【HSP】「音に敏感・音が怖い」「人間不信・人と会うと疲れる」対処法を臨床心理士が解説
「音に敏感、音が怖い」「人間不信、人と会うと疲れる」などと感じることが多い場合、HSPの可能性も少なくありません。
HSP(highly sensitive person)と呼ばれる感受性が強く、繊細な気質や傾向を持つ人の中には、働くことに対する精神的な負担を大きいとお感じになれる人が少なくありません。
そこで今回のコラムでは、「音に敏感・音が怖い」「人間不信・人と会うと疲れる」といった困りごとへの対処法について臨床心理士と一緒に考えていきたいと思います。
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音が気になった時の対処法
まずは、外出先や職場での音が気になった時の対処法や気持ちを和らげる方法について、紹介していきます。
物理的に音を防ぐ
聴覚が敏感な方ができる対処法について、武田(2018)は、
・ノイズキャンセリングイヤホンをする
・耳栓をする
・イヤホンで心地よい音楽を聞く
を挙げています。
・苦手な音がする場所を避ける
・気になる音を止める
・寝室には電化製品を置かない
など、まずは自分が嫌だと思う音が出る物を自分から離しましょう。
電車の中など、その場から離れられない場合はイヤホンや耳栓で音を防ぎ、刺激から自分を守りましょう。
また、出かける時は常にカバンに耳栓を入れておくとお守り代わりにもなりますし、安心です。
仕事中の音が気になるようであれば、職場の上司に相談し仕事中の耳栓の使用の許可を取っておくと良いでしょう。
新幹線や飛行機など長時間の移動では、ノイズキャンセリングイヤホンがおすすめです。
気持ちをリラックスさせる
瞑想やマインドフルネスなどは体に入ってくる刺激を減らし、身体をリラックス状態に導きます。
通常のマインドフルネスは、1セット三十分程度の時間をかけて行いますが、忙しい人にとって三十分の時間をかけることはなかなか難しいことです。
ここでは、三分間で実践できる「三分間呼吸空間法」と呼ばれる呼吸瞑想法のやり方をご紹介します。(岡田,2017)
①まず、背筋を伸ばして座り、軽く目を閉じます。
最初の一分間は、自分の心の状態を感じます。
不安や苦痛、怒りや悲しみなど自身の心に浮かぶ感情をどうにかしようとせずに、ありのままに感じます。
② 次の一分間は、呼吸に目を向けます。
空気が鼻から入ってきて、気管を通り、肺に吸い込まれていくときの感覚に目を向け、味わいます。
胸やおなかの動きにも注意して観察しましょう。
この時、十分時間をかけてしっかりと空気を吐き出すことがポイントです。
③ 最後の一分間は、身体の感覚に目を向けます。
足先→膝→腿(もも)→お尻→おなか→背中→腕→肩→首→頭というように下から順番に体の感覚を感じましょう。
大まかに足からおなか、肩や首、頭と感じていき、感じながら体の部位を少し動かすことでリラックス効果が高まります。
刺激を受けて気持ちがいっぱいいっぱいになりそうなときに、ぜひ呼吸法を活用してみてください。
人付き合いが苦痛な場合の対処法は?
HSPの人は、相手の感情を感じやすく、空気を読んで行動するため、人と過ごすととても気を遣って疲弊してしまいます。
中には、「一人で過ごす方が楽」と感じる方も多くいます。
ここでは、人と付き合う時のポイントについてご紹介します。
相手を気遣うことが当然のことではないと認識しておく
HSPの人は正義感が強く、規範意識が高い傾向にあります。
周りの人の言動で、「配慮がない」「なぜ、そんな言い方をするの?」と感じることはありませんか。
相手の表情や言葉のニュアンスを敏感に感じ取り、
「今、この人はこう感じているのだな」
「こういうことを求めているんだな」
とすぐに察知できるHSPの人にとって、周りの人たちの言動は少し配慮に欠けるように思えるかもしれません。
しかし、価値観や考え方は人によって異なります。
相手を気遣う力にも個人差があり、全員がHSPの人ほど敏感に感じ取れるわけではありません。
世の中のほとんどの人は、HSPの人に比べてそこまで相手を気遣うことはできないのです。
「HSPの人にとってごく自然にできていることが、他の人にとって自然なことではない」
ということを認識しておくと、周りの人の言動にイライラすることも減っていきます。
その出来事が自身に起こっていることか、他者に起こっていることなのかを見極める
HSPの人は良くも悪くも環境の影響を受けやすく(串崎,2018)、他者との境界線が薄いため、他者の感情にも非常に巻き込まれやすい特性を持っています。
例えば、災害が起きてテレビで被災地の様子を見たり、被災した方のインタビューを聞くだけで、あたかも自分に起こったことのように感じてしまい、心が疲弊してしまうことが起きてしまいます。
心が疲れていると感じた時は、その出来事が自身に起こっていることなのか、他者に起こっていることなのかをしっかりと線引きすることで心理的ストレスが軽減されます。
具体的には、「テレビ画面の向こうの人が話している」「相手との間に透明な壁(アクリル板など)がある」と考えるとイメージしやすいかもしれません。
職場や家庭で相手に巻き込まれたくない時は、相手との間に何か物を置いてみましょう。置く物はペンやコップ、置物など何でも良いので、「物理的に境界線を引く」ことを心がけてみてください。
他人の感情は放っておく
「不機嫌な人が近くにいると、同じ空間にいるだけで疲れてしまう」
「一方的に怒鳴られたり、八つ当たりされやすい」
という経験はありませんか。
そんな時の対策として、武田(2018)は次の3つを挙げています。
・「この人機嫌悪いなー」と思って、放っておく
・できるだけ物理的な距離を取る
・自分なりの対処法をもっておく
HSPの人は、周りの人の感情や小さな変化に誰よりも早く気がついてしまうからこそ、「自分が、なんとかしなければ!」とすぐに相手を助けたり、不機嫌な相手に対しては特に優しくしてしまうという行動をとってしまいがちです。
しかし、自身が率先して動いてしまうほど、相手はHSPの人にどんどん依存してしまいます。
間違ってはいけないのは、その人が機嫌が悪いのはその人自身が解決すべき問題です。
不機嫌な人や八つ当たりをしてくる人に対しては、物理的にも心理的にも距離をとり、少し冷たく感じるかもしれませんが相手にせず放っておく必要があるのです。
機嫌が悪い人がいると気づいたら、「〇〇さんは機嫌が悪いんだな」と確認するだけで良いので、後は放っておきましょう。
もしそれでも落ち着かない場合は、お手洗いに行ったり、可能であれば別の場所で作業を行うなど、できるだけ相手から距離を取ることを意識しましょう。
不機嫌な人の感情に振り回されそうになった時は、他の人と会話をしたり、温かい飲み物を飲むなどして、日頃から自分が落ち着ける手段をもっておくと良いでしょう。
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【参考・引用文献リスト】
〇岡田尊司(2017):過敏で傷つきやすい人たち HSPの真実と克服への道 幻冬舎新書
〇武田友紀(2018):「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本 飛鳥新社
〇高田明和(2017):脳科学医が教える 他人に敏感すぎる人がラクに生きる方法 幻冬舎
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2021年6月27日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。