双極性障害の私が実践する仕事上の工夫と注意サインとは?【松浦秀俊さん】

2018.04.16公開 2020.05.19更新

まずは、今回のコラムを書いている今の私の気分の状態について。

 

資格試験の合格によって軽躁が2週間続きましたが、それがおさまりつつあり、気分としてはちょっともやっとした状態。

 

なので、かなり平常時に近い形で今回の記事を書けそうです。

 

さて、今回は「双極性障害の私が実践する仕事上のちょっとした工夫」。

 

「工夫」を「双極性障害の対処」と考え、気分が上がり過ぎる軽躁(躁)の対処と、気分が落ち込むうつの対処の2つに分けて記していきます。

 

「きっかけ」と「注意サイン」

ここでまず、お伝えしたいのは「きっかけ・注意サイン」という考え方です。

 

気分が上がり過ぎる、または下がる前に現れる兆しのうち、外側からの刺激は「きっかけ」、自分自身の内側の変化を「注意サイン」と表現していきます。

 

また、きっかけ・注意サインは、それが発生したときには体調は崩れていないけど、ほっておくと体調を崩す可能性のあるものを指しています。

 

風邪に例えるとすれば、

 

「急に気温が下がった」

「家族が風邪をひいている」

 

というのがきっかけ。

 

「鼻水が出てきた」

「少し悪寒がする」

 

が注意サイン。

 

ただ、この状態は風邪の前兆なので体調は崩してないというイメージです。

 

 

軽躁期のきっかけ・注意サイン

私の場合の軽躁時のきっかけは、

 

「新しい仕事にチャレンジする」

「広報で突然取材の依頼が来る」

「ポジティブなライフイベント(転職、結婚、育児etc.)」

 

などです。そして、注意サインとしては、

 

「やりたいことが次々浮かぶ」

「帰宅後も仕事をやり続ける」

「深夜・早朝に同僚に役立つと思う情報をメールする」

 

などが症状として出てきます。

 

 

軽躁期のちょっとした工夫

気分の盛り上がり、活動を抑える

軽躁期の何よりの対処は、気分の盛り上がり、活動性を抑えていくこと。

 

具体的な事例で工夫をみていきます。

 

例えば、仕事で採用に関わっていた時。

 

「新しい採用のWebサービスを使おう」【きっかけ】という話になり、私は「どうやったら沢山の人にエントリーしてもらえるか?」と考え、リサーチを始めました【注意サイン】。

 

そして、調査結果から考えた施策を試してみると、予想以上の反響【きっかけ】。

 

それが刺激となり、業務後も深夜までWebアクセスし、更新作業を続ける【注意サイン】。

 

こんな悪循環に陥ったとき、まず私自身がやったことは、「業務後、スマホで採用Webにアクセスする時間を決めた」こと。

 

業務後、アクセスはしてもいいけど、1日1時間までと制限を決めました。

 

全くアクセスしない、だとイライラが募り、結果、制約を破ってしまう傾向が私にはあるので、最低ラインを決め、抑制しました。

 

睡眠時間の確保

また、「睡眠時間6時間以上の確保」を必須とし、もし寝れなくても、布団から6時間は出ないこと、また布団の中ではスマホを触らないことを守っていました。

 

私にとって、睡眠時間減少が軽躁に拍車をかけるため、たとえ眠れなくても布団の中にはいました。

 

軽躁状態であると主治医に伝える

この事例当時は出来ませんでしたが、今やっている対処としてはやはり薬の処方変更です。

 

最近の話で、私が軽躁状態だと主治医に伝え、軽躁に効果があり、副作用としての眠気が出る薬を処方されたことで、比較的早く軽躁が落ち着きました。

 

薬物療法は主治医の方としっかり相談の上ですが、取り入れることも大切だと私は考えます。

 

周囲からサポートしてもらう

他に、職場に開示できる環境であれば、まわりにサポートしてもらうことはとても効果的です。

 

私の場合、社内全員、私が双極性障害ということは周知されているため、少しでも軽躁サインがでると、そのことを教えてくれます。

 

先ほど挙げた採用Webの事例の時も、1つのアカウントを複数人で利用していたため、私の編集時間が深夜であることに気づいた他スタッフから「軽躁なのでは」という声掛けが有りました。

 

そして、周りからセーブがかかり、業務量を強制的に減らしてもらえたのも、軽躁を抑えることに役立ちました。

 

なかなか、軽躁自体を気付くことが難しいというのもあるので、周囲のチェックを取り入れるのは、軽躁の早期対処には重要かと思います。

 

 

うつ期のきっかけ・サイン

私の場合のうつ期のきっかけは、

 

「大きなイベントが終わった後」

「社外の人と会うことがほとんどない」

「土日外出をしない」

「軽躁のあと」

 

などです。そして注意サインとしては、

 

「今までやっていたことが楽しめない」

「予定をキャンセルする」

「周囲を気にして自分と比較する」

「夜ではなく朝風呂に入るサイクルになる」

「過眠」

 

などが出てきます。特に特徴的なのは「同僚と目を合わせなくなる」です。

 

 

うつ期のちょっとした工夫

「明けない夜はない」と胸に刻む

気分が落ち込んで来た時にまず行うのは、軽躁とうつの期間を記録したメモ帳を見ること。

 

過去、長くても3ヶ月以上、うつ期が続いたことがないので、このメモ帳を見ることで「明けない夜はない」ということを胸に刻みます。

 

また、うつ期で大事にしているのは、V字回復は目指さない、無理やり気分を持ち上げようとしなこと。

 

下がる気分にストップをかけるだけでもエネルギーが必要なので、これ以上、気分が落ちなければ良し、くらいの感覚で向き合っています。

 

ちょっとした事にも感謝する

そして、仕事上でやっていることの一つは、ちょっとした事にも感謝すること。

 

うつ期で陥りがちなのは、当たり前のハードルが上がってしまい、出来てない所に目がいってしまうこと。

 

「今働かせてもらえてるのは有り難い。やらせてもらってる一つ一つを大切に行おう」

 

そんな心持ちで、初心に戻る機会と思って、基本的なことを淡々と行うようにしています。

 

出来たことを書き出す

また、出来たことをちゃんと文字に書き出して読んで、自分で認識していくことも心がけています。

 

とりあえず行動してみる

うつ期になると、どうしてもマイナスな考えが頭を占めてしまいますが、四の五の言わずに行動するようにしています。

 

例えば、「●●さんに電話しないといけないけど、なにか言われたら嫌だなぁ」。そんな考えがぐるぐるしてても、エイヤっと電話をかけてしまう。

 

相手が出たら、話さざるをえない。でも、話し終えて振り返ると、当初の不安は杞憂に終わっている。

 

そういうちょっとした行動の繰り返しが、うつ期から立ち直る上で大事だと実感しています。

 

休むことが必ずしもプラスではない

双極性障害のうつ期の特徴としては、休むことが必ずしもプラスではないこと。

 

私の場合は、仕事を休んだりしてしまうと過眠に逃げて悪循環に入ります。

 

ちょっと気分が塞いでいても活動性を下げない、会社に行っている中でどう立て直すかも大事なポイントです。

 

 

さいごに

ざっと、私なりの仕事上での軽躁期とうつ期の対処を列挙してみました。

 

この内容も、いま現時点のもので、今後の働き方や症状の出方でアップデートされていくだろうと思います。

 

大切なのは、常に自分と向き合い、「自分らしく双極性障害と付き合いながら仕事をする方法」を模索し続けることかと思います。

 

一生続くこの探求を、私は無理なくマイペースにやっていければと思います。

 

松浦秀俊さんの連載一覧

【Part  1】双極性障害では仕事が続かない?正社員7年目のホントのトコロ

【Part  2】双極性障害の私が実践する仕事上の工夫と注意サインとは?

【Part  3】双極性障害での仕事探し!大切にしたい5つのこととは?

【Part  4】躁(軽躁)でもうつでもない平常時の自分なりの定義と働き方

【Part  5】仕事上、双極性障害で辛い2つのことと私なりの対処方法

【Part  6】双極性障害で職場復帰までの工夫、嬉しかった職場での接し方とは?

【Part  7】妻からみた双極性障害の夫。出会い・結婚・子育て・家族としての工夫や悩み

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松浦秀俊

公認心理師・精神保健福祉士・産業カウンセラー。うつ病などの方の復職・再就職支援「リヴァトレ」の支援員・広報。双極性障害II型の当事者。現在の職場では勤続7年目(休職0回)。@bipolar_peer

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年4月16日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。