認知の歪みの10項目とは?傾向と対策を事例で臨床心理士が解説
目次
認知の歪み①白黒思考
白黒思考とは?
ものごとを白か黒かで考え、グレーを認めない。完璧でなければ納得できない。極端な完璧主義の思考パターン。
少しでも満足できないと、「これは失敗だ」「自分はダメだ」と判断し、自信を失いやすい。
白黒思考の例
テストはいつも100点でなければ納得がいかないので、すごく難しいテストで90点だった時も「最悪だ!これは失敗だ!」と落ち込んでしまいます。
1つでも失敗があれば、他が成功していたとしても、全て失敗したも同然なのだと考えてしまいます。
白黒思考の対処のヒント
完璧な人間などいません。ミスのない人間もいません。でも、それがなかなか認められないのです。
認知行動療法の認知再構成法で考え方の幅を広げたり、あえてグレーな状態に身を置き、慣れていくという方法もおすすめです。
認知の歪み②一般化のしすぎ
一般のしすぎとは?
わずかな出来事を根拠に、それが全て同じような結果になると一般化しすぎる。
良くないことがひとつでもあると、それを大きく解釈してしまう。
1度や2度起こっただけの失敗や悪い出来事を、「私はいつも失敗する」「いつも悪いことが起きる」と思いこむ思考パターン。
嫌なことが繰り返し起きているように感じ、落ち込みやすい。
一般のしすぎの例
大学に入ったら友達をたくさん作ろうと思い、勇気を奮って、日曜日に遊びに行こうと声をかけました。
その子はたまたま都合が悪くて、それを断りました。
しかし、彼は「遊びに誘ってもいつもうまくいかない。だれも僕と友達になりたくないんだ。もう友達は絶対できないんだ 」と考えました。
「いつも上手にコミュニケーションできない。みんなに嫌われるのだ」と落ち込みが強くなりました。
一般のしすぎの対処のヒント
一度断られたからといって、いつも断られるとは限りません。
また、ある人に断られても、他の人みんなから断られるとは限りません。
人を変え、行き先を変え、タイミングを変えて実際に検証してみる方法もあります。
認知の歪み③心のフィルター
心のフィルターとは?
物事の悪い面ばかりに目が行き、良い面やうまくいったことは何もないと感じる。
人の言動を悪く解釈しやすく、良い部分に気づけない思考のパターン。
悲観的な心のフィルターを通して自分や世の中を見てしまうと、何事も悲観的に見えてしまうため、気分が落ち込みやすい。
心のフィルターの例
友だちとケンカをしたAさんは、「今までの人生の中で、友だちといい思い出なんて一つも無い」と考えました。
実際は、友だちとゲームして楽しかったことも、カフェでお茶して盛り上がったこともありました。
しかし、心のフィルターで見えなり、ケンカした嫌な思い出だけに目が行きます。
心のフィルターの対処のヒント
生きていれば良いこともあります。
しかし“心のフィルター” は良いことを全て遮断してしまい、悪いことばかりを思い出します。
日頃から「プチ良いこと」を見つけて、メモする癖をつけるのもおすすめです。
認知の歪み④マイナス化思考
マイナス化思考とは?
なんでもないことや良い出来事を悪い出来事にすり替えてしまう。
よいことを無視するだけではなく、正反対の悪いことに替えてしまう。
良いことを良いことと考えられなくしたり、良いことを悪いことに置き換えてしまう思考パターン。
マイナス化思考の例
彼氏からLINEの返事が遅いときに、「わたしのことを嫌いだから連絡してこない」と考えてしまう。
返事が早いときもあるし、もちろん自分のことを好きだから付き合っているはずなのに、私を嫌っていると悪い方に置き換えてしまう。
マイナス化思考の対処のヒント
すべてが悪いように思えるけど、それをすぐに切り替えるのはなかなか難しいです。
状況を客観的に見る練習のために、頭の中で考えず、紙などに書き出することをおすすめします。
認知の歪み⑤結論の飛躍
結論の飛躍とは?
根拠もないのに、悲観的な思い込みを信じ、悲観的な結論に飛びついてしまう。
ちょっとでも悪い面が見えたり、違和感があると早合点して悪い結論を出す。
また、良くない結果を先読みしたり、人の心を読みすぎるため、不安になったり、気持ちが不安定になりやすい。
結論の飛躍の例
転勤となったAさんは、新しい部署で新しい仕事を担当します。
まだ新しい仕事を始めていないのに、
「どうせ仕事は覚えられないだろう」
「みんなから仕事ができないやつと思われるだろう」
と根拠もないのに、未来を先に読みして不安が強くなってしまいました。
結論の飛躍の対処のヒント
未来や人の心を100%読める人はいません。
その思考に対して根拠を探してみたり、事実なのか想像なのか仕分けしてみる方法もおすすめです。
認知の歪み⑥拡大解釈(破滅化)と過小評価
拡大解釈(破滅化)と過小評価とは?
自分の失敗や短所を現実より大げさに捉え、成功体験や長所は「こんなことできて当たり前」と過小評価する。
自分の失敗や悪いところを必要以上に大きく、自分の成功や良いところを極端に小さく考える思考パターン。
また、自分には厳しく一方、他人には寛容な場合もある。
拡大解釈(破滅化)と過小評価の例
電話対応が苦手な事務職のAさんは誰よりもパソコンが得意。
エクセルで難しい関数だって使えます。
しかし、エクセルなんて誰でもできるし、電話対応がうまく出来ない自分は事務職に向いていないと日々落ち込んでいます。
拡大解釈(破滅化)と過小評価の対処のヒント
自分の長所と短所を書き出してみるのもおすすめです。
あえて長所の方を多めに書き出すのがポイントです。
どうしても自分でうまく考えられない時は、家族や友人に長所を聞いてみても良いと思います。
認知の歪み⑦感情的決め付け
感情的決め付けとは?
物事を感情を根拠にして判断してしまう思考パターン。
落ち込んでいたり、憂うつな気分だと「自分にはもう何もできない」と感じ、不安が強くなると「きっと失敗する」と思い込んでしまう。
感情的決め付けの例
漠然とした不安感を抱えるAさんは、明日の試験が気がかりで仕方ありません。
「きっと試験に落ちてしまう」そんな考えが頭にこびりついて離れないのです。
しかし、模擬試験では好成績でしたし、いつも力を発揮すれば受かるような試験です。
感情的決め付けの対処のヒント
物事を判断する時に、その根拠を探してみます。
そこで客観的な根拠が少ない場合は、感情を根拠にして判断しているかもしれません。
認知の歪み⑧すべき思考
すべき思考とは?
自分や他人に対して、「~すべき」「~でなければならない」というルールを作り、ルールからそれることは許せない思考パターン。
自分にも他人にも厳しくなり、ルールから少しでも外れそうになると、怒りや落ち込みなどネガティブな感情を強く感じる。
すべき思考の例
Aさんはたくさんの「べき思考」を持っています。
自分に対しては、「人と接するときは笑顔でなければいけない」というルールがあるので、どんなに体調が悪くても無理をして笑顔を作ってしまいます。
また、上司に対しては「部下の体調を管理すべき」と考えます。
体調が悪い自分を気遣ってくれない上司にイライラしてしまいます。
すべき思考の対処のヒント
まずは「べき思考」に気づくことです。
そして、それを守るメリット・デメリットをそれぞれ考えることもおすすめです。
デメリットが多いルールは機能的ではなく、見直した方が良いかもしれません。
認知の歪み⑨レッテル貼り
レッテル貼りとは?
人や物事に対して極端なイメージのレッテルを貼り、それが事実かのように思い込む思考パターン。
一度貼ったレッテルはなかなか剥がせない。
レッテル貼りの例
仕事上で行き違いがあったAさんに対して「Aさんは厄介な人間だ」と気づかないうちにレッテルを貼っていました。
それ以来、Aさんと接する時は緊張して距離を取るようになりました。
レッテル貼りの対処のヒント
まず「レッテル」を貼っていないかきづくことが大切です。
自分が貼ったレッテルと反する事実はあるかなと検討したり、あえてレッテルを貼っていないかのように振るまってみることで、新たな気づきがある場合もあります。
認知の歪み⑩個人化
個人化とは?
よくないことが起こると、自分には全く関係ない出来事でも、自分の言動と関連づけて、責任や原因が自分にあると考える思考パターン。
自分と関係ない状況でも自分を責めてしまい、罪悪感や落ち込みにつながりやすい。
個人化の例
上司がイライラしている様子を見たAさんは、
「もしかしたら私が何かしたから怒っているのかも…。何かしたかな…」と心配になりました。
しかし、実際は上司は奥さんと朝にケンカしてイライラしていただけでした。
個人化の対処のヒント
上司がイライラしている原因をたくさん考えてみる方法もあります。
自分と関係していない原因を中心に考えます。うまく考えられない場合は周囲の人に聞いてみることもおすすめです。
さいごに
10項目の認知の歪みを紹介しました。
どれかに当てはまる人もいれば、すべて当てはまるという方もいたかもしれません。
認知の歪みがあると、自分自身が辛くなってしまうことや、生活が窮屈になる場合も多いかと思います。
認知の歪みには、認知行動療法の認知再構成法という技法が有効と言われています。
しかし、技法に取り組まなくても、まずは自分の思考パターンに気づくだけでも効果があります。
認知の歪みに気づき、上手に対処することで、ストレス対処にもつなげていきましょう。
【関連記事】
>>認知行動療法の効果とは?期間や効果ないケースは?臨床心理士が解説
>>認知行動療法の発達障害への効果のエビデンスとは?臨床心理士が解説
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2019年2月27日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。