【大人の発達障害】衝動性やパニックへの対応方法は?事例で精神保健福祉士が解説

2018.10.14公開 2020.05.22更新

大人の発達障害のパニックとは?

職場における発達障害の「パニック」の例

自分の決まったやり方にこだわりがあるEさん。

 

いつも決まった同じ電車、同じ車両に乗り、同じパターンの洋服で出社しています。

 

Eさんの仕事は、プログラミングです。手順にもこだわりがあります。

 

ところがその日は、いつもと違う事件が起きました。

 

事務担当のNさんが体調不良でしばらく休むことになったのです。

 

代わりに今日はどうしても誰かが、電話の応対をしなければなりません。

 

他のメンバーは皆、外回りで留守にするのです。

 

そこで上司は、Eさんに「今日だけNさんの代理で電話番をしてくれないか?」と打診してきました。

 

「特別に難しい業務ではない」と上司は言います。でも、Eさんにとってこれは一大事件です。

 

いつもの決まったルーティンワークのリズムが崩れてしまいます。

 

「無理です、無理です、絶対に無理です…!」

 

Eさん、パニックを起こしているようです。大きな声を出し、冷や汗をかいています。

 

周りもEさんの取り乱した様子に驚いています。

 

 

パニックに対する対応方法

1.まずは落ち着いて、確認しましょう

Eさんのように、自分の手順に強いこだわりがあり、変化に弱い特性がある方は、予想外の突発的な出来事があると、しばしばパニックを起こします。

 

人によっては「できない、もう終わりだ、会社をやめるしかない」等と極端なことを言ったりすることもあります。

 

周囲が驚く程、大声を出してパニックになる方もいるので、このような特性がが予めわかっている場合は、できるだけ不安を取り除けるような依頼の仕方をするといった配慮が必要です。

 

Eさん自身の対応方法ですが、まずは落ち着きましょう。

 

仕事をしていれば、今後も突発的な出来事はしばしば発生します。

 

Eさんに対して、通常業務とは違う、苦手なことをお願いしているということは周囲の人も理解しています。

 

完璧な対応ができなくても大丈夫です。

・何時から何時まで、何をすればよいのか?

・電話がかかってきたら、どんな対応をすればよいのか?

など、不安なことは全部確認し、メモをとりましょう。

 

2.ホウレンソウで上司の指示を仰いで

急遽、計画と違うことが起きたら、誰でも不安になります。

 

しかし、変化に弱い特性を持つ発達障害の方は、更に大きな不安を抱えてパニックになることがあります。

 

でも落ち着いてください。慌てずにメモを見ながら、頼まれた業務にとりかかりましょう。

 

開始後も、わからないことがあれば、その都度上司の指示を仰ぎましょう。

 

パニックの最中は、

「こんな程度のことを聞いていいのだろうか?」

「聞いたらいけないんじゃないだろうか?」

「自分で解決しないといけないのでは…」

とグルグル思考がめぐるかも知れません。

 

しかし、そんな精神状態で自己判断をするとかえってトラブルが大きくなります。

 

わからないことは、聞いても大丈夫です。

 

上司と連絡がとれる状態なら、「ホウ(報告)レン(連絡)ソウ(相談)」で上司の指示を仰ぎましょう。

 

すぐに確認できない場合は、「担当者が戻ったら確認して折り返します」と伝えれば大丈夫です。

 

3.予め対応方法を用意しておくと安心

急遽計画が変わることは、今後も起こる可能性があります。

 

例えば、いつも乗っている電車が遅延する、運休になる、システムトラブルが起こる…等です。

 

幾つかの変更パターンを想定して、対応方法を予め準備しておけると安心です。

 

会社での危機管理と同様に、マニュアルを作成したり、時々練習しておくとよいですね。

 

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セルフケアを行う上での注意点

発達障害の特徴の一つに「気持ちの切り替えが苦手」というものがあります。

 

嫌な体験を忘れられずに引きずり、そのことでパニックになったり欝になったりする方がいます。

 

失敗は誰にでもあります。落ち込んだり、自己嫌悪に長々と時間をかけるよりは、次に失敗しない方法を考える方が生産的です。

 

自分の性格をよく理解して、

衝動性が高い方は、忘れ物・失くし物をしないための工夫を。

パニックに陥りやすい方は、計画変更に備えて危機管理マニュアルを見直すを。

これらの取り組みを通じて、次は失敗しないためにどうすればよいかということに力を注ぎましょう。

 

気持ちの切り替えが難しい時は、クリニックや心理カウンセラーに相談するのも一つの方法です。

 

また、仕事の失敗から気持ちを立て直すことができるような趣味を持つというのも良い方法です。

 

大好きなアーティストのコンサートに行ったり、カラオケやスポーツ、映画やドラマ鑑賞、マッサージやスパ、ヨガ、呼吸法を練習するのもよいでしょう。

 

仕事以外にもう一つ自分の世界を持てるとよいですね。

 

 

さいごに

今回は、大人の発達障害の方の衝動性やパニックへの対応方法についてお話しました。

 

自分の特徴をよく理解し、対策をたてることで、衝動性やパニックはある程度予防することができます。

 

仕事で失敗するのは、恥ずかしいし、皆に迷惑をかけて申し訳ない…

 

と、つらい気持ちになることは本当によく理解できますが、気持ちを引きずっていても改善はしません。

 

上手に気持ちを切り替えて、次への対策がたてられるとよいですね。

 

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桜衣真里

精神保健福祉士

大学院修士課程修了後、専門学校、短大講師等を経て、公的機関の相談員として勤務。精神保健福祉士、保育士のダブルライセンスで、家庭問題、子どもの発達、保育・教育・療育関連の仕事に従事。東京都出身。二児の母。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年10月14日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。