死にたい気持ちがあることは受け入れてほしい
近藤
実際に自分が言われて、「これは嫌だったな」と思った言葉ってありますか?
林田さん
親戚の人が、私のことを心配して言ってくれた言葉なんですけど…。
「死ぬのだけは駄目だよ、約束してね!」と言われたのは、すごく追い込まれましたね。
症状も重くてドン底のときだったので、希望が死ぬことだけだったんです。生きることに付属することがすべて嫌で…。
林田さん
「死ぬと楽になれる」ことだけにフォーカスが当たっていたので、それを「絶対駄目だよ!約束してね!」と言われたことで、非常口がガシャン!と閉ざされたように思いました。
林田さん
死にたい気持ちがあることも、すごく勇気を出して話をしたんですよね。自分の中で、この人だったら小さいときから私のことを見ているから、受け入れてもらえるかもと期待もあったので…。
「あ、受け入れてもらえなかった」と思って、へこみましたね。
近藤
そういうときって、どんな言葉だったら嬉しいですか?「死にたい」ことを認めたら、それはそれで違う気がするんですよね…。背中を押すことになっても駄目だよなと思うし。
林田さん
背中を押す必要はないと思うんですけど、
死にたい気持ちがあることは受け入れてほしいなと思います。
「死にたいと思ってるんだ」に対して、「そっか、今死にたい気持ちなんだね、辛いね」って言ってもらえたら、気持ちも救われる気がする…。
近藤
「死にたい」気持ちは否定せずに、受け入れてほしい?
林田さん
というより、死にたい気持ちを持っている「私」を、受け入れてほしい。
近藤
なるほど…。ありのままの自分を、まずは分かってほしいということですね。
言われて嬉しかった言葉はありますか?
林田さん
恋人が、
「葛藤しているあなたも好きだ」と言ってくれたことがあって。それは嬉しかったですね。「今なにもしてない。就職もしなきゃいけない。でも体が動かない…」って頭の中がぐるぐるしているときに、そう言ってくれて…。
私のままでここにいていいのかなと思えて、救われた気持ちになりました。
中安さんから感心の声がぽつり。
「助かるよ」って言われるのは、すごく嬉しい
近藤
宇都さんはありますか?「言われて嬉しかった言葉」と、「言われて落ち込んだ言葉」。
宇都さん
ちょっと違うんですけど、言われなくて落ち込んだことはあります。
宇都さん
休職中に、会社とのやり取りって少しはするじゃないですか。人にもよると思うんですけど、僕は「最近どうですか?」ってたまに連絡がほしいタイプで。
宇都さん
休職したばかりのころは、月に1回は連絡が来ていたんです。それが、少しずつ連絡が来ない時期が伸びてきて…。最終的には、全然連絡が来なくなっちゃったんです。
宇都さん
そうですね。あのときは、「自分って、どうせ辞めると思われてるんだなぁ」「会社に必要とされていないってことだよなぁ」って思ったので…。辛かったですね。なにも言われないのも辛いのかって、初めて思いました。
近藤
確かに、自分でそう思ってしまうと、会社に復帰もしにくいですよね…。
言われて嬉しかった言葉はありますか?
宇都さん
んー、アンケート結果と被ってしまうんですけど、「やってくれて助かるよ」は、やっぱり嬉しいですね。
近藤
その言葉は、ご家族から?料理やられてるって言ってましたもんね。
宇都さん
まぁ、ちょっとずつですけど(笑)最初はキャベツの千切りだけだったのが、なにか一品になり、カレーになり、できることが増えていった感じです。
そんなときに家族から「助かるよ」って言われるのは、すごく嬉しいなと思いますね。
「生きているだけでいいんだよ」
中安さん
じゃあ、嬉しかった言葉から。嬉しかった言葉も、落ち込んだ言葉も、どちらも家族から言われたんですけど…。
私、希死念慮が強かったときに、家族の前で泣きわめいてしまった時期があるんです。日中は母と一緒にいることが多かったので、何度も「もう死にたい!」と言ってしまって…。
そんなときに、母が「生きていてくれるだけでいいんだよ」って言ってくれたんです。それを聞いたときに、「私って、生きているだけでいいのか…」と思うことができて。その言葉は、本当に勇気をもらえました。
中安さん
希死念慮が出てるときって、どこかで「生きてちゃいけない」と思っていたんです。
「自分なんて生きる価値がない」と思っていて…。
でも、「生きているだけでいいんだよ」と言われると、その気持ちが救われる感じがして。とても嬉しかったですね。
近藤
でも、落ち込んだ言葉も、ご家族に言われたんですよね?
中安さん
そうです。それは、姉に言われた言葉ですね。姉はもう実家を出ているので、私の症状がひどいときを知らないんです。
だから、会うと「あんた、全然働けんじゃん!」「いつ就活するの?早く働きなよ!」「将来どうするつもり?」って言われてしまって…。言い方も、すっごくきついんですよ。
中安さん
私の症状を知らないので、言う気持ちも分かるんですけどね…。でも、本当にRemeさんに感謝したいことがあって。
中安さん
姉が、Remeさんに掲載された私のインタビュー記事を読んでくれたんです。その後で、初めて姉から「応援してるよ」とねぎらいの言葉をかけてもらって。
近藤
え、僕も泣きそうです…。頑張って編集してよかった…。
「泣きそう…」と言いながらもまったく表情に出ない近藤さん。真顔です。
中安さん
姉が理解してくれるきっかけをくださって、本当に感謝です。ありがとうございます。
近藤
いやいやいや、とんでもないです。嬉しいご報告ありがとうございます!
「言われて嬉しい言葉」を言ってもらうために
近藤
嬉しい言葉って、待っても言ってもらえるか分からないじゃないですか。嬉しい言葉をもらうために、意識していることってありますか?
林田さん
私は、褒めてもらうためにアピールをしますね。
「アピールってどうやるの?」
林田さん
自分のできたことを周りにアピールしまくるんです。例えば、「公園まで散歩できたよ!ドヤ!」ってやると、周りも褒めざるを得ないじゃないですか。
林田さん
あとは、「今日は早起きできた!えらい!」って自分で言っちゃう。そうすると、周りも「そうだ、えらい!」って続いてくれるから。
近藤
え、それって、言う人は決めてるんですか?誰にでもしてる?
林田さん
いや、もちろん「応じてくれそうな人」にしかやらないですよ!家族とか、恋人とか。
近藤
なるほど、それいいですね!気持ちも上げてもらえそう。
宇都さんは、なにかあります?
宇都さん
日常で使う基本的な挨拶は、言うようにしてますね。
「行ってきます」「行ってらっしゃい」とか、
「いただきます」「ごちそうさま」とか。
自分が面倒くさがらず言うようになったら、家の中で嬉しい言葉が出てくることも、多くなってきた気がします。
宇都さん
そうですね。今までは、「ごちそうさまでした」の「した」しか言わなかったりとか。
近藤
まぁ、確かにありますよね(笑)「っしたー」みたいな。
宇都さん
前までは、投げやりな感じだったんです(笑)
しっかり言うようにしたら、家の中の雰囲気も変わった気がします。
近藤
へぇ~。挨拶だけでも、変わることってあるんですね。中安さんはどうですか?
中安さん
そうですね…。ツイッターをしていると、PMDD(月経前不快気分障害)のことで質問をもらうこともあるんですけど…。でも、専門家じゃないから、はっきりとした答えをあげられない場合も多いんです。
近藤
まぁ、中安さんは病院の先生じゃないんですもんね。
中安さん
そうなんですよ。でも、
せっかく聞いてくれているんだから、なにか返したいじゃないですか。だから、「私の場合は」「私の経験上は」という言葉を付けて、
自分が言える範囲でお答えするようにしてるんです。
そうすると、「ありがとう!活動も応援してます!」と言ってくれる方もいて…。
中安さん
「ありがとう」って、やっぱり嬉しいんですよね。見返りを求めているわけではないんですけど、「ありがとう」と言ってもらえると、私の励みにもなるので…。自分にできる範囲のことは、していきたいなと思っています。
「言われて落ち込む言葉」を言われたときの対処法
近藤
「言われて落ち込む言葉」を、相手に言わないようにしてもらうのって、すごく難しいと思うんです。よかれと思って言っている場合もあると思うし。だから、言われるのはどうしようもないとして…。
自分にとって嫌なことを言われてしまったときに、どう対処すればいいと思います?
中安さん
私は、
価値観は人それぞれっていうのを、すごく意識しています。価値観がまったく同じ人なんていないし、考え方も人によって違う。
だから、傷つくことを言われたとしても、「あぁ、そういう風な考え方をする人もいるんだなぁ」と思うようにしてます。
中安さん
自分を否定されているわけではなくて、価値観が違う人の意見を聞いている感じですね。「自分と違う考え方の人もいるよなぁ」と思うと、いろいろ受け流せます。
近藤
それって、傷つくことを言われるたびに、そういう思考になるように癖付けしたってことですか?
中安さん
そうですね。最初は、やっぱり傷ついていたと思います。今でも、瞬間的には傷つくんですよ。少しずつ、一歩離れたところから相手を見ることができるようになりました。
中安さん
そうです。「この人って、所詮他人だよなぁ」って。悪い意味じゃなくて、自分とは違う人だって思うようにするんです。そう思うことで、「まぁいいか」って流せるようになりました。
宇都さん
僕も、中安さんと近い考え方です。「この人はそう思ってるんだな。この人の中では、それが正しいんだな」って、自分を守るために、相手にレッテルを貼るイメージ。
宇都さん
相手に、自分の意見を言うわけではないんです。
自分の中だけで、相手にレッテルを貼ったり、逆に剥がしたり…。
それを自由自在にできるようになったとき、「自分を守れるようになったな」と感じましたね。
近藤
レッテルを貼るのは分かるんですけど、剥がすっていうのは…?
宇都さん
もう会わない人だったらレッテルを付けたままでもいいんですけど、これからも付き合っていかなきゃいけない人だと、
レッテルを貼ったままだと居心地が悪くなることもあるんです。
そういうときは、一度貼ったレッテルを剥がして、人と人として接するようにしてみる。
宇都さん
それで、また自分が傷つくことを言われたら、「どうしてこんなこと言うんだろ?そうか、こういう人だからだ」って感じで、そのときだけレッテルをまた張り付けるんです。レッテルを貼ったり剥がしたりを、自分の中で繰り返す感じですね。
近藤
すごいですね、いろいろ客観視している感じ。確かに、言葉を100%で受け止めてしまうより、自分を守れそうな気がします。
林田さんはどうですか?落ち込んでしまうことを言われたとき、どう対処します?
林田さん
…私は、傷つくことを言ってきた相手がちょっとだけ不幸になる姿を想像します。
林田さん
本当に不幸にするわけにはいかないから、想像するんですよ!そうすることで、まず溜飲を下げるんです。
林田さんの「不幸論」にウケる宇都さんと中安さん。
林田さん
あとは、気持ちをすべて文字にしますね。「相手にこう言われた」「でも私はこうしてほしかった」「でも結果的にはこうなった」「私はここに腹が立っている」って、すべてを文章で整理していくんです。
林田さん
相手を不幸にすることで怒りを落ち着かせて、さらに文章にすることで、物事を理屈で考えられるようになるんですよね。
近藤
理屈で考えると、どんな風に気持ちが楽になるんですか?
林田さん
感情を抜きにして考えることで、冷静になれるんです。「精神疾患に対する知識がないから、私に対して心無い言葉を吐いてしまったんだ」と分かったりとか。
林田さん
冷静になれば、相手が不幸になる想像をずっとしなくてもよくなるから(笑)
「本当に相手になにかするわけではないですよ?頭の中だけです」
近藤
確かに、想像するだけだったらアリなのかも…(笑)
林田さん
想像だけだったら、誰を傷つけることもないから。頭の中だけだったら、私の自由ですもんね。
「言われて嬉しかった言葉」でビンゴを作ってみた
近藤
最後にですね、皆さんでビンゴを作りたいなと思って。
近藤
ピンと来ないですよね(笑)今回は
「言われて嬉しかった言葉」を皆さんで書き出して、ビンゴにしようかなと。見ただけで嬉しくなるような、そんなものを作れたら。
書く言葉は、アンケート結果にあるものでも、自分が言われて嬉しかったことでも大丈夫です。それぞれ、ベスト3を出す感じでどうでしょう。
林田さん
書いた言葉が被ったときは、もう一回やります?
近藤
まぁ、なんとなく、誰がなにを書くかは想像できると思うので…。そこは忖度していただいて(笑)
それぞれ、3つずつ「言われて嬉しかった言葉」を書いていただきました。
近藤
では、書いていただいたものを見ていきましょうか。せっかく付箋に書いたので、机に貼って、ビンゴみたいにしましょう。
ものすごくビンゴにこだわる近藤さん。付箋をぺたぺた机に貼っていきます。
近藤
いいですね!意外と、皆さんの書いたものが被ってない。
近藤
簡単にはビンゴにならないように、配置だけ変えよう…。
完成したビンゴがこちら。
①助かったよ、ありがとう!
②さすがだね!
③〇〇が上手だね!(①〜③宇都さん)
④今のままでいいんだよ
⑤あせらないで大丈夫
⑥(病気のことを)話してくれてありがとう(④〜⑥中安さん)
⑦葛藤している君も好きだよ
⑧ゆっくりでいいんだよ
⑨人って自分が思うほど、他人のこと気にしてないよ(⑦〜⑨林田さん)
近藤
おぉ…できましたね…。「話してくれてありがとう」って、いいですね!
中安さん
この前、実際に言われて。嬉しかったですね。
近藤
「人って自分が思うほど、他人のこと気にしてないよ」っていうのは、嬉しいんですか…?林田さんのやつですね。
林田さん
この言葉、私は嬉しいんですよね…。こう言ってもらえたからこそ、「昨日お風呂入れてないけど、ちょっと外に出てみようかな」って思えたりとか。
近藤
なるほど!そういう視点もあるんですね。このビンゴ、どこかで活用できたらいいな…。改善の余地ありですけど(笑)
今回は、お集まりいただきありがとうございました。今後も座談会はやっていきたいと思っているので、ぜひよろしくお願いします!
最後に記念写真して、解散しましょう。
(左から)中安さん、林田さん、宇都さん、進行役の近藤さん。あっという間の2時間でした。座談会のご参加ありがとうございました!
今回の座談会のテーマは、「言われて嬉しかった言葉」「言われて落ち込んだ言葉」。3人の記憶に残る言葉たちは、第三者の立場で聞いていても嬉しく、反対に悲しくもなりました。言葉の力はとても大きいです。だからこそ、自分を傷つける言葉から身を守る方法を、一度考えてみてもいいのかもしれません。
「言われて嬉しかった言葉ビンゴ」は、ぜひ試しに作っていただきたいなと思います。自分が言ってほしい言葉を書いて、誰かに渡すもよし!今までに言われた言葉を、思い出として残しておくのもよし!
ビンゴとして使わなくても、Remeはなにも言いません。時間があるときの暇つぶしにでも、いつか考えてみてくださいね。