働き盛りのうつを防ぐ…社員をうつにしないためには?事例で臨床心理士が解説
メランコリー親和型とは?
先ほども述べたように、新型うつと対比して、従来型のうつ病を「メランコリー親和型うつ病」といいます。
それでは、一体「メランコリー親和型」というのは何でしょうか。
これは「メランコリー親和型性格傾向」を指しています。
働き盛りの方の中には、一定数いる性格傾向だといわれています。
読者の皆さんの中には、星占いが好きな方はいらっしゃるでしょうか?
「ふたご座だったら自由な性格」や「てんびん座は知的」など、生まれた星座によって、様々な性格が特徴付けられています。
それと同じように、心理学の中でも、一定の性格傾向を持つ人をグループわけしています。
星占いと違うのは、ふたご座だから自由気ままという訳ではなく、自由気ままだから、ふたご座というわけ方をしたところが違ってきます。
メランコリー親和型の性格傾向とは?
一般的には、自分の中のルールがはっきりしており「~しなければならない」などの強い責任感を持ったタイプの人です。
例えば、「提出物は必ず期日通りにだす」という強いルールがあり、どんなに忙しくとも、リスケジュールなどせず「必ず期日までにやらねばならない」と思い、当初の予定を変えない性格の方です。
このように、自分のルールを強く守ろうとする性格をメランコリー親和型性格傾向と言います。
この性格傾向が、うつ病とは深い関係にあると言われています。
【事例】会社での現れ方
それでは、会社の中では、どのようにうつ病が現れるのか事例を通して見てみましょう。
今から挙げる事例は、専門書と臨床経験を元に筆者が作り上げた事例であり、実際の事例とは何の関係もありません。
この春、課長へと昇進して以前よりも多くの部下と仕事をするようになりました。
Aさんは「部下の相談にはどんなに忙しくても時間をとる」という信念を持っており、部下たちにも慕われていました。
また、常にみんなのお手本になるような人間でいなければならないと強く思っていました。
12月は繁忙期。タダでさえ忙しいのにも関わらず、部下が仕事で大きな失敗をしてしまいます。
仕事のフォローに加え、部下のメンタル面のフォローなども行い、Aさんは多忙の極みでした。
責任感が強いAさんは、睡眠時間を削ってすべての仕事をこなしていました。
しかし、そんな多忙な生活を送っているうちにAさんに些細なミスが目立つようになり、ついに取引先にも迷惑をかける大きなミスをしてしまいました。
Aさんは次第に「自分はだめだ、価値のない人間だ」という言葉が頭の中をぐるぐると回るようになります。
ただ、気分の落ち込みだけで会社を休むという選択肢はAさんにはありませんでした。
そのような真面目な性格もあり、Aさんはがんばって出社し続けました。
しかし、小さなミスは重なり、部下にもイライラされ、部長にも小言を言われるようになり、Aさんの中の「自分は価値のない人間だ」という思いはますます強くなっていきます。
食欲もなくなり、寝る時はミスのことばかり考えてしまいほとんど眠ることができません。
次第に、Aさんの体重は落ちていき、目の下は隈で黒ずんでいきます。
そして、とうとうAさんは布団から起き上がることができずに無断欠勤をしてしまいました…。
このように、バリバリ働き、みんなのお手本になるようなAさんが、うつ病にかかるケースというのは少なくありません。
Aさんの場合は「部下の相談には乗る」、「みんなのお手本でなければならない」というメランコリー親和型性格傾向の持ち主であることがうかがえますね。
社員をうつにしないために
休養を取る
うつ病の治療や予防で、もっとも基本的なことは「休養を取る」ことです。
うつ病の治療は、投薬と並行して必ず休養を取ります。
それは休養が大きな治療法の一つだからに他なりません。
これは予防に関しても一緒です。
忙しすぎ、働きすぎの時はしっかり休養をとることが大切なのです。
しかし、メランコリー親和型性格傾向の方は、そもそも自分で休みを取るのが下手です。
管理職であったり、同僚であったり、部下であったりが休みを取るように促すというのは、最も効果的な予防の一つです。
カウンセリングを受ける
治療としてカウンセリングを受けることも有用ですが、予防としてカウンセリングを受けることも、とても効果的です。
ストレスに対する対処法や、物事の考え方などはカウンセリングを通して見つめなおすことができます。
もし、EAPコンサルタントなどがいる場合は、予防的カウンセリングを勧めてみたいということを率直に相談してみましょう。
社員一人一人に目を配り、必要であれば休養や通院、カウンセリングを勧める環境こそうつ病の予防にとって最も重要なことの一つです。
Aさんの事例における対処法
改めて、Aさんの事例を見てみましょう。まず、12月の多忙な時期にがんばりすぎています。
この時に休養を勧めることができます。
また、小さなミスが重なった時も、周りが「休んだほうがいいですよ、休みましょう」と声をかけることができます。
大きな失敗をして「自分は価値のない人間だ」と思い始めたときにカウンセリングを利用できたら大分違う結果になっていたでしょう。
眠ることができず、体重も落ちてきたら、早い段階で通院を勧めることができれば長引かなかった可能性があります。
これはフィクションの事例なのでよいですが、読者の皆さんが自分の会社を見回したときに、このような人はいらっしゃらないでしょうか。
もし、そのような方がいれば、勇気を出して「少し休まれては」と声をかけるのがとても重要です。
普段から、このようなアンテナをぴんと張っておくことが、うつ病の予防につながり、会社の生産性の向上へとつながっていきます。
「チーム」でケアする
一方で、「いくら休みを取るように言っても、休もうとしない」という悩みを聞くこともあります。
このような時は、ある程度、強制力を持って休ませることが効果的です。
例えば、毎日残業が続くようであれば上司から「残業しないこと」という業務命令を出したりしましょう。
同時にAさんが抱えていた仕事をAさんの責任ではなく、上司の責任で他人に割り振ることも必要です。
メランコリー親和型性格傾向の方は「休みましょう」と言っただけではなかなか休まないことが多いです。
「どう休みを取らせるか」ということをチームで考えていくことが、最大の予防法になるといっても過言ではありません。
医療では「チーム医療」が主流になっています。会社でも「チーム」でケアをすることができれば、大きな力が発揮できることでしょう。
働き方改革特集記事一覧
【第2回】【事例】働き盛りのうつを防ぐ…社員をうつにしないためには?
【第3回】ストレスと病気の関係、ストレスコーピングの3つの方法
【第7回】安全配慮義務とメンタルヘルス「4つのケア」の関係とは?
【第8回】EAPの役割とは?休職者を減らす事例を挙げて臨床心理士が解説
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- 本記事は2017年2月22日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。