引きこもりの親…特徴や共通点は?親が実践したい3つの対応を保健師が解説

2018.04.19公開 2019.05.16更新

引きこもりの親が、過去に引きこもりの経験があることは稀だといわれています。

 

そのため、子どもが引きこもるという事態になると、理解が難しいことが多いようです。

 

引きこもりはとても根深い問題であり、「親が悪い」「育て方が悪かった」などといったところで解決する問題ではありません。

 

多くの親御さんが子どもの引きこもりに悩み、考え、行動していらっしゃいます。

 

まずはそんな親御さんにこそ、適切な心理的サポートが必要なのです。

 

今回は、引きこもりと親をめぐる問題について、そして子どもが引きこもってしまったときに、親が実践したい3つの対応についてお話したいと思います。

 

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引きこもりの親の特徴って?

自己主張せず波風を立てない傾向

私たちの経験上、引きこもりの親は、いわゆる「いい子」であることが多いように感じます。

 

また、過度な自己主張はせず、周囲の状況をよく見て判断し、相手との関係において波風を立てないように気をつけることが得意であることが少なくありません。

 

そのため、子どもとも感情的にぶつかることは少なく、夫婦の関係においても、意見のぶつかり合いが起こることはめったにありません。

 

親と子どもの心性は共通するところがあります。

 

そして、子どもは周囲の情緒的な動きをとらえることに敏感です。

 

親の方は、器用にそうした情緒的なぶつかりを避けて社会生活を送ってきて、それが当たり前であり、そうするものだと思っているので、情緒的な刺激を避けて生きることに疑問をもつことはあまりないようです。

 

しかし、子どもは思春期を迎えるあたりで、

・情緒的動きに対して不安で避けたい気持ち

・自分のコントロールできにくい情動をどこかにぶつけて試したい気持ち

との間で揺れ動くようになります。

 

本来ならば、安心してぶつけられる相手が親であり、そうした負の不安定な感情を引き受け、受け止め、試行錯誤しながらも緩和させていきます。

 

情緒的なぶつかりを避けることで

一方で、引きこもりの親は、両親ともそうしたぶつかりを避けるのに長けているので、ぶつかりのチャンスがないまま、そして情緒的に受け入れるチャンスを逃して、子どもは成人年齢を迎えてしまいます。

 

子どもが不登校や引きこもりになると、親は「自分に悪いところがあったのだろうか」と、さまざまな助言を求めて病院や支援機関などを訪れるようになります。

 

しかし、自己主張することはますます悪く、わがままであると考えるので、子どもとの関係はますます腫れ物に触るように遠巻きなものになりやすいようです。

 

こうして、子どもの方は情緒的なコントロールを親とのやりとりで身に着けていくチャンスを失ってしまうのです。

 

この練習をせずに社会に出ることは、ますます怖いものになりますので、それをしていない子どもが引きこもっていくのは、ある意味、自然の流れではあるのです。

 

 

「ぶつからない」夫婦関係

喧嘩をしなかったり関係が希薄な夫婦

ご相談にいらっしゃる引きこもりの親御さんには、典型的な特徴があります。

 

特にご夫婦関係をうかがうと、

・仲が良く、一度も喧嘩したことがない、喧嘩になったことがないタイプ

・ご夫婦の関係が希薄で、お互い相手に不満を持ちつつも、それをぶつけ合うことがないタイプ

どちらにも共通しているのは、「ぶつからない」という微妙な関係を維持していることです。

 

こうした関係の維持をすることが、自分の“ぶつかりたくない”という意思からきているものではなく、

 

”仕方がなく、いつの間にかそうなってしまって、もう変えられない“と思い込んでいるという特徴が見受けられます。

 

引きこもりは世代間伝達の問題?

こうした”ぶつからない”姿勢は、親もその生い立ちから刷り込まれてきていることなので、引きこもりの問題は実は世代間伝達の問題でもあります。

 

長い世代間伝達が続いていて、そうした親の拒否反応に敏感だった子どもがサインとして、もしくは最終手段として、引きこもりという実行に移しているのです。

 

ですから、ずっと見ないようにしていた親が、そうした姿勢を改めようと努力するときには、専門家のサポートが必要になります。

 

なぜなら、親も自分の親にそうした心理的な支えをしてもらわずに、育ってきている可能性が高いのですから。

 

長年続いてきた世代間伝達を断ち切ろうとするのは、本当に大変なことです。

 

然るべきサポートを受けていいのだということを、動き出す親には理解をして、ひとりで頑張らないでいただきたいものです。

 

 

親が実践したい3つのこと

親自身が自分の気持ちを言葉にする

まずは、親自身が自分の気持ちを言葉にしていくことからはじめましょう。

 

今までなるべくはっきり言葉にすることを避けてきた方が多いでしょうから、始めてみると、失敗も多いと思います。

 

敏感なお子さんと実践に移す前に、ご夫婦やお友達、家族会などの共通項をもっている人、カウンセラーなど、うまくいかなくても、フォローが効く相手と練習してみましょう。

 

もちろん、お子さんと実践してみても構いませんが、良い反応がなくても、魔法の言葉をすぐに出せるわけではないことを理解して、へこたれずチャレンジしてください。

 

まずは、親が思っている感想や気持ちを、

「それは良さそうだね」

「今日、こんなことがあって、すごく腹が立った。でも、言えなかった…悔しかったな」

とか、実際に何か行動できなくても、そう思った気持ちを見えるようにすることが、親御さん自身にもお子さんにも意味のあることになっていきます。

 

親が情緒的な交流をしている姿を子どもに見せる

大事なことは、自分の思ったことを人に伝える様子、どんなことを伝えたり、表現したりしたら良いかのモデルをお子さんに示すことにあります。

 

お子さんは、親御さんが他の人と情緒的な交流をする様子を見ることによって、自分の思いや感情を伝える方法、何よりも「伝えたり表現したりしていいのだ」ということに気づいていきます。

 

お子さんが自室に引きこもってしまい、コンタクトがとれない親子もおられるかと思います。

 

その場合、交流をすることよりも、こうした動きを見せるようにしてみることもいいと思います。

 

毎日、部屋の前に置く食事にメモを置いたり、交換日記をしたり、SNSをしたり、メールでやりとりしたり。

 

その中に必ず、親御さんの情緒的な言葉を入れるようにしてみてください。

 

プラスのこともマイナスのことでも構いませんが、常識や人がどう思うかではなく、親御さんご本人のお気持ちを発してみてください。

 

お子さんへの声かけは、毎日同じタイミングで

お子さんとのコミュニケーションは、毎日同じタイミングにトライしてみましょう。

・朝起きての挨拶(顔を合わせなかったらメモ)

・掃除のタイミングで声かけ

・親御さんが帰宅したら、今日のできごとと感想をちょっと報告する

などなど、お子さんは聞いていないようでも、毎日同じタイミングで話されると、聞いていますし、そのうち期待して聞くようになってきます。

 

お子さんの状況に合わせて、このタイミングを変化させていくことも重要です。

 

親が動くことで子どもが動き出す

親が動くことで、子どもが動きだします。できることから始めていきましょう。

 

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後藤美穂

看護師・保健師

ほっといい場所ひだまり 代表理事 >>HPはこちら

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  • 本記事は2018年4月19日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。