仕事で褒める3つの効果!自分を褒める効果や方法は?心理学研究から解説
褒めることの3つの心理学的効果
①動機付け・衛生要因理論
仕事上で部下や同僚にやる気を出させる方法としては、褒めるほかにも、
・職場環境の改善
・物理的・金銭的なインセンティブを与える
など様々な手段があります。
たしかに、褒められるよりは仕事に見合ったポストや報酬を貰える方が良いと考える人もいるでしょう。
しかし、金銭的物理的なインセンティブを与えるという手段は、社員の不満を取り除く効果はあるものの、それ以上にやる気を出させる効果は乏しいようです。
一方で、「褒める」「仕事ぶりを認める(評価する)」といった行為はモチベーションとなり、「もっと頑張ろう」という意欲につながるものとされています。
心理学的ではこれを「動機付け要因」と呼びます。
(物理的インセンティブは衛生要因と呼ばれています。)
環境面の整備もさることながら、上司部下にかぎらずお互いが承認しあい「褒めあう」ことで、能力を発揮しやすい職場づくりにつながります。
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②教師期待効果(ピグマリオン効果)
教師が児童・生徒に期待をかけて接すると、そうでない接し方をするよりも、児童・生徒の成績が向上する、という研究データがあります。
これを「教師期待効果」といい、ビジネスの場においてもよく使われています。
上司が部下に対して期待をかけて接することで、部下の能力やパフォーマンスが向上する
というものですが、期待していることを具体的に表現するためには言葉に出して「褒める」ことも大切です。
逆に、「期待されていない」と感じるとパフォーマンスが下がってしまうことも実証されています。
他人を注意する場合には「頻度」「言葉選び」に気を付けなければなりません。
部下や同僚の仕事を常に気にかけ叱咤激励しながら、時には褒めてあげる事が、能力を発揮しやすい環境づくりに繋がるのではないでしょうか。
③アンダーマイニング効果・エンハンシング効果
親の喜ぶ顔を見たくて、自主的に庭の掃除をしていた子供たちに、ある時から報酬としてお小遣いをあげたとします。
すると、庭の掃除の目的が変わってしまい、お小遣いをもらえなければ掃除をしないようになった、という話があります。
これはアンダーマイニング効果と言って、他の動機を与えることで自発的な動機が失われるというものです。
これは仕事上においても同様です。
自発的に目標を設定して取り組んでいる社員も、他から二次的に与えられた目的(インセンティブなど)があれば、自発的な動機が失われていくとされています。
しかし、二次的に与えられた目的が、目標に対する行動を加速させるというプラスの側面も確かにあります。
これを、エンハンシング効果と言い、特に「褒める」「表彰する」といった行為に対して効果が実証されています。
ビジネスの場では、
自発的な目標設定+「褒める」
という行為をうまく活用して、社員のやる気アップにつなげると良いのではないでしょうか?
自分を自分で褒める効果と方法は?
自己肯定感を高める
自分への評価が低ければ自分の仕事に対して満足感が得られず、「他者の(社会的)評価」「他者との比較」のみが仕事の指標となり、ついつい他人に対して攻撃的になってしまうこともあります。
これを自己肯定感が低い状態と言います。
しかし、「自己肯定感が高いか低いか」というものは自分で把握することは難しいことです。
「自分は仕事が出来る」と思うことが自己肯定感を高いということではありません。
むしろ、仕事が出来ると思っている人でも、目標やライバルの影におびえ、他者を攻撃しながら自我を保っている人も大勢います。
では、どうすれば自己肯定感が高まるのでしょうか?
色々な方法があると思いますが、「自分を客観的に把握する」という方法が効果的です。
「客観的に」といっても売上高や達成率などの数字で評価するのではなく、
・自分の良い点を把握し、
・より良くするためにはどのようなところを改善していけばよいのか
を考える事です。
自分の良い点を把握するために、まず「自分を褒めてみる」ことをお薦めします。
といっても、トータルで「自分は良い社員だ。仕事も出来る」と褒めるのではなく、
一つ一つのプロセス(行動)に対して、プラス評価できる項目を出来るだけ挙げていく
という手法です。
こうすることで、自分の行動を細かく振り返る事が出来、成功体験を得られた場合はその再現性も高まります。
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>>自己肯定感を高めるには?手軽な方法10選を臨床心理士が解説
褒めることのマイナス点と対処法
褒めることは様々なプラスの効果を持っていますが、マイナスの一面もあります。
アドラー心理学では、
「褒める」ことは依存に繋がる
と徹底的に批判されています。
確かに、褒める事を一種の報酬ととらえると、報酬を与えることで自発的な動機が失われてしまうことは、前述のアンダーマイニング効果でも実証されています。
依存に繋がらないように褒めるには、効果的なシーンと方法があります。
成果だけでなく行動そのものを褒める
一つ目は、成果だけではなく行動そのものを評価し、「褒める」ことです。
ビジネスでは成果に対して評価することはとても重要ですが、プロセスを観察して評価してあげる事で行動を繰り返そうとする意欲が生じます。
褒める頻度はほどほどに
二つ目は、「褒める」頻度を考える事です。
行動そのものを褒めるといっても、毎日毎日同じことを褒めていては褒められる方も慣れてしまい、ありがたみがなくなってしまいます。
効果的に褒める為には、他の叱咤激励も含めながら、社員を正当に客観的に評価することが重要です。
さいごに
「褒める」とは人間関係を形成する上で、仕事上ではパフォーマンスを上げるためには重要な要素です。
と、同時に難しい側面もあるということをご理解いただけたかと思います。
冒頭で述べた、山本五十六の格言ですが、実は下記のように続きます。
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば人は育たず。 やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば人は実らず。」
部下や同僚の行動を仕事上で単純に褒めるだけではなく、
・双方向のコミュニケーションを持ち、
・人間として承認し、
・お互いに感謝しあう関係
こそが人間関係の本質であり、 「褒める」効果も最大限になるのではないか、と私は考えています。
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- 本記事は2019年5月17日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。