【臨床心理士ワンポイント解説】心理学でのアサーションとは?3つの具体例でご紹介

2021.07.31公開 2021.10.24更新

コミュニケーションスキルの一つとして最近聞かれる「アサーション」。

 

心理学におけるアサーションとはどんなものなのか、3つほどの具体例などを挙げて臨床心理士にワンポイント解説していただきました。

 

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心理学におけるアサーションとは?

assertionとは本来、「断定」とか「主張」といった意味を持つ英単語ですが、心理学におけるアサーションとは、

コミュニケーション場面で自分の考えを適切に表現すること

を指します。

 

もう少し詳しく言うと、

「自分の意見・考え・気持ち・相手への希望などを、なるべく率直に正確に、しかも適切な方法で表現すること」

とも言えます。

 

この「適切な」という言葉には、

「自分を大切にすると同時に、相手のことも大切にしよう」

とする意味も込められており、相手と自分とをお互いに尊重しようという考えに基づいています。

 

では、アサーションとは何か、具体的な場面を想定して考えてみましょう。

 

アサーション事例①

【列に並んでいたら後から来た人に順番を抜かされた、相手に並びなおしてほしい】

誰でもムッとしてしまうような場面ですよね。

 

この時に「後ろに並べ!」とか「勝手なことをするな!」といった感じで怒りをそのままぶつけてしまうのはアサーションができているとは言えません。

 

例えば、「すみません、私も並んでいるので後ろに並びなおしてもらえますか?」と穏やかに提案できると良さそうですね。

 

アサーション事例②

【禁煙場所でタバコを吸っている人に喫煙をやめるよう言いたい】

何となく注意しづらくも感じられる場面です。

 

この時、「ここは禁煙ですので、タバコは控えてください」と言うのは率直で正直な発話であり、アサーティブなコミュニケーションです。

 

しかし、「申し訳ないのですが、ここは禁煙ですのでおタバコはご遠慮いただきますようお願いします」と伝えるのは、間接的で必要以上にへりくだるよう抑えられた表現であり、アサーションができているとは言えません

 

アサーション事例③

【注文したものと違う料理がきたことを店員に伝えたい】

最後に、レストランで注文したものと違う料理がきた場面を想像してみます。

 

このとき店員さんに「私が注文したものとは違うので、オーダーを取り直してください」とそのまま伝えられれば、アサーションが出来ていると言えるでしょう。

 

しかし、間違いそのものを言い出せなかったり、店員さんを呼んで「あの、これ…」とはっきり発言せず意図を相手にくみ取ってもらおうとしたりする受動的な態度は、アサーションとは言えません。

 

上の例でも示したように、アサーションでは、

攻撃的になるなどの適切でないコミュニケーションを避けることに加えて、必要以上に謙遜したり気持ちを抑えたりすることなく、自分自身に正直である

といったことも大切な要素の一つです。

 

また、アサーションとアサーティブとを厳密に区別するのは難しく「同じ意味の単語だ」とする人もいますが、強いて言うならば、

・アサーション=自他を大切にして尊重するコミュニケーション形態

・アサーティブ=アサーションを適切に行えている状態

という考え方もできるかもしれません。

 

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【参考】

・園田雅代(2002)「概説:アサーション・トレーニング」、創価大学教育学会教育学部論集(52)

・野末武義、内田利広ら(2019)「『心の教育』を考える-家族の理解とその支援-(特集Ⅰ:第21回リカレント教育講座シンポジウム抄録)」、京都大学大学院教育学研究科付属臨床教育実践研究センター紀要

・三田村 仰、松見 惇子(2010)「相互作用としての機能的アサーション」、パーソナリティ研究 第18巻 第3号

・特定非営利活動法人アサーティブジャパン「人間関係のしんどさに悩んでいる方へ」

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鈴木さやか

臨床心理士・公認心理師

心理系大学院修士課程を修了後、臨床心理士資格を取得。福祉分野のケースワーカーとして従事したのち、公的機関でテスター兼カウンセラーとして勤務。子どもの問題(不登校、非行、発達障害等)や労働、夫婦問題をはじめ、勤労者、主婦、学生など幅広い立場への支援を行っている。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2021年7月31日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。