は、6ヶ月になります。

 

そのため、6ヶ月を超えても支援が必要な場合は、再度個別審査を行う必要があります。

 

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久木田みすづ

精神保健福祉士・社会福祉士

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2017年9月17日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。