アルコール依存症で家族が崩壊…家族を救った3つのきっかけとは?【体験談】

2018.04.13公開 2020.05.13更新

実際に家庭が崩壊した我が家の場合

ここで少し、我が家のケースをお話ししますね。

 

私が精神的に追い詰められ、もうダメだと痛感したのは、2014年春のこと。

 

パートナーがアルコール依存症であると分かってから(本人は認めていませんでしたが)、すでに3年近くが過ぎていました。

 

彼がいつものように泥酔したある晩、息子の一言にショックを受けた私は、自分を救うため、家族を守るために行動を起こすことを決意したことがありました(詳しくは別のコラムに書かせていただいています)。

 

あの時が、まさに自分たちの家庭が崩壊していると認識した時でした。

 

家族に対する身体的な暴力行為はなく、欠勤がちながらも仕事には行っていました。

 

飲酒による交通事故や事件を起こしたわけでもなく、私も息子も日常生活を送れていたので、外目には崩壊しているようには見えなかったかも知れません。

 

けれども、夫婦間のコミュニケーションはまったくなく、それゆえ信頼関係もありませんでした。

 

行動することを決意した私は、家族のための自助グループ(アラノン)のミーティングに毎週通うようになり、それと並行してアルコール依存症について本やインターネットで学びました。

 

そして力を取り戻し、アルコール依存症という病気について正しく理解するようになりました。

 

それに伴い、パートナーに対する気持ちにも変化が生まれ、家族間の関係やコミュニケーションも徐々に良くなっていきました。

 

 

家庭崩壊を救った3つのきっかけ

アルコール依存症は病気であると受け入れた

では、何がきっかけで、私たちの家族関係が回復していったのか。

 

きっかけと言っても大きなことではありません。

 

単に見方、捉え方が変わっただけで、人間関係が良くなることは多々あることですね。

 

まず一つ目は、私が、アルコール依存症は病気であると受け入れたことでした。

 

それまでも、アルコール依存症が病気であるとは知っていましたが、「飲酒をコントロール出来ない病気で、専門家の助けが必要な病気」という程度の理解でした。

 

散々振りまわされてきた家族には、アルコール依存症が病気であることを受け入れることに抵抗があるかも知れません。

 

好きで飲んでいるように見えますし、本人も実際「飲むのは俺の勝手だ」とうそぶいているかも知れません。

 

けれど、アルコール依存症患者本人も、好き好んで病気になったわけではありません。

 

わざわざ病気になることを好んで選ぶ人なんていませんね。

 

これを理解した時に、戦うべき敵はパートナーではなく、アルコール依存症というモンスターなのだと分かったのです。

 

モンスターの巧妙なワナにかかって、家族同士が敵になってしまった時に、家庭が崩壊するのかも知れません。

 

 

アルコール依存症になる前の夫を思い出した

2つ目のきっかけは、アルコール依存症になる前の彼がどんな人だったのかを思い出したことです。

 

「どうしてそんなことがきっかけになるの?」と思われたかも知れませんね。

 

アルコール依存症は心の病気でもあり、比較的心の落ち着いた状態の時と、病的な状態の時とがあります。

 

病気の心から出ている言動は、病気がそうさせているのであって、その人本来の性格ではありません。

 

ただ、病気から出ている言動にずっと振りまわされてきた家族には、それが見えなくなってしまうのです。

 

本当の敵である病気は姿が見えず、目の前に見えるのは、今日も飲み続ける依存症者だけ。

 

確かに容易ではないかも知れませんが、病気とその人自身を分けて見ることが大切です。

 

本来のその人がいなくなってしまった訳ではないのです。

 

私のパートナーは、一度アルコール依存症の専門病院に入院しましたが、入院して1週間もすると目つきや顔つきがまるっきり変わって血色も良くなり、まるで別人の様子に、非常に驚いたことがありました。

 

そして「そう言えば、病気になる前の彼はこんなに穏やかで優しい人だった」と思い出すことができ、あんなに無責任で自分勝手で意地悪な態度だったのは、本当に病気のせいだったんだと納得しました。

 

 

息子に全て正直に話した

もう一つのきっかけは、息子でした。

 

私はアルコール依存症について学び始めてから、息子にもすべて正直に話しました。

 

パパが病気であること、どんな病気なのか、私たちは何ができるのか。

 

どれだけちゃんと伝わったか分かりませんが、息子は息子なりに受け入れ考えたことだろうと思います。

 

それから数年して、もうパートナーのことを憎んではいなかったものの、このまま一緒に暮らすのは心身の負担が大きすぎるからと、家を出ることを考えていた時も、結論を出す前に、私が考えていることを息子に伝えました。

 

まだパパのことは愛しているけれど、このままではママはとてもしんどいこと、日本に帰る可能性もあることなど。

 

酔っ払って絡んでくるパパに対しては、とても腹を立てていた息子ですが、家を出ることに関しては、やはりパパを置いては行けないと泣きながら話してくれました。

 

病気でも、頼りにならなくても、息子にとっては大切な父親なのだと納得させられました。

 

誤解しないでいただきたいのは、子どもがいるなら離婚すべきではないと言いたいのではありません。

 

反対に、早く離婚した方が良い場合もありますし、子どものために別れられないと子どものせいにするのは子どもにとって迷惑な話だと思います。

 

ただ私の場合は、息子がまだパパを大事に思っていることを知って、考えを変えたというだけですので、誤解なさらないで下さいね。

 

【関連記事】

>>アルコール依存症の子供への3つの影響と子供への伝え方のコツ

 

さいごに

私は先に、離婚は家庭が崩壊した結果の一つと書きましたが、離婚が悪いこと、避けるべきことかというと、そうではないと思っています。

 

離婚が底つきとなって、アルコール依存症患者を回復に向かわせることもあるからです。

 

前夫の鴨志田穣さんがアルコール依存症だった漫画家の西原理恵子さんは、アルコール依存症について正しい知識を広めようと活動されています。

 

その中で、もう少し早く離婚してあげていたら、鴨志田さんももっと早く治療につながって、もう少し長生きできたのでは…と話されています。

 

たとえ、離婚して家族がバラバラになったとしても、そこから信頼関係を回復させることは可能だと思います。

 

婚姻関係という形に固執するのではなく、家族の皆がそれぞれ心の平安を得て幸せになるという本当の望みに沿って、選択、決断していただきたいと思います。

 

参考文献:西原理恵子/月乃光司著 「おサケについてのまじめな話」 小学館

 

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プリームみどり

ベルギー在住。夫がアルコール依存症になり家庭崩壊の危機に直面するが、 病気について学び自分自身を取り戻す。 自身のブログ「私から始めよう」では、周りに振り回されずに、 幸せに生きるためのメッセージを発信している。>>blog

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年4月13日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。