いじめの経験で自尊心が低い…心を回復させる3ステップとは?臨床心理士が解説

2020.09.02公開 2020.09.04更新

【2】自分の良い所を知って認める

自分をいたわる準備ができたら、自分について考えてみましょう。

 

きっとあなたは自分のダメな所・悪い所はよく知っていますよね。

 

では、自分の良い所・好きな所はどうですか?

 

せっかくなので少し考えてみてほしいです。

 

自分の悪い所と良い所の両方を理解することは、自尊心を育むためにとても重要なことです。

 

自尊心が低い人は、自分について現実よりも悪い方に偏った見方をしがちです。

 

ですから自分の良い所に注目することは、自分に対する偏った認識をフラットにすることに繋がります。

 

おすすめは、自分の良い所・好きな所・出来たことを10個紙に書き出すことです。

 

その時どうしてもダメな所・悪い所が思い浮かんでしまったらそれは別の紙に書いてください。

 

“自分に良い所なんて1つもない…”とお困りでしたら、まず1つ目にこれを書きましょう。

・コラムを読んで自尊心について知ろうとした。

これは間違いなくあなたが出来たことです。

 

“自分の悪い所ばかり思いつく…”という方は、これを書きましょう。

・自分の短所を理解している。

自分の短所を自覚できるのは素晴らしい能力です。

 

このように、既に出来ていることは意外と見逃しやすいですから、自分について慎重に振り返ってみてください。

 

出来ていることがきっとたくさんあるはずです。

 

例えば、今日一日を振り返ってみてください。

・朝寝坊せずに起きられた

・着替えや化粧で身なりを整えられた

・家族に挨拶できた

・昼食を準備できた

・掃除機をかけることができた

・ご飯を残さず食べられた

・人の話を聞けた

・疲れた時に休憩できた ・・・

些細なことだと思っても”出来た”事実には変わりありません。

 

自信を持って、リストに書きましょう。

 

自分で良い所・好きな所・出来たことが思い付かない時は、過去に褒められたことを思い出したり、家族や友人に聞いてみるのも効果的です。

 

10個のリストができたら、それをお守りとして持っておきましょう。

 

日々出来たことや新たに発見した良い所・好きな所を書き加えていくのもおすすめです。

 

きっとあなたの力になることと思います。

 

【3】いじめの経験について振り返ってみる

ステップ1とステップ2は上手く行ったものの、

「やっぱり過去のいじめ経験が心に引っかかる」

という方はステップ3に取り組んでみましょう。

 

もしここまでで嫌な気持ちが解消されていたり、自分に肯定的な気持ちが出て、以前よりいじめのことを気にしなくなった場合は、ステップ3に取り組む必要はありません。

 

また、

自分について否定的な言葉ばかりが浮かんでしまう…

 

ネガティブな気持ちが続いている…

といった場合は、まだステップ3を行うには負担が大きすぎると思われます。

 

その時はステップ1,2に戻ったり、専門家に相談してみることをおすすめします。

 

いじめのような大きく心が傷つく体験にまつわる認識は、

 

「全部、自分が悪かったんだ」

「何もかも、アイツのせいだ」

 

などと、思考が極端になりやすいです。

 

そのため、この認識を現実に即したものに調整していきます。

 

自尊心が低い人は自分を見る目が厳しくなりやすいです。

 

なので、この方法をおすすめします。

 

まず、紙やノートとペンを用意してください。

【1】 いじめの体験について、何が起こったのか、そして自分はどう感じたか書き出します。

【2】 1で書き出した出来事が自分ではなく大切な友人や家族に起こったと仮定します。

 

その人が1の出来事を経験したらどんな気持ちになるだろうかと想像して彼らの気持ちを書き出します。

【3】2で想像した人の苦痛を取り除くためにやさしく励ます手紙を書いてみましょう。

 

大切な人が2のような気持ちであることを受け止め、辛い経験に理解を示し、自分を責めなくても良いのだと伝える手紙を書いてあげてください。

【4】もう一度自分のいじめの経験について、何が起こったのか、自分はどう感じたのか書いてみましょう。

 

1の時とは違い、ネガティブな憶測や自分を批判することは避けて、なるべく公平に客観的に記述してみてください。

これをおこなってみると、いじめ経験の認識が少し変わったり、自分を責める気持ちが和らいだりすると思います。

 

辛い時は無理して取り組まず、休んでくださいね。

 

さいごに

今回は、いじめの経験から低くなってしまった自尊心について、臨床心理士に解説していただきました。

 

今回ご紹介した方法を通して、自分を責める気持ちや、自分を批判する気持ちが弱まり、自分を応援したり、認められるきっかけになりますと幸いです。

 

自分の力だけでは回復するのが難しい時には、周りの人を頼ったり、専門家に相談することも頭に置いておいてくださいね。

 

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【参考・引用文献リスト】

兄井彰・須﨑康臣・横山正幸 (2013).子どもの自尊感情と生活のあり方との関係についての研究.生活体験学習研究,13,43-50

遠藤由美 (2000).「自尊感情」を関係性からとらえ直す.実験社会心理学研究,39(2),150-167

池田 寛 (2000) 「学力と自己概念」 解放出版社 PP31-32

井上清子 (2015).両親・教師からの褒められ叱られ経験と自尊感情の関連について.生活科学研究,37,97-105

高知県教育センター (2005).子どもの自尊感情をはぐくむ学校についての一考察

内閣府 (2019).我が国と諸外国の若者の意識に関する調査

小塩真司・脇田貴文・岡田涼・並川努・茂垣まどか (2016).日本における自尊感情の時間横断的メタ分析:得られた知見とそこから示唆されること.発達心理学研究,27(4),299-311

横山正幸 (2010).子どもの自尊感情と体験の関係について.生活体験学習研究,10,53-62

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山崎日菜乃

臨床心理士/公認心理師

心理系大学院在学中よりカウンセリング、フリースクールや児童養護施設の訪問、心理検査業務などを経験。夢だった中学教諭としての就職が決まるもうつ病を発症し断念。大学院修了後、うつ病治療に取り組みつつ臨床心理士と公認心理師の資格を取得。うつ病経験者の心理士としてお役に立てることを模索中

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2020年9月2日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。