LGBTと差別問題の実態や背景…差別問題を乗り越えるには?【鈴木茂義さん】
LGBTの差別問題とは?
前述の「他よりも不当に低く取り扱うこと」ということを視点に、LGBTの差別問題について考えていきます。
差別問題についても色々な考え方があると思いますが、あくまで私個人の意見として読んでいただけると幸いです。
G(ゲイ)である私は、日本ではパートナと婚姻の関係を結ぶことができません。
婚姻の平等が日本で認められていないことは、不当に扱われていると考えることができます。
私は自分で選んでゲイに生まれてきたわけではありません。
恋愛の対象が同性であるという性的指向は、自分の力で変えられるものではありません。
性的指向が自分で選べるものだとしたら、後から選び直すことができるはずです。
そうなると、性的指向が女性である男性も、それを選び直すことで性的指向が男性になることがあるでしょうか?
そのことはとても難しいことだと感じます。
人間として生まれた私が、たまたまゲイであったというだけで、婚姻による様々な行政サービスや配偶者控除などの税制優遇を受けられないことは、「差別状態である」と言えるかもしれません。
T(トランスジェンダー。生まれたときの性と自認している性が一致しない方)の方は、就職の場面で、不当に低く取り扱われてしまうという話もよく聞きます。
例えば、生まれたときの性が男性で、性自認が女性の方は、就労で困難な場面に遭遇することがあります。
履歴書の性別欄はどちらにに丸をつけるのか…
服装や更衣室はどうするのか…
トイレはどう使うのか…
そのようなことに対応していなかったり、配慮が足りない企業では、採用を見送ったり決まった内定を取り消したりという話も聞かれます。
これも「差別問題」と考えることができるのではないでしょうか。
差別問題の背景にあるもの
この差別問題の背景にあるもの、それは日本の様々なシステムが、多数派(マジョリティ)を中心に構築されていることが挙げられると思います。
車いすの人が街中を移動するとき、建物や歩道のバリアフリー化は、どの程度進んでいるでしょうか。
車いすの方、誰もが安心して移動ができる状態になっているでしょうか。
建物の設計や街づくりの段階で、様々な人が利用する可能性があるということを知っていれば、世の中の段差はもっと少なかったのではないでしょうか。
「世の中の人は皆、歩いて移動することができる」というマジョリティ中心の考え方が、世の中に段差を作っている1つの原因かもしれません。
それと同じように、前述のLGBTの婚姻や就労についても、マジョリティ中心のシステムになっていると考えることはできないでしょうか。
差別問題を乗り越えるために
世の中の色々な流れの中で、少数派(マイノリティ)の存在が可視化されつつあります。
それはLGBTだけではなく、大人や子どもの発達障害であったり、多様な家族の在り方だったりします。
日本社会の法律やシステムも、悪意があって現在のようなカタチを構築したわけではなく、「見えてなかった」「知らなかった」からこそ、対応できなかったと思います。
では、どうすればよいか。
「いまから」「ここから」取り組むことが大事です。
マイノリティが可視化されつつある今だからこそ、一歩を踏み出せばよいのです。
私は現在、小学校で発達障害の特別支援教育にかかわっていますが、この10年で取り組みの内容や保護者の理解は明らかによい方向に進んだと感じています。
同じようにLGBTに関する差別解消についても、「いまから」「ここから」取り組んでいけばよいと思います。
先日、東京都世田谷区で『世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例』が施行されました。
国籍・民族の違いを理由にした差別や、LGBTへの差別など、包括的な差別の解消について言及されています。
「不当な差別的取扱いをすることにより、他人の権利利益を侵害してはならない」という一文は、「いまから」「ここから」差別が解消される大きな一歩になることを期待したいです。
おわりに
「何かを始めるのに遅すぎることはない」という言葉があります。
私もまだまだ知らないことがたくさんあり、
「もっと早く知りたかった」
「これを知らないことで、今までどれほど損をしたのだろうか」
「人を傷つけただろうか」
と落ち込むことがあります。
しかし、人間は過去に生きることはできません。
落ち込む暇があれば、
「いまから」
「ここから」
「自分にできることを」
「自分にできる範囲で」
始めていくことを大事にしていきたいです。
そして、よく使われる言葉ではありますが、自分の心の段差を取り除き、心のバリアフリーを今よりももう少し進めていきたいです。
マジョリティが上だとか、マイノリティが下だとか考えることなく、フラットな人間関係や配慮ができるようになりたいです。
2020年の東京オリンピックももちろん楽しみですが、街で白杖を持っている方に「お手伝いできることはありますか」と声をかけることは、2018年の私にもできそうです。
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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- 本記事は2018年5月8日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。