【臨床心理士解説】無気力の原因って?無気力に繋がりやすい4つの性格とは?
「何をやっても無駄…」「どうせ自分なんて…」
そういった無気力感が強まってしまうのは、心が弱いとか甘えといった単なる精神論的な理由ではありません。
そこで今回は無気力感に潜む心理的な背景や無気力に繋がりやすい性格について、臨床心理士に解説していただきました。
【関連記事】
>>【臨床心理士解説】「無気力症候群」とはどんな状態?原因・セルフチェックをご紹介
>>【臨床心理士解説】うつ病で無気力が続く…日常生活で出来る手軽な対処法とは?
>>【臨床心理士解説】子どもの無気力…親としてどう対処したらよい?
>>【臨床心理士解説】更年期で無気力感やだるさ…どんな対処法・対策がありますか?
>>【学習性無力感】仕事での事例と4つの克服法とは?臨床心理士が解説
>>【経験談】完璧主義で自責思考の私が「ほどほどで良い」と思えるようになれたきっかけ
>>自己効力感を高める4つの要素と3つの方法とは?臨床心理士が解説
「無気力」になる原因とは?
無気力とは、何もする気が起きないことや、意欲のない状態を指します。
無気力になる原因として、
「自分の力ではどうしようもない困難を繰り返し経験すること」
が挙げられます。
このことは心理学では「学習性無力感」として知られており、アメリカの心理学者であるセリグマンが、イヌを被験体とした実験によって立証しました。
実験では、身動きできない状態で電気ショックを与え続けられたイヌは、その後簡単に電気ショックを回避できる状況になっても、回避するための努力をしなくなることが示されました。
中には試行錯誤を続けたイヌもいましたが、回避できる方法に気づくまでに時間がかかる傾向があり、食欲の低下や血圧の上昇などのストレス反応も見られました。
人間の場合にも、同様のことが起こります。
努力してもそれに相応しい結果が得られなかったり、自分の力では状況が変えられないと、そのこと自体がストレスになり、身体や心の不調をきたしやすくなります。
さらにそのような状況が長く続くと、「何をやっても無駄だ」という感覚を学習してしまい、そこから逃れるための努力をしなくなっていきます。
そうなると、普段なら問題なくできるようなこともできなくなったり、趣味なども楽しめなくなってしまうことがあります。
一度、無気力になってしまうと、その状態から抜け出すための対処法に気づくまでに時間がかかってしまうので、なかなか抜け出せない負の悪循環が起こりやすくなるのです。
もちろん困難な状態が続いても、なにか解決策があると思うことができれば、無気力に陥る可能性は低くなるでしょう。
無気力に繋がりやすい性格とは?
困難な状態が続くこと自体は誰にとってもストレスに感じられるものですが、その捉え方は人それぞれです。
ここでは無気力に繋がりやすい性格の特徴を以下に挙げます。
自己効力感が低い
自己効力感とは、困難を自分の力で克服できるだろうという見通しや、「自分はできる」という感覚のことを指します。
自己効力感が低いということは、自分がどのくらいのことができるのか見通しが持てず、失敗を恐れてチャレンジをしにくい傾向にあります。
たとえば「なかなか恋人ができない」という状況では、「どうせ自分なんて・・・」「自分にはできない」と初めから諦めてしまうことが多いかもしれません。
思い切ってデートに行ったとしても、少しでもコミュニケーションがうまく取れないなどの失敗経験をすると、「やっぱり私はダメなんだ」と諦める方向へ向きがちです。
自律性が低い
自律性とは、自分で決めて、自分のやりたいように行動しているという感覚のことを指します。
元々自分でやりたくて始めたことであれば、たとえ失敗しても、また次に向けて頑張ろうと前向きな見通しを持ちやすいものです。
しかし、たとえば「本当は大学に行きたくないのに、親が言うから仕方なく受験した」というような状況では、頑張ること自体が苦痛でしょうし、ましてや受験に失敗してしまった場合には、なんのために頑張っていたのだろうと思うでしょう。
仮に無事合格して入学できたとしても、次の目標が見当たらず、自分の人生を生きている感覚が薄いままでいることになってしまいます。
そのような状態で困難や失敗があると、頑張るための原動力がないため、「何をやってもダメだ」といったように無気力に陥りやすくなります。
完璧主義
完璧主義自体は悪いことではありませんが、目標が高いと、その分失敗する確率も高くなります。
完璧主義の人は自ら高い目標を設定して、知らず知らずのうちに失敗が続く状況に陥りやすいです。
また、一つの失敗で大きく落ち込み、立ち直れなくなる可能性もあるので、注意が必要です。
自分の能力に原因を置きやすい
たとえば、テストで良い点を取れなかったら「私の頭が悪いからだ」といったように考える傾向を指します。
能力に原因を置いてしまうと、それ以上改善のしようがないので「何をやってもダメだ」という無力感に繋がりやすいといえます。
同じ状況でも、「今回は勉強が足りていなかった」といったように自分の努力不足に原因を置けば、また勉強をすればいいという解決策があるので、無力感に繋がりにくいといえます。
【関連記事】
>>【臨床心理士解説】「無気力症候群」とはどんな状態?原因・セルフチェックをご紹介
>>【臨床心理士解説】うつ病で無気力が続く…日常生活で出来る手軽な対処法とは?
>>【臨床心理士解説】子どもの無気力…親としてどう対処したらよい?
>>【臨床心理士解説】更年期で無気力感やだるさ…どんな対処法・対策がありますか?
>>【学習性無力感】仕事での事例と4つの克服法とは?臨床心理士が解説
>>【経験談】完璧主義で自責思考の私が「ほどほどで良い」と思えるようになれたきっかけ
>>自己効力感を高める4つの要素と3つの方法とは?臨床心理士が解説
【参考文献】
・波多野 誼余夫・稲垣 佳世子 (2020). 無気力の心理学 ーやりがいの条件ー 中央公論新社
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2023年1月6日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。