自動思考が止まらない…コントロールする4つのコツとは?臨床心理士が解説

2019.02.11公開 2019.05.16更新

自動思考が止まらない3つの理由

自動思考は止めることができない

人は常に何かを考えているものです。自動思考は、朝から晩まで私たちの頭の中を飛び回っています。

「お腹すいた」

「ラッキー!」

「あーやだな」

といった、自動思考は止めることができません。これは仕方がないことです。

 

問題となるのは、厄介な自動思考によって、気持ちや行動がネガティブな影響を受けて、自分自身が苦しくなっているとき、辛く感じている時です。

ネガティブな自動思考でネガティブな気持ちになり、ネガティブな行動をとることで、ネガティブな考えが浮かび…

と悪循環に陥っている場合です。

 

反すう思考に陥っている

反する思考は、ネガティブな思考がどんどんと連なってひどい方向にいきます。

 

反すう思考にとらわれると、ネガティブな思考の渦から抜けられなくなります。

 

マインドフルネスのスキルで反すう思考を受け流したり、反すう思考がひどくなる前に断ち切るという対処法もあります。

 

【関連記事】

>>1日15分!マインドフルネスのやり方・簡単呼吸法とは?臨床心理士が解説

 

自動思考が強すぎる場合

強すぎる自動思考の場合は、いくら仕組みが分かっても、マインドフルネスをやっても自動思考をコントロールできない場合があります。

 

自動思考を止めようと考えるのではなく、今までの厄介な自動思考ではない、別の考え方を増やしていくように視点を変えましょう。

 

例えば、認知行動療法の認知再構成法(コラム法)などの対処法があります。

 

新しい自動思考を自分でどんどんと見つけ、増やすことで、今まで感じていた強い気持ちのレベルが下がっていきます。

 

 

自動思考をコントロールする4つのポイント

自動思考をコントロールするポイントを4つご紹介します。

 

ポイントは頭の中で考えずに、紙に書き出して検討することです。外に出すことで客観的に分析することができます。

 

1.自動思考を見つける

強い感情が湧いたときに、頭の中に浮かんでいる考えやイメージに目を向けます。

 

特に、強い感情を引き起こしている自動思考に注目することが大切で、それを「ほっとな思考」と呼びます。

 

2.自動思考を検証する

次に「ほっとな自動思考」を検証していきます。

・その考えは本当なのか

・裏づける根拠があるものなのか

・それとも不確かなものなのか

といった観点で検証していきます。

 

先ほどの例ですと、「自分はいつもうまくいかない」根拠を探していきます。

 

ここでは事実のみに注目して、憶測で考えたことや思い込みは避けるようにします。

「先月も同じようにミスをした」

「先々月はあんなミスをした」

と根拠となる事実を集めます。

 

次に自動思考に対して反証していきます。

 

自動思考と矛盾する事実はあるのか探します。例えば、

「昨日はミスなく仕事を終えることができた」

「ミスどころか今までにない実績を上げた日もあった」

などが挙げられます。

 

3.バランスの良い考え方を身につける

最後にバランスの良い考え方を見つけます。

 

今までの自動思考ではない、新しい考え方(=適応的思考)です。

 

先ほどの根拠や反証を基に、どんな考え方でも良いのでブレインストーミング的にどんどんアイディアを出していきます。

 

他の考え方がうまく出来ない時は、

「同じ状況で家族や友人が悩んでいたら、何て声をかけるだろうか」

など、視点を変えて考えてみるのもおすすめです。

 

4.新しい考え方を検証する

新しい考え方を採用した場合、今までの気分に変化があったでしょうか?

 

気分に変化があって、少しでもマシになった場合は、新しい考え方は今の状況に効果があるということです。

 

もし、変化が見られない場合は、別の考え方を探したり、採用した方が良いということになります。

 

いろんな考えを採用してみて、「効果あるかな?」と実験検証するように取り組むことが大切です。

 

 

自動思考から新しい考え方へ

自動思考をすぐに変えることは難しいです。

 

たくさん練習しても強いストレス状況では、今までと同じような自動思考がぱっと浮かんでくる場合も多いです。

 

でも、自動思考と気持ちや行動の仕組みを知っていれば、今までのように過度な影響を受けることは少なくなります。

「あ、この自動思考でこんな気分になっているんだな」

と仕組みを理解し、今までの自動思考とは違う考え方を後からどんどんと追加していきます。

 

「自分はいつもうまくいかない」と浮かんだ後に「自動思考だ!」と気づき、

「そんなこと言いながら、うまくいく場合だってあるんだな」

「途中でなんとかなることもある」

「なるようになるよ」

「しょうがないな」

など、いろんな新しい考えで埋めていきます。

 

そうすると、昔はあれだけ大きな落ち込みがやってきていたのに、今は少しの落ち込みがやってくるだけです。

 

こうやって少しずつ、自動思考をコントロールできるようになってきます。

 

少しずつ練習することで、はじめに浮かぶ自動思考も変化していく可能性もあります。

 

 

さいごに

今回は自動思考が止まらないと悩む方に自動思考をコントロールする方法をご紹介しました。

 

自分でやってみて難しいなと感じる場合は、カウンセラーや主治医の先生などに相談するのもおすすめです。

 

【関連記事】

>>認知行動療法の効果とは?期間や効果ないケースは?臨床心理士が解説

>>認知行動療法の発達障害への効果のエビデンスとは?臨床心理士が解説

>>認知行動療法を自分でやる7つの方法!ノート活用術を臨床心理士が解説

>>認知の歪みの10項目とは?傾向と対策を事例で臨床心理士が解説

 

【参考】

ADHD治療システムの中の薬物療法,その意義と限界(齊藤万比古 国立国際医療センター国府台病院)

エビデンスにもとづいた発達障害支援 : 応用行動分析学の貢献(<特集>エビデンスに基づいた発達障害支援の最先端)山本 淳一, 澁谷 尚樹

・大野裕『こころが晴れるノート』

伊藤絵美『認知行動療法入門講義』

・伊藤絵美『事例で学ぶ認知行動療法』

・竹田伸也『認知療法トレーニングブック』

・福井至『心がすっと軽くなる認知行動療法ノート』

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石上友梨

臨床心理士

大学・大学院と心理学を学び警視庁に入庁。5万人の職員のメンタルヘルスを管理し、カウンセリングや心理検査、メンタルヘルス講義、拳銃選手のメンタルトレーニングなど幅広く活動。6年目で退職し、フリーランスに。発達障害を支援する活動に力を入れている。‬>>HPはこちら

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年2月11日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。