【LGBT問題】教育現場での事例と解決策をシゲせんせーが解説【鈴木茂義さん】

2018.06.26公開 2019.05.23更新

性自認と性的指向

LGBTは、性自認(自分の性をどう認識しているか)と性的指向(恋愛の対象はどこに向くか)で語られることが多いです。

 

これを教育現場の中で語ったときに、多様な生と性についての受容と理解の不足が問題になることがあります。

 

 

思春期になると異性に興味をもつ?

LGBの子は、同性を好きになることがありますが、それを友達や先生に語ることはまだまだ難しいでしょう。

 

世の中を見ても「普通は異性を好きになる」ことが前提となっていますから、同性を好きになるL(レズビアン)やG(ゲイ)は周囲の反応を気にします。

 

B(バイセクシュアル)は異性を好きになったり、同性を好きになったりします。

 

同性が好きだったりパートナーであったりするときに、それを人に伝えるのはハードルが高いときがあります。

 

また、小学校4年生の保健の教科書には「思春期になると異性に興味をもつ」という内容が記載されており、LGBの子は、その内容と実際の自分の性的指向に戸惑うことも考えられます。

 

 

男女どちらの制服を着る?

生まれたときの性と自認する性が異なるT(トランスジェンダー)の子は、学校生活の中で色々なことがハードルとなります。

「男女どちらの制服を着るのか」「男女どちらのトイレに入るのか」

「修学旅行のお風呂は男女どちらにはいるのか」

などです。

 

教育のシステムが男女二元論で構築されていること、教育の中ですべての子どもたちが生と性の多様性について学ぶ機会が保証されていないことが問題となっています。

 

 

教育現場での3つのLGBT事例

それらの問題について、事例を通して考えてみましょう。

 

 

「レズ気持ち悪い」「学校に来るな」

Aさんは中学校3年生の女の子です。同じクラスの女の子Bさんと付き合っています。

 

同性で付き合っていることがクラスに知れ渡ることを恐れ、学校ではお互いにあえてそっけない態度をとるようにしています。

 

ところがある日、部活の帰りに2人で手をつないで帰るところをクラスメイトに見られてしまいました。

 

次の日学校に行くと、既にクラス中にそのことが伝わっていました。

 

クラスメイトから「レズ気持ち悪い」「あり得ない」「学校に来るな」と言われてしまいました。

 

クラスにいづらくなった2人は、学校を休みがちになりました。

 

 

「初めてのケースでどうしてよいか…」

5歳のCさんは、今度の4月に小学校1年生になります。

 

生まれたときの性は男の子ですが、スカートやかわいいデザインの服を好みます。親は男の子らしい半ズボンやTシャツを進めますが、Cさんは泣いて拒否します。

 

心配になった両親は、保育園を通して入学先の校長先生と面談をしました。

 

しかし、具体的な対応と配慮が共有されません。

 

校長先生も「こういったケースは初めてで、どうしたらよいかわかりません」と繰り返すばかりです。

 

 

「実際にこの学校にいたらどうする?」

高校2年生のDさんは、目前に迫った修学旅行が憂鬱です。

 

Dさんは生まれたときの性は女性ですが、男性を自認しています。

 

女子高生の制服を着るのも苦痛で、高校に登校するとすぐに体育用のジャージに着替えます。

 

修学旅行の部屋割りも、男子の部屋を希望していますが先生になかなか相談できません。当然、女子の大浴場にはいることも避けたいと思っています。

 

以前Dさんの学校にゲストティーチャーが来て、LGBTについての講演をしてくれました。

 

周りの友達が、

「LGBTについて頭ではわかるけど、実際にこの学校にいたらどうする?もしかしたらあいつもそうなんじゃない?」

と言っていることを聞きました。

 

Dさんは、ますます自分のことを打ち明けられないと思うようになりました。

 

 

教育現場でのLGBT対応例

教育現場でのLGBT問題について、3つの事例を挙げました。どのような対応が考えられるでしょうか。

 

 

全ての児童生徒に予防的な授業をする

色々な問題が起こってから対応をするのでは遅いです。

 

問題が起こる前から「予防的」「教育的」「積極的」授業をすることです。

 

教育は集団の中で行われていることがほとんどなので、当事者だけに配慮するのではなくその周りの人にまで広めていくことが必要です。

 

 

よく見る、よく聞く、よく話す

学校の中で「困っていること」「困っていないこと」を、その子と一緒に話します。

 

また、その子とさらによく話し「学校でやって欲しいこと」「学校でやって欲しくないこと」を確かめます。

 

学校側は「今すぐ対応できること」「今すぐ対応できないこと」を伝え、その子と共に「今すぐできること」を共有します。

 

例えば、③の事例のお風呂については、お風呂の時間をずらしたり、教員用の浴室の使用を許可したりすることも考えられます。

 

解決のヒントは、LGBT当事者のその子の中に存在することが多いです。

 

また教育現場の中には、既に色々な手立てや人的資源があります。

 

それらをうまく組み合わせることで、問題を1つずつ解決していきます。

 

 

LGBTについて考えること

教育とLGBTについて考えてきましたが、いかがでしたか。

 

教育とLGBTについて語ると、ネガティブな話題になりがちです。

 

もちろんその部分には対処しながらも、ポジティブな部分についても考えていきたいものです。

 

LGBTについて考えることは、全ての人にとって「生き方」「在り方」を考えるきっかけになると私は考えています。

「誰を好きになるのか」

「その人とどう生きていくのか」

「世の中の普通に縛られずに自分の性をどう生きていくのか」

「自分にとって心地よい性とは何か」

「身近な人とどう接するのか」

について考えることを通して、自分の「生き方」「在り方」を見つめ直すことができます。

 

自分を見つめなおす作業は、しんどい気持ちを伴うことがあります。そのときは無理をせず、次のタイミングを待つとよいでしょう。

 

また、誰かと一緒に見つめなおすというやり方もあります。

 

今回のリミーさんのコラム執筆で、私もまた自分を見つめなおすことができました。

 

ちょっと面倒くさいところもあるけれど、愛すべき自分と、これからもそれなりにうまく付き合っていこうと思います。

 

今回もコラムを読んでくださり、ありがとうございました。またみなさんにお会いできる日を、楽しみにしています!

 

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鈴木茂義

上智大学文学部非常勤講師。公立小学校非常勤講師。東京都世田谷区男女共同参画センターらぷらす相談員。専門は特別支援教育、教育相談、教育カウンセリングなど。14年間の正規小学校教諭として勤務を経て現職。教育研究会や教育センターでの講師経験も多い。お仕事のご依頼・お問合せはこちら

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年6月26日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。